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12-2.現代へ

ちょっと事情があり投稿時間がずれています。

「うーむ」

 視線を右に向ける。

「ふーん」

 ひとしきり確認した後、今度は左に向ける。

 今俺は何をしているかというと、現状確認だ。

 振り向いてガラスを確認する。

 姿は、変わっていない。

 もう一度、振り向いて俺はその町を見た。

 そして思いっきり天に向かって叫ぶ。


「なんでやね~~~~ん!!!」


 俺は今、元の世界にいた。







 なぜこんなことになったか説明しよう。

 朝にフェニクスに許可を出した後、俺は町をぶらつこうと人型のまま城を出た。

 そして氷室さんと出会った。

 彼女は俺とは親しいが、シャルロッテさんとは夜に寝室くらいでしか会わない。

 今日は男組が報告会なので彼女は普段通り、町でギルドから依頼を受諾しているようだ。

 今日の依頼はギルドマスターの護衛らしい。

 確か西ギルドのティティだっけか。

 先日の乱闘騒ぎで逆恨みした冒険者が……という可能性があるので、念のため関わった職員やギルドマスターに警護を付けたそうだ。

 勿論、グレイの婚約者であるティナさんをはじめ、婚約者には全員ついている。

 わざわざ、フィンやオットマンを護衛に付けたくらいだ。

 まぁ、これだけ警備が厚ければあの冒険者もそうそう何か仕掛けてくるという事はあるまい。

 そう思っていた。

 俺は氷室さんと別れて、ギルドの正面にある通りを門の方へ進む。

 すると、路地の方から怒鳴り声が聞こえた。

「なんだと!もういっぺん言ってみろ!」

 どこかで聞いた声。

 先日問題を起した冒険者の声だ。

「だから!そんなことを考えるならテメェとはこれきりだって言ってんだろ!テメェが何か問題起こすたびにこっちまで巻き添えを食らうんだ!いい加減にしろ!」

「テメェら!」

 ぐしゃっと、なにか嫌な音が聞こえた。

「テメェ!何しやがる!」

「へ、へへへ。計画を垂れ込まれちゃ敵わねぇ。テメェらばらしてやるよ」


 ……なにか、雰囲気がおかしい。問題発生みたいだな。

 路地裏に足を踏み出そうとしたその時。

「聖上」

「フィンか?」

 後ろから俺に声をかけるものがいた。

「はい。先ほどから後ろで見させていただいておりました」

「あーそう。まぁ、いいや。ここにいるってことはギルド職員のお嬢さんと一緒か」

「はっ。次期伯爵の婚約者であるレイア様と同行しております。レイヤ様は念のため後ろの建物の影に」

 まぁ、優秀です事。

 イケメンで優秀とか。

 けど、護衛任務中に事件に首を突っ込むのはダメだな。

「して、どうなさいますか?」

「あぁ、良いよ。俺が行く。お前は医療班の手配と捕縛の準備をしておいてくれ。そこら辺に転がしておくから」

「承知いたしました。お気をつけて」



 そういってフィンと別れて路地裏を進む。

 路地裏には剣戟の音が聞こえる。

「は!ざまぁみやがれ!この俺を追放しようとするからだ!」

「ぐ!テメェ!」

 見えてきた景色は、例の男が仲間であろう冒険者に剣を向けている姿だった。

 上段から押しつぶすように振り下ろされた剣を持っていた剣の腹で受け競り合っている様子だった。

 受けている側は怪我をしているのか、力が入らず、膝をついた姿勢で踏ん張っていた。

「死ね!」

 例の男が剣を振り上げ、とどめを刺そうとする。

 俺はそれを止めるべく、近くにあった木片を蹴り上げた。

 俺の蹴り上げた木片は男の剣に当たり男がよろけた。

「誰だ!テメェ!」

「誰でもいいだろ。揉め事はその辺にしておけ」

「んだと、コラァ!」

 男が剣を振り上げてこちらへ突進してくる。

 遅いなぁ。

 俺は事も無げに剣を避けると足を引っ掛けて男を転ばせてやった。

「ってぇな!テメェ!」

 男がコリもせず立ち上がりめちゃくちゃに剣を振り回すのを避けながら、俺はこいつをどう制圧したものかと考えていた。

 ニヤリ。男が笑うのが見えた。

 ん?

 男が近くにあった木箱を破壊しその破片を俺の方へと飛ばす。

 くっ。

 一瞬思わず目を瞑ってしまった。

 よくよく考えたら風魔法で男もろとも吹き飛ばせば良かった。

「貰った!」

 男が飛びかかってくる。

 俺はとっさに身を引いて半身になる。

 俺の服の胸ポケットの部分を男の剣が掠めた。

 ポケットに穴が開き、チケットが零れ落ちる。


 こんにゃろ!!


 俺は半身に引いていた体を蹴りで無理やり前に戻す。

 俺の蹴りは的確に相手の鳩尾にあたる。

 勿論、手加減はしている。

 この場合は脚加減か?

 目の前ではじけ飛んだりしたら、多分しばらく立ち直れないだろう。

 ……ずいぶん前に一度やってしまっているからな。

 あの公爵の長男には申し訳ないことをした。

「ぎゃ!」

 俺の蹴りを受けて、男は体をくの字に曲げ、少し遠くの地面を転がり、壁まで転がって行きそれっきり動かなくなった。

 ……死んでないよな?

 ちょっと心配するが、何とか息はありそうだ。

 セーフ。

 まぁ、死んでても俺にはあまり関係ないんだが。

 まぁ、気分だ気分。


 俺は男の息があることを確認すると、足元のチケットを拾った。

 まったく。

 こういう輩は痛い目見ないと分からないからな。

 勉強と思ってもらおう。


 さてと、こいつどうしようか。

 斬りかかられた男たちも何とかしてやりたいが、残念ながら回復魔法の事はよくわからないからな。

 火属性か光属性って事しか知らない。

 たぶんイメージだけで何とかなるだろうけど。

 失敗した時の事を思うと自分以外で試す気にはなれないな。

 光魔法のスキルもってないし。

 男の方は……、どうするかな。コレ。

 辺りを見渡すが、ロープや代わりになりそうなものはなかった。

 空間魔法からシーツを出してグルグル巻きにしてもいいが、労力がなぁ。


 俺は手物とチケットを眺めた。




 これが現代なら、手錠とかインシュロックみたいに代わりになるものもあったんだろうけどなぁ。



 その瞬間だ。

 手にしたチケットが輝き始めたのは。

 余りのまぶしさに、俺は腕で目を覆い、気づいたときには……。











「元の世界に居たってわけだ」

 いや、正確には元の世界かどうかわからないんだが。

 少なくとも、文明の発展した現代に近い世界なのはわかる。

 風景から察するにここは新宿か?

 思った以上に俺の家に近いな。


 俺は再び目の前のガラスを見た。

 うーん。

 姿かたちは猫の獣人のままだ。

 ってことは完全に戻って来たわけではないんだよな?

 俺はこっそり、周りに気づかれない様に指先に小さな風を起してみる。

 普通に風魔法が発動した。

 やはり、アレクシスの身体のままのようだ。


 いや、これ。どうしたもんか。


 パァ~~~~ッ!!


 そう考えていた俺の耳に、クラクションの音が聞こえた。

 そちらを見ると、青いスポーツカーがクラクションを鳴らしながら歩道を進んでくるのが見えた。

 周りの人間はパニックになり、逃げまどい始める。

 すぐ後ろには覆面パトカーがサイレンを鳴らしながら追いかけているのが見えた。

 さすがにパトカーは車道を走っているな。

 って冷静に分析している場合じゃ……。

 いや、いけるか?

 身体はアレクシスのままだ。

 今の能力ならあれくらい。

「退け!退きやがれ!轢かれてぇか!」

 スポーツカーの方から男の声が聞こえたかと思うと、俺の目の前には既にスポーツカーの姿があった。

 これは……普通にしてたら間に合わないな。


 スポーツカーのクラクションを聞きながら、俺はそう呑気に思うのであった。


?「ようやく拙者の出番でござるな」

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