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11-8.町とギルド

 あの変な男に会ってから既に2日。

 まぁ、何事もなかった。

 5日後にはもう一度帝国に行かねばならない。

 戻って来たときにゴルディを探したんだが、城を探してもいなかった。

 ……というか、影に仕込んだ影魔法で場所はわかっているんだが。

 ずっと倉庫エリアから動かない。

 何してんだこいつ。

 何か依頼でも受けたのかな?

 ……また鼠退治だったりして。


 ついでに誰か暇そうな人はいないかと色々影魔法で探ってみたが、バロンやエリザベスは相変わらず聖域と呼ばれるエフィーリアさんが住む森に。次期公爵組は城で訓練かな?これは。

 グレイは遠藤氏とギルドにいるみたいだ。……氷室さんもギルドか。

 お?リヴィアーデさんが下のドラゴン便の待合所にいるな。

 帰ってきてたのか。しかし、預けた猫たちの反応はニヤァーベの里にあるな。

 最近帰って来たなら、この皇都の現状はさぞ驚いたことだろう。

 あとは転移者組……ってこいつらも森にいるな?

 何してるんだ?3人そろって。狩りかな?



 うーん。今日はどうしようか。

 城にいるとドラディオ達に仕事を回されそうだしな。

 わけわからん書類仕事なんて御免だ。

 そうだ!ギルドに行ってみるか。

 あの変な男夫婦もギルドにいるかもしれないし。

 でも、人の姿をしていたらまた何かしでかすんじゃないかと、他の人たちに思われるのもなんだしな……。


 俺はポーションイーターの姿になる。

 今は招魔の第一陣、第二陣で召喚された……作り出された?フォレストキャット達が城下に大量にいる。

 猫の姿でも目立たないだろう。

 というか、実際問題どうなんだろう。

 王配の元の姿は猫でしたとか……。

 国民に知られたらショックで卒倒するんじゃなかろうか。

 まぁ、今更どうこうできないんだけどな!




 俺はポーションイーターの姿のまま、悠々と城下を歩いている。

 ギルドまではそう遠くはないが、この姿、生後4か月くらいの大きさしかないので実は結構大変なのだ。

 俺達の世界の家猫でいうならだが。

 大体、成猫の半分くらいの大きさ、歯が生え変わる前。人間でいうと5~6歳ごろってところか。

 そりゃシャルロッテさんを一発で魅了したのも分からなくはないって姿だ。

 より上位のワンダリングスターやフォレストキャットくらいに成れば成猫よりちょっと大きいくらいだが。

 うって変わってさらに上位のヴォルガモアやヴォルケーノは座っていても人を超すくらい大きいし、九尾なんてかなりでかい。

 もしも、はじめからあの姿だったら俺は拾われてなかったかもしれないな。

 そう思うと、この姿も感慨深いものがある。


 まぁ、どこまでいっても猫は猫なんですけどね!





 俺は悠々と街中を歩く。

 配下の猫たちのおかげで、町の人たちも結構猫に慣れてきた。

 俺が歩いていても「かわい~」とか「どこの子かしら?見ない子ね?」とか言われるくらいで別段、驚かれたりとかはしない。

 慣れたな、この町の人たちも。

 俺は道の端を通るように歩いていく。

 俺のイメージだと塀の上でも歩きたい気分なんだが、なんせこの町、塀があるのは貴族地区くらい。

 その貴族地区の塀も屋敷と屋敷を仕切る為結構背があったり、武骨なデザインのものが多い。

 さすがにわざわざそこまで行って歩こうとは思わない。


 いや、やっぱりこの視線になると物が大きく感じるな。

 割と長い時間この姿だったはずだから、新鮮味はないはずなんだけどなぁ。

 最近は普通に一日人間に成れていたし、一度人間の目線に戻ると、やっぱり新鮮に感じるな。

 俺は城を出てまっすぐ行くと適当なところで折れる。

 この辺の通りは住宅も多いんだけど、メインは行政系の施設が並んだ行政区画。

 ギルドもこの区画に入る。

 通りの反対側を進むと貴族街に着く。

 こっちは今回は関係ない。

 行政区画をくるっと回って進む。

 行政区画の最後の角は徴税所。

 ここは少し広い。まぁ、市民から収められた税を一時的に保管する場所と税関係の書類が納められているから当然広くなるよね。

 そんな場所を回ってさらに奥に行くと、十字路にあたる。っといってもこの町は十字路だらけなんだが。

 ゴルディ曰く、町の形状は3本の大通りから十字路で伸ばしていく所謂碁盤型。

 自身で設計したそうだ。シミュレーションゲームとかでは碁盤目は日本人特有の碁盤目病とか言われてたりはしていたな。

 元々王城は湖に囲まれていたわけではなく平地だったそうだし、いま湖を湛えている王城周辺は少しくぼ地っぽくなっていたそうだ。

 その外側に町を建設し、そのまま移動。今の位置で地下からの水を吸い上げることで湖としたらしい。

 勿論、元々地下水の出口だったという事なので水は豊富にあったらしいのだが、治水と用水確保の両立が出来たらしい。

 おかげで少し大きめの川を通すために若干削ったみたいだけど。

 ちなみに今俺の居るところの角にあるのが、治水管理局。

 皇都内の上下水道の管理やスライムの管理をしているところだ。

 ここから南に折れると倉庫区画、北に折れるとギルドにつく。ちなみにこのまま東にまっすぐ行くと市民の住宅区画を経てウーマ達の牧場へと続く。

 今日はこのあたりから北に折れよう。

 真っ直ぐ行くとギルドだが。

 左右には他の行政関係の建物。

 ほぼすべてが3階以上の建物だ。

 なんか雑居ビルの道を思い出す。

 やはり使える面積が少ないと縦に伸びるのだろう。

 魔物の素材で、より強い建物も作れるだろうし。

 俺は新しく作り出す次の町の事にアイデアを巡らせながらギルドへの道を歩く。

 現代ではRPGよりシミュレーションゲームとかサンドボックスの方を好んでいたからな。

 こういうのは、やっぱり楽しいな。


 そんなことを考えていたら直にギルドについてしまった。

 もう少しゆっくり来ればよかったな。


 みー。


 ん?

 草の陰の方から声が聞こえた。

 あぁ。配下の猫か。

 こいつは倉庫番の個体か。

 何だそれ?ウインナー?

 あぁ、ギルドの職員にもらったのか。

 え?

 取らない取らない。

 そう警戒するな。

 泣きそうな顔で献上する必要ないから。

 すまない、邪魔したな。

 え?半分は持って帰るの?

 あぁ、奥さんが妊娠中なのね。

 うん。行っていいよ。

 気を付けろよ。

 そう言って、俺は猫を見送る。


 妊娠、妊娠かぁ。

 子供が生まれるってどんな感じなんだろうな。

 今の俺じゃ、想像できないや。





 ギルドの中に入ると相変わらず騒々しかった。

 まぁ、こういうところなんだろうな。

 俺は周りを見ながらグレイがある方向に進む。

 遠藤氏とテーブルについているみたいだ。

 向こうもこちらに気づいた。

「え?神獣様?どうしてギルドに?」

「え?神獣様?」

 遠藤氏は少し困惑。

 遠藤氏ってこの姿見たことなかったっけ?

 まぁ、ここで姿を変えると場が混乱したらいけないのでグレイ、説明は任せた。

 そう考えながらテーブルに乗って丸くなり、尻尾をピタピタと揺らす。

「はぁ。わかりました。でもきちんと自分でも説明してくださいよ。全く」

 君も大概、喋らなくても俺の言葉がわかるようになってきたね。

「あの?次期伯爵はなんで猫と会話できるのでしょうか?」

 シャルロッテさん曰く、『愛の力』だそうだがこいつの場合はなんだろう?

 流石に『愛の力』じゃないよな。

 そういえば、氷室さんはどうした?ギルドに居るはずだけど……、影魔法を追っていくと、ギルドの奥にいるみたいだな。

 台所か?

「あぁ、氷室さんなら奥で新しいメニューを作ってるみたいです。遠藤さんのおかげで新しい香辛料や調味料が手に入ったので。あ、醤油とか味噌もありましたよ」

「まぁ、そこまでの量は用意できませんでしたが。前に東方から仕入れた物を放出しました。在庫はそんなになかったのですが、次期伯爵の支援と恩を売ることに比べたら安いものです」

 そうなのか。

 そういえば、ノブナガたちも東方出身だし、いっそ次の町には醤油と味噌を生産する醸造所でも作るか。勿論酒も生産してもらって。

 この辺はゴルディとスライムのお陰で水が綺麗だからあまり無いみたいだがやはりこの世界でもワインやビール等の酒を飲料にしている人は多い。

 昼間は沸騰させて冷ました水で薄めたりしている人とかな。

 で、この酒。味はそこそこ、とにかく量を生産して収集所で樽を1度開け、混ぜてから再び樽に詰めているらしい。

 よくわからないけど、なんか色々事情があるらしい。

 所謂ブレンドワインと言うやつかな?

 常飲したときの飲みやすさを重視してるのかもしれない。

 いずれにしても皇都には一軒しかないらしい。作っても大丈夫かな?利権とか絡んでくるかもな。


 そうこう話しているうちに氷室さんが食事を持ってやって来た。

「おまたせって、あら?神獣様?」

 にゃーん。

 軽く挨拶を返しておく。

 後にはグレイの婚約者の面々。

 たしか全員、ギルド職員だったよな?

 え?なんで全員集合なんだ?

「最近は食事をするのも勉強で……貴族の食卓の作法とかを皆でティナさんに習っているんです」

 へぇ。そうなのか。大変なんだな貴族も。

「貴方もそのうち、習うようになると思うわよ」

 氷室さんが呆れたようにそういう。

 テーブルマナーか。正直、面倒くさそうで嫌なんだけど。


 そうこう交流をしていると、ギルドの受付の方から怒声が届いた。

「なんだと!?もういっぺん言ってみやがれ!」

「だから、こんな小さい子供に絡むようなら、テメェはそれまでの男だって言ってるんだ。聞こえないとか、耳まで悪いんじゃないか?」

「テメェ!」

 怒りの表情をしている男は、如何にも荒くれといった姿。

 何も知らずに後ろから見たら、熊かゴリラ、前から見ても山賊の頭領にしか見えない。

 対しているのは……、あれ?昨日のあの男だ。

 後ろには奥さんか?

 ははぁ~ん、なんとなくわかって来たぞ。

 原因は分からないけど、あのゴリラが奥さんに絡んでイラっとした男が喧嘩を売ったってところか。

 物語ではよくあることだ。

「ちょ、アレ、不味くないです?」

「あの冒険者は……先週皇都に来たアルトランドの戦争級の冒険者ですね。先日も乱闘騒ぎを起こしていました」

「戦争級?あいつが?冗談でしょ?」

「一応、資格はあるみたいです。試験結果はそれなりに優秀だそうですよ。人格的には……下三級みたいですけど」

 下三級?なんだそれ?

「ティナさん、下三級って言うのは?」

「まぁ、ギルドが各冒険者の書類に記載する評価ランクの事です。外には出ませんが。例えば神獣様の実力は上一級、氷室さんの依頼への向き合い方は上三級みたいに」

「そんな評価値あるのね……」

 なるほど、俺がステータスで見るAとかCとかって表示みたいなもんか。

 違うのは俺のはステータスを直に見るのに対して、こっちはギルドが評価してるってところかな。


「死にやがれ!」

 そんなことを話していると、ゴリラがあの男を殴ろうと飛び掛かる。

「まずい!」

 遠藤氏が真っ先に反応する。

 釣られて俺も飛び出しそうになるが。

「大丈夫よ」

 氷室さんがそんな俺たちを制した。

 俺達が氷室さんの方を向いた瞬間。

 後ろから悲鳴のような声が聞こえた。

「いででででででっ!!!!!!」

 振り向くと、あの男がゴリラ男の手を捻り上げているところだった。

「レディに手を出そうとするとは。テメェ、死にたいのか」

 男がドスの利いた声で捻り上げた男に声をかけた。

「つ、強い……あの人、何者ですか?」

「さぁ。少なくのもこの辺りの冒険者じゃないわね」


「テメェ!いったい何者だ!」

 そういったゴリラ男の問いに、男が答えた。




「ただの田舎の道具工房の主だ。テメェみたいな悪党に聞かせるつもりもないが、道具工房『ロマン』の主、大賀浪漫って言うんだ。御贔屓に!」





 ん?なんだろう?

 なんだか、違和感が。

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