13-11.旭日昇る、悪魔現る
大変お待たせいたしました。
今回、少し読みづらいかもしれませんがご了承ください。
理由はあとがきに記載しておきます。
「くっ!」
ロウフィスがハルバートを構えながら後ろに飛び退る。
ロウフィスの持ったハルバートにヨシナカの長刀、つまりは薙刀がぶつかる。
ベキベキと、足場にした甲板の木の板が悲鳴をあげる。
どんだけ重い攻撃してるんだよ。
それにあの薙刀。
えらくごついな。
アニメによくあるような謎機構武器っぽい。
ノブナガ、シュバルトディーゲル、シロ一家にアマンダさんも気にはなるが、正直戦いの面では圧倒しているし問題ないだろう。
あえて言うならノブナガの相手があのアベノセイメイだということだが。
「ふぅーはははっ!そうらどうしたどうした!」
「なんて出鱈目な……美しくない型ですね」
両手に持った刀を振り回して思いっきり弄んでいた。
……めっちゃイキイキしてるなぁ。ノブナガ。
「鬼頭一式、鬼隠れ」
船上にどこからともなく、木の葉が舞い散る。
……木の葉?どっから出した?それ?
「むっ」
木の葉は二人を覆い隠すように船の甲板に広がっていく。
「鬼頭二式、式符乱舞」
そう、セイメイがいうと木の葉が何枚かポンっと音を立てて弾けた。
その弾けた木の葉の1枚1枚が折り紙の鳥みたいな姿になる。
「行きなさい」
「おっと」
ノブナガは突撃してくる折り紙の鳥に対して、大きく飛び退いたり、身をかがめたりして避ける。
なんというか、冷静に周りを見れている感じだな。
これは戦闘の経験値によるものだろう。
しかし、それに紛れて複数の兵士が木の葉の中から飛び出し、剣を振ってくる。
それをノブナガは刀を使わず、蹴りや刀の柄で対応する。
うん。なんというか。
ノブナガは見ていなくても心配ないな。
やっぱり、苦戦してるのはロウフィスか。
多分だけど、ミナモトノヨシナカって多分、あれだよな。
ノブナガやセイメイと同じように俺たちの世界の人物のそっくりさん。
そういえば、セイメイもノブナガがいう事を信じるなら、既に死亡している人。
ってことはセイメイもこいつもノブナガと同じような物なのかもしれない。
いわゆる、アンデッド。
まぁ、それは倒してみればわかるだろうが。
問題は相手が強いってことなんだよな。
もしも、こいつもアンデットでノブナガやセイメイの力があるとしたら多分、ロウフィスだけでは勝ちきれないだろう。
……ちなみに、『鑑定の魔眼』で確認しようと思ったら、距離の問題か直接見ないといけないのか分からないが、見ることはできなかった。
相手のレベルやスキルが分からない以上、あまり突っ込んでいってほしくはないんだが……。
正直、ロウフィスも下げたいんだが、ここで下げるとロウフィスが自信を無くしそうで怖いんだよなぁ。
ロウフィスの性格だと、一度自信を無くすと思い詰めそうだしなぁ。
まぁ、勝っても負けても、この戦いが終わったら修行するんだろうな。
なんだか猫3匹を相手にアマンダさんと2人で修行している姿が目に浮かぶ。
「はぁ!」
ロウフィスがハルバートを突き出す。
それをヨシナカは手に持った薙刀を上に振りハルバートを跳ね上げることで凌いだ。
うーん。
ロウフィスの技量が足りないわけではない。
むしろ強い。
しかし、今回は相手が悪い。
やっぱり、今からでも下げるか?
しかしなぁ。
ほんと、司令官ってのは大変なんだな。
「うーん。君さぁ。良い腕なんだけど、なんというか、燃えねぇんだよね」
「燃えない、とは?」
「俺ってば、乗り越える壁が高いほど、壊す壁が強固なほど燃えるタイプなんだよね」
「つまり、私では力不足だと?」
「あぁ、まぁ。そうかな?はぁ、せっかくあの神獣とやらとやり合えると思ってたんだがなぁ。出てきたのがこの程度の騎士とは」
「この……程度……」
「君、あれだろ。武器に使われてるタイプ。しかも似たような相手しか敵にしたことないタイプ」
「うっ!」
指摘も的確。
確かに、ロウフィスは最近、うちの猫たちしか相手にしてないな。
「だけど、それじゃ『殻』を破れない。俺みたいに自由な発想で行かないとな!」
そう言うと、ヨシナカの薙刀が輝き始める。
これは、……光魔法か?
「光昇弾!!」
ヨシナカが薙刀を振るうと、薙刀から3つの光の玉が飛び出す!
光の玉はロウフィスを捉え、その体を後へと吹き飛ばした。
「がはっ!?」
ロウフィスが壁に当たって血を吐く。
「俺、こんな見た目だけど、アンデッドなんだぜ?信じられないだろ?アンデッドが光魔法を使うなんて」
これは、決まりかな。
残念だけど、ロウフィスはここまでだ。
俺は、転移魔法を発動して、ロウフィスを転移しようとするが……。
その瞬間。
ゾクッとするほどの気配が、ロウフィスのいる船から発せられた。
何だ?この気配?
今まで感じたことのない気配は?
「……確かに、私は弱い」
「うん?」
「純粋な力ではヴィゴーレ殿に及ばず、魔法の才能でも、ヘンリーには届かない。剣の腕前ですら、妹に負けています。そして、人望でもグレイ殿の足元にも及ばない」
いや、それは自分を卑下しすぎじゃないかな?
グレイに人望があるとは思えないんだが。
「けれど、それでも!」
ロウフィスがハルバードを杖代わりに立ち上がり、叫ぶ。
「この国を守りたいという、信念だけは揺らがない!それが、グレイスノース公爵家として生まれた私の、生きる意味です!」
ロウフィスが叫びながら、突撃する。
おいおいおい、それは悪手だろ。
「捨て身覚悟の特攻か!嫌いじゃないよ!そういうの!」
ヨシナカがそういいながら、薙刀で迎え撃つ構えをする。
しかし、次の瞬間。
俺の感じた気配を、ヨシナカも感じたのか、一瞬凄い顔をして後ろに飛び退った。
ロウフィスのハルバートは標的を失って空を切る。
行き場を失った余力でロウフィスは前につんのめった。
まぁ、そうなるわな。
しかし、ロウフィスは諦めず突撃を繰り返した。
そんなに突撃し続けても結果は……。
「いい加減、君の相手も飽きて来たよ!」
ヨシナカが薙刀を振るう。
流石にこれは危ない!
そう思った時だ。
ロウフィスから途轍もない力が発せられるのを感じた。
「だから、力を貸しなさい!」
ヨシナカが横なぎに振るった薙刀はロウフィスにあたる直前、見えない壁に阻まれたように止まった。
……は?
「ムフ、ムフフ。やぁっと堕ちまーしたか」
え?
いや、何?この声?
それにロウフィスの胸から黒い腕が出てるように見えるんだけど?
ヨシナカもその嫌な気配を感じたのか、薙刀を構えなおした。
「君、なんだい?」
「ンン?」
ロウフィスの腕から出てきた黒い腕がどんどん伸びていく。
やがて、肘、肩、そして反対の腕と上半身が出てきた。
おおよそは、人の形をしている。しかし禍々しい気配を発している。
「ムフフ。私はアスティマ。……貴方達が言うところの、悪魔でございまーす」
その、独特な発音をする男はそう言い放った。
-ドリス皇国領内 森の中-
ふぃー。
まじで。
結構な数、領内に潜り込んでたっすね。
これで、二十人。
まぁ、数自体は大したことないっすけど。
なんせ範囲が広かったっすね。
まぁ、これで少しは楽が出来そうっす。
「そう、カズマス。ご苦労様」
「いやいや、そんな大したことじゃないっす」
……ん?
なんすか?この違和感。
確か自分は部隊を率いて……。
それで今は単独行動で……。
そう思った瞬間、背中に激痛が走った。
思わず振り返ってみたその背後には……。
「姫……様?」
自分の良く見知った顔が立っていた。
そこで、自分の意識は消えて行ったっす。
12月に入りとても忙しくなってきました。
もうしばらく忙しさが続きそうですが、めげないよう頑張ります。
今回、一つの試みとして。
主役の人を周りから見た状態、というのを意識して書いてみました。
ロウフィス君の状態としては所謂「力が欲しいか」からの覚醒と主人公ムーブなのですが、それを周りの人、つまり観測者側である多夢和君から見た視点として描き、あくまでも多夢和君視点で話を進める、という風に意識をしました。
上手くはできていないかもしれません。
なのでいきなり覚醒したように見えますが、実は結構ロウフィス君の中では葛藤や問いかけがあったようです。
今後も、このような試みはしていこうと思います。
よろしくお願いいたします。