13-8.掃討戦・船上の戦い
「なぁ、ノブナガ?」
「ん?なんじゃ?」
「これってもう終わりってことでいいのか?」
「終わりでいいじゃろうな」
だよなぁ。
確か前に見たアニメ作品だと。
全部隊の3割(戦闘員の6割)を喪失で全滅。
全部隊の5割(戦闘員の10割)を喪失で壊滅。
全部隊の10割(全部隊消滅)を喪失で殲滅だっけ?
これは……。
壊滅……でいいよな?
「ちょ、やり過ぎでしょこれ!?神獣様!?」
うん。
それはちょっと思う。
「おい、あ奴ら生き残ったぞ」
ノブナガがそういうので、ふと敵陣を見てみるとあの飛び交う火をくぐり抜けて来た船がいるようだ。
その数、5隻。
全部、大型艦だな。戦艦か?
「ふむ。アレはどうやら木材の上から鉄で保護しているようじゃの。一隻につき、どれほどの兵が乗っておるかの?」
いや、知らんがな。
けど多分、1隻200人くらいとして見るとざっと1000人くらいではないかな?とは思うが。
いや、200人も乗るか?あの船。
確かに大きいけども。
「まぁ、よいか。次は儂らの番でよいじゃろ?」
「うん?まぁ、良いけど。やり過ぎんなよ?」
フェニクスもヘリオンもあんな感じで大雑把に魔法を使ったように見えるが、実際死亡した数は少ない。
ヘリオンの魔法はかなり細かくされていたからけがはしているだろうが致命傷にはなってないだろう。
まぁ、最も。砂利みたいになった石の下敷きになっているかもしれないから、早めに救出してやりたいが。
フェニクスも炎の魔法でドカンとやってはいるが、沈めたのは船だ。人に当ててはいないみたいから引き揚げれば助かるだろう。現状、それなりに深い河でおぼれているだけだ。まぁ、金属鎧着けてるしな。流石に泳げないだろう。
その証拠に、敵軍はいまだにこちらに向かってきている。
普通に考えれば生き残りは真っ先に撤退するはずだろう。
多分だけど、近くの船の残骸を確認して死んでないことを確認したから向かってきているのだろう。
いや、助けてやれよ、とは思うけど、後衛も全滅してるんだよなぁ。
行くも地獄、帰るも地獄って奴だろうか。
そんな感じで自棄になっているのかもしれない。
「よかろう。おい、シロと執事」
「何でしょうか?」
「なんだ?シロは主にしか従わない」
「そう、邪険にするな。出番じゃぞ」
「出番?」
「出番!シロも欲しい!」
「そうじゃろそうじゃろ。おい、お主等も来い。ロウフィスとアマンダよ」
「え、我々もですか?」
「それは……多少剣には自信はありますが……」
「えぇい!グダグダぬかすな!目標は一人一隻じゃ!やるぞ!者ども!あ、シロは家族も連れて行けよ、無理をしてはならんぞ」
「「えぇ!?」」
「いいでしょう」
「わかったぞ!」
「決まりじゃ!というわけで、船まで送ってくれ!大御屋形様!」
まぁ、やりたいなら構わないけど。
流石に、影魔法による監視はするけどな。危ない感じになったら助けるぞ。
死ぬんじゃないぞ。みんな。
転移魔法を発動した俺は5人と4匹を送り出すと意識を影に集中させる。
っと、その前に。
「グレイ。しばらく集中するから、もし先に侵入した奴がこっちに来たら指揮を頼むぞ」
「はっ!……え?は?」
「よっしゃ!作戦開始!」
「ちょっと!?神獣様!ちょっと!?」
さて、転送したノブナガ達はどうかな?
意識を飛ばしてみるとノブナガは敵船で既に対峙していた。
「ふはははは!どうした!恐ろしくて声も出ぬか!凡愚ども!」
「な、なんだ!こいつは!?」
「囲め囲め!さすがにこの人数差なら!」
「ふははは!是非も無し!」
向かってくる敵兵を1人1人切り伏せているノブナガがいた。
そういえばミツヒデが以前、ノブナガは型もめちゃくちゃで自己流。刀の師匠としてはまったく意味がないとか言ってた気がするが、見た感じそう悪い感じでもなさそうなんだが。
力任せに振る刀の二刀流ってのはカムイ神国的にはアウトなのかもしれない。
「次!そら!どうした?」
二刀流もさることながら、蹴りや敵の進路を確実に塞ぐ戦い方はダーティープレイと言えなくはないか。
しっかし、活き活きしてんなぁ。
「鬼門封じ、弐ノ方。鬼人縛鎖」
そう聞こえた瞬間、ノブナガに向かって鎖が飛び出してくる。
「むっ?」
そのままノブナガの腕に巻き付いてきた。
この技は……。
「まったく。暴れてくれましたね。こちらの計画が台無しですよ」
「出てきおったか。怪しげな術を使う、似非占師め」
「ふむ。流石は我が主。素晴らしい魔法です」
シュバルトディーゲルは転送された場所から動かずにいた。
既に囲まれているにも関わらず、構えも取らず、余裕の表情を見せている。
「貴様!ドリス皇国の手のものだな!」
「こんなやり方で、みんなを殺しやがって!覚悟しろ!」
「はぁ。攻めてきたのはそちらでしょうに」
「うるさい!殺してやる!」
兵士の一人が突然現れた彼に向かって、やりを突き出す。
しかし、その槍は彼を捉えることはなかった。
シュバルトディーゲルが槍の穂先を指で挟んで止めたのだ。
「は?く、くそ!やりが動かない!なんで!」
「やれやれ。自他の能力差も分からないとは」
少し力を入れると、槍が粉々に砕けた。
いや、強いな。シュバルトディーゲル。
「下がれ。此奴は貴様らでは対応できん」
群衆の中から、一際偉そうな人間が出てきた。
「名乗れ。愚民。この私が、手ずから相手をしてやろう」
「ふむ、私はただの執事ですので。名乗るほどの事はございませんが?」
「戯言を。ただの執事がひとりで乗り込んでくるものか。加えてその異形。貴様、魔王であろう!」
「おや。失敗いたしました。良いでしょう。私はシュバルトディーゲル。我が主の愛馬にございます」
「我が名はへカルド・サーヴィク!栄えあるサーヴィク男爵領の領主である!いざ!」
そう名乗りを終えるとサーヴィク男爵と名乗った男が剣を抜き、シュバルトディーゲルに肉薄してきた。
「アオーン!」
「な、なんだコイツ等!?」
「くそ!離れ……ぎゃあああ!」
「活躍!活躍のチャンス!」
シロ達は一家で転送したからか、めちゃくちゃ張り切っていた。
大きな狼が4頭、それにシロ。
多分、普通の兵士では戦いにならない。
狭所かつ高低差がある様な限られた空間であれば、彼らの立体機動についていける人間は少ないだろう。
まして、狼は集団で狩りをする社会性の高い動物。その連携についてこられないだろう。
「アオーン!」
ユキが吠えると、甲板が氷に包まれ、敵軍の足を止める。
「ワン!ワン!」
そこにロレンツォ達の氷の魔法や、ホワイトの影魔法の槍が殺到する。
そこにいた兵士たちは瞬く間に倒れ伏していく。
「みんな!すごいぞ!これでまた主に褒めてもらえる!」
「貴様!その神聖な場所から降りよ!汚い足で、そこに座るな!」
「ん?何だお前?」
「私はこの船、アルトランド級3番艦クライオスタットの艦長、リフテンだ!そこは、貴族様や陛下をお迎えするための観覧席!貴様のような土人が踏み入れて良い場所ではない!」
シロの後ろから声をかけた男が城に向けて剣を突き出す。
シロはそれを軽く蹴り飛ばすと、艦長と名乗った男の『文字通り』吹き飛んだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
その悲鳴を聞いて、しまった!っというシロの顔。
「しまった!これじゃ主に怒られる!?」
そういいながらシロは飛んで行った腕を追いかけて行った。
「はぁ!」
気合の入った声をあげながら、アマンダさんが剣を振るう。
おおよそ10人程度を常に相手にしながら、彼女の剣は敵を常に捕らえ続けていた。
「体が軽い!こんな気分で剣を振るうなんて初めてだ!」
いや、アマンダさん。それアカンセリフだから。
死亡フラグだから。
しかし、アマンダさん。こんなに強くなってるのか。
なんで?
って、そうか。
アマンダさんとロウフィスは、俺の召喚した猫たちとずっと修行してたっけ。
Cランクの魔物とずっと修行してたからきっと初めの頃よりだいぶ強くなってるか?
しっかし、なんというか。
戦闘初心者の俺が見てもわかるほど、攻撃が同じ方向からしか出ていない。
左側から右側に流れるように。
何だろう?戦い方の癖かな?
模擬戦の時ってこんな癖見せてたっけ?
ちょっと思い出せない。
まぁ、この様子なら大丈夫かな?
他の船に比べて兵士も少ないみたいだし、問題ないだろう。
「はっ!」
ロウフィスはハルバートを振り、迫りくる敵兵をなぎ倒していた。
ロウフィスが使っているハルバートは若干普通のものに比べて穂先部分が長いが、それ以外はごく普通のものだ。
「光よ、我が刃に宿れ、エンチャントディバインライト!三閃突!」
エンチャントディバインライト。
スキルとしては俺の魔法剣に近い。
正確には光魔法の魔力を使った技らしいが。
光魔法で刃をコーティングして強度を上げて攻撃する技らしい。
まぁ、それだけだ。
光魔法が苦手なアンデッドに対しては効果絶大らしいが、この場にアンデッドは味方側にしかいないしな。
ロウフィスのハルバートが敵兵を捉えるとその余力で後ろの敵兵も吹き飛ばしていく。
「あっぶねっ!?」
うん?
なんか知らない声……。
って誰だ?アレは?
東方風の装い。腰に下げてるのは確実に刀だよな?
「ちょっと、ちょっと!俺、こう見えても光魔法めっちゃ苦手なんだから!手加減してよ!」
自分を指さしながらロウフィスに抗議する東方風の男。
「誰ですか?あなたは?その装いは東方の戦士とお見受けしますが」
「俺か?俺はミナモトノヨシナカってんだ!よろしくぅ!」