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12-6.手土産と置き土産

 その日の夜。

 俺はベッドから身を起す。

 えっと、ブラキオサウルスを倒したのは昼過ぎ、結構時間が経っていたから5時間くらい経ったか?

「うぅん……」

 もぞもぞと隣で毛布が動く。

 毛布から覗くのは見事な縦ロール。

 うん。なんか流れでね?



 あの後、昼でもやっている居酒屋で一杯ひっかけた後、近くにあったここに直行してきた。

 まぁ、お礼と言うから、飲みには付き合ったのだけれど。

 ちなみに車の運転はさせてないぞ。

 加凜さんは大丈夫と言っていたが、死守させてもらった。

 流石に、刑事が飲酒運転はいかんよ。

 申し訳ないけど、加凜さんのスマホからアスティベーラに電話させてもらった。

 カギは居酒屋に預けて受け取ってもらった。

 アスティベーラ、加凜さんの登録が『むっつりエルフ』だったのは御愛嬌。

 っていうかニックネーム登録ばっかりで誰が誰かわからなかった。

 なんだよ。

『ショタ魔力』とか『ハゲオヤジ』とか『髭眼鏡』とかさっぱりわからん。

 エルフってついてなかったらアスティベーラだと分からなかった。

 唯一、安田浦さんだけ『安田浦刑事』だったのには少し笑ってしまった。

 あの人、やっぱり慕われてるんだな。


「……ぅうん?あぁ、先に起きていましたのね」

 加凜さんが俺の隣で起きた。

「あぁ、おはよう加凜さん」

「おはようございますわ」

「大変結構なお点前でした。ありがとうございます」

「こちらこそ、御馳走様でした」

「なぁ、ヤっちゃってから言うのも何なんだが、なんでそんなガツガツしてるんだ?」

「うん?あらいやだ。女性の事を詮索するものではなくってよ」

 まぁ、そりゃそうなんだけど。

 なんかね。焦ってるというか、焦燥感を感じたんだよね。

 俺がそう感じただけなんだけど。

「まぁ、良いですわ。……私、()()()()()ですの」

()()()()()?」

 なんだそりゃ?聞いたことないな?

「向こうの人間に稀に発症する病ですわ。正式には『重度の魔力欲求及び過度の破壊衝動を伴う熱傷病』向こうでは軟禁……監禁されるレベルの病気ですわ。まぁ、症状が出始めたのはこちらに来てからですが」

 えぇ!?そんなに!?

「魔力がどんどん身体から抜けていっていずれは0に。そして、0に成れば、極度の破壊衝動と体を焼くような熱病に侵される。けれど、私はこちらでちょっとした治療法を見つけましたの」

「治療法?」

「魔力が減るなら補給すればいい。魔力補給ですわ」

 魔力の補給だって?いったいどうやって……、ってまさか!

「私、行為中に少しずつ魔力を吸っているのですわ」

 やっぱり!

 もはや吸血鬼!

 いや、サキュバスじゃねぇか!?

「私、お酒の影響で結構遠慮なく吸ってしまいましたけど。あなた、魔力も体力も底なしですのね。全く減ってないように見えますわ」

 そういいながら下着を履きなおす加凜さん。

 ……黒はエロい。

「まぁ、魔力はなぁ。切れたことないし」

 よく考えたら俺の魔力の底って何処なんだろうな。

 普通にこっちでも魔力切れないみたいだし。

 結構、がっつり吸われてた気がするが。

「……普通に化け物ですわね。まぁいいですわ」

 ん?加凜さんから何かを渡され……。

 ってこれ!?

「いやいやいや、これは流石に受け取れないぞ?よくしてもらったのはこっちだし」

「いいんですわ。受け取っておいてください。これで何か向こうにお土産でも買って行って差し上げなさいな」

 渡された者は3枚ほどの紙幣。

 福沢な諭吉さんが印刷されたものだ。

「いやしかし……」

「正直、それしか出せないのが申し訳ありませんが。まぁ、良質でとっても濃いのをたっぷりいただきましたし、これはほんの気持ちですわ。しばらくは魔力補給する必要もないでしょうし。彼氏君に集中できますわ」

 さいでっか。

「なら、ありがたくもらっておくよ」

 あっと、そうだ。

 俺は冷蔵庫へ向かい中からありったけの水を出した。

 その総数約10本。

 まぁ、1本それなりのお値段なんだが。

 しめて3200円なり。

 まぁ、今回は仕方ないだろう。

 それに今まで使ったことのないスキルを使うチャンスでもある。

「何をしてますの?」

「ま、ちょっと思いついたことをね」

 俺はペットボトルに『魔素完全制御』と『魔元素完全制御』で魔力を注ぐ。

 それを『錬金』『浸透魔法』で中の水に魔力を通す。

 初めは水の抵抗が酷かったが、徐々にそれも薄れてきた。

 その後、再び水の抵抗が強まったのでそこで魔力を注ぐのをやめて馴染ませた。

 ほい。完成!

 それを1本加凜さんに放り投げた。

「ちょ。……なんですの?これ?」

「俺の魔力を注いでおいた。10本もあるし。ちょっとの間なら大丈夫だろ」

「貴方は……」

 ちょっと、見た目があれだが。全く役に立たないって事はないだろう。

 俺の魔力を通した水は、なぜか真っ白の粘度の高い液体に変化していた。

 いや、見た目はもはや犯罪臭しかしないんだが。

「ないよりはましだろ?冷蔵庫にでも入れておけば多分持つと思うよ」

「ありがとうございますわ。ありがたく、いただきますわね」

「はははっ」

 こうして、俺は加凜さんとホテルを後にしたのだった。

 ちなみに加凜さん。マジックバックをこっちに持ってきていた。

 容量はそう大きくないみたいだけど。

 水のペットボトル10本くらいなら余裕で入るようだ。

 うらやま……ってそうか。俺には空間魔法があったな。

 向こうからしたら、俺のものの方が羨ましいだろうな。







 さて、と。

 どうするかね。これから。

 加凜さんと別れて、俺は町を探索していた。

 幸いにも加凜さんと入った居酒屋は徳川福田駅の近く。

 色々店がある。

 っていうか、もらった3万。どうするかな。

 せっかくだし、シャルロッテさん達に何かお土産でも……。

 いやしかし、何をお土産に買えばいいのか。

 お?

 ここは『ドカンとあふれる夢を買いましょ』のペンギンのお店じゃないか。

 ここで何か買いそろえるか。


 久々に来た気がする。

 最後に来たのはいつだったか。

 陽気な音楽が店内を満たす。

 そうか、音楽。

 いいお土産になるかもな。

 とはいえ、CDとかは……向こうじゃ充電もできないしな。

 そういえば雷魔法があるなら、充電とかはできそうだけど。

 技術がまだ追い付いていないから無理かもな。

 ゼンマイくらいならあるか?

 今、発注している魔道具の開発チームに渡したら技術の発展もあり得るかもしれない。

 俺はエスカレーターを上がって三階へ。

 この店は雑貨とかは確か三階に合ったよな?

 さて、目的のものは……。

 っとあったあった。

 一つ税込みで1700円それなりに掛かるな。

 えっと……。

 シャルロッテさん、マリアゲルテさん、氷室さん、聖女さん、ガブリエル、ロタ、エルルーン、スルーズ、トラキス、ハグレオン、エルフ侍の妹で11人。これで18700円。

 ヴィゴーレやノブナガ達にも買って帰った方が良いか?

 いや、でも金も無限じゃないしな。

 今回は許してもらおう。まだ一日転移券は4枚もあるんだ。

 これで残り11300円。

 この金は、有意義に使わせてもらおう。






 さーて、この有り余る体力で飲みに行くぞぉ。

 俺のなじみのショットバーで、な。

 まだまだ、夜は長い。

 なんせ昼過ぎから入ったおかげで、まだ夕方と夜の間位だ。

 まだまだ、楽しめる時間はある。

 久しぶりにあの店に行ってみるか。

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