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9-9.初心者向けダンジョン、コーデリックケイブ

ダンジョンの色々は割愛しました。

コーデリック男爵管理のダンジョンは予算の関係から、入口から休憩所までのラインしか整備されていないので他はただの洞窟です。

「で、ここまで来たわけだが」

 ガラハドが俺たちを代表してそんなことを言った。

 ぶっちゃけ、俺が転移魔法でダンジョンの前に来たわけだが。

 本当、知ってる場所で助かった。


 あの後、ティナさんが提案してきたのは、鉱石採取の依頼だった。

「コーデリック男爵所有のダンジョンで純度三十%程度の鉄鉱石を一つ持ってきてください。それが今回の依頼になります」

「お、おい。ティナ君……」

 純度30%がどの程度の物かはわからないが、なんだか無理矢理依頼を作ってくれたようだ。

 グレイの婚約者には感謝しなければ。



 ちなみに、ふと疑問に思って聞いてみた。

「グレイ、なんで数字がないのにパーセントは使ってるんだ?この国」

「いや、そんなこと僕に言われましても」

 流石に知らなかったようだ。

「あ、それは私が教えたんだ」

 そんな軽い感じでゴルディが手を挙げた。

「元々、私の貯蔵魔力量を%で言っていたんだが、アレクシスが意味を聞いてきてな。教えた」

 ふーん。

「ちなみにパーは『毎に』、セントは『百』と言葉の意味も教えていたからか知らないが、この国の『百』という言葉の元にもなったみたいだな。ちなみにムカデみたいな魔物の事をセンチピードというが、これも私のせいだな。うっかり百足といったせいで、思いっきり『百』『脚』なんて名前がついてしまってな」

 いや、うん。まぁ。仕方ない、というかなんというか。

「そういえば、長さの単位のマーテラ棒とかももしかして……」

「……たぶん」

 うわぁ……がっつり、この世界の文化に食い込んでるよこの人。

「ちなみにゴルディ、純度30%の鉄鉱石ってどの程度の物なんだ?」

「……鉱山内であれば、そうだな……道端の石くらい」


 道端の石!?


 相当無理して依頼作ってくれたんだな。ティナさん。



「ともかく、依頼だ。……といっても、準備することもできないが」

「しかしガラハド、パーティーとして行動するとしても、我々は互いをあまり知らない。戦略を練るためにもここらで一つ、互いの紹介をしておくべきではないか?」

「確かに……と、言ってもなぁ」

 ガラハドはボリボリと頭を掻いた。

「まぁいいか。俺は自分で言うのもあれだが、典型的な戦士型だ。武器は広めのロングソードをメインにしているが、基本槍だろうが大剣だろうが何でも扱える」

 そう言ってガラハドがマントの中を見せてくれた。

 その腰や足には……、小型のナイフがビッシリと詰まっていた。

「多少なら遠距離もできる」

 成る程。

 ヴィゴーレは大剣一本で俺に向かってきたが、彼は様々な武器を扱うタイプのようだ。

 ヴィゴーレが重戦士と言うならならガラハドは野戦士といったところだろうか。


「次は儂だな。儂も基本は戦士だが、土と光の魔法も少し使える。まぁ、器用貧乏な感じだな。あぁ、戦いにはあまり期待しないでくれ。なんせ長いブランクがあるからな」

 イドバルドは万能型の戦士か。

 そういえば光魔法と闇魔法って俺持ってないんだよな。

 今度教えてもらおうかな。


「私は基本、魔法以外なら何でもこなせるが……まぁ、この体格だからな。直接戦闘は期待しないでくれ」

「お前さん、武器は何が使えるんだ?」

 ガラハドが屈み込んでゴルディに訪ねた。

「それは……これだ」

 ゴルディがどこからか銃のようなものを取り出した。

 現代の拳銃のようなものではなくて、子供向けアニメのおもちゃのような銃だ。

「それは……銃か?なんつー骨董品を……」

「説明するより、見てもらったほうが早い」

 そう言うとゴルディは銃を構えた。

 その先から眩い閃光が放たれたかと思うと、ガラハドの背後にあった木を貫き、大きな音をさせながら倒れた。

 木には大穴が空いており、その威力が伺えた。

「こういう武器だ。遠距離なら任せておけ」

「は、ははは……はぁ」

 ガラハド、目が点になっているぞ。


「さて、最後は俺だな。と言っても、俺こそできることは少ないけどな。魔法かステータスの高さで殴り飛ばすくらいかな?」

「「「いや、その自己評価はおかしい」」」

 全員から否定された。

 なんだよぅ。

「転移魔法を使って儂らをここまで運んで」

「姿かたちを変えて未知の魔物や俺達実力者相手に大立ち回り」

「挙げ句、私が城を飛ばしたとはいえ帝国兵二万を相手に圧勝」

「「「そんなやつ、他にいない」」」

 息ピッタリじゃないか。コイツラ。

「まぁ、最終兵器ってことで考えておくしかないな。よし、じゃあ行くぞ。隊列は俺、イドバルド殿、ゴルディ殿、神獣様で。初めて二人と久々が一人だから俺が指示を出すけど構わないな?」

「構わない」

「了解した」

「おぅ、いつでも来い」

 その会話を合図に俺が重たい石の扉を開け、俺たちは暗い洞窟の中へと足を進めた。


 なお、ヒュードが折ったレバーだが、ただの飾りだったようだ。

 誰かがお遊びで付けた物らしい。

 その折れたレバーが、まるでこの洞窟に入る者の今後の運命を暗示しているようで、少しだけ嫌な予感がした。






 俺たちは歩みを進めた。

 各人の距離は1m程度。

 ガラハドの持ったランタンの明かりだけがこのくらい洞窟では頼りになる。

 まぁ、猫の目を持つ俺にとってはこの暗闇でもたいしたことはない。

 実際問題、ゴルディは赤外線スキャン的な目を持っているみたいだし、この明るさで苦労しそうなのはガラハドとイドバルドだけなのだが。

「待った」

 ガラハドが後ろに続く俺たちを手で制した。

「どうしたのじゃ?ガラハド?」

「前に三体。これは、ビッグラットか?」

 ビッグラット。

 少し前に皇都でも少し出たらしい魔獣だ。

 倉庫や農地を荒らす上、繁殖が早いので積極的に討伐されているんだっけ。

 この前出たのは倉庫だったかな。

「うぇ……あいつらか。さっさと倒すに限るな」

「お?えらく積極的だな?」

 俺はやたらと好戦的なゴルディにそう聞いた。

 すると返ってきたのは意外な答えだった。

「あいつらに以前追いかけられてな。それ以来、見たら積極的にこいつを叩きこんでいる」

 銃を少し上に向け、ゴルディがそう言った。

 ……うちのロボットは予想以上に好戦的だった。

 以前、よほど嫌な目にでもあったんだろうか?

 そういえば城下の倉庫で爆発騒ぎがあったと、城の誰かが言っていたっけ。

 完全にスルーしてたけど、もしかしたらこいつがぶっ放したのかな。

「で、そろそろぶっ放してもいいか?」

「待て待て。それは後に取っておけ」

「そうですぞ。あのような小物にその武器はもったいない。それに、儂も準備運動がしたいしな。良いな、ガラハド」

 そういうと、イドバルドが剣を構える。

 いや、あんたもだいぶ好戦的だな。

 久々の冒険だからテンションが高いんだろうな。


 イドバルドが前傾姿勢になってから駆けだす。

「え、ちょっ!?陛下!?」

 は、はやっ!?

 なんだその速度!?

 瞬く間に30mほどの距離を駆け抜け、左から右へ剣を振る。

 すると前にいた大きな鼠たちがあっという間に両断された。

 頭から縦に裂かれた鼠もいれば、首を切り落とされた鼠もいる。

 いや、すごいな。

 無茶苦茶強いじゃん。イドバルド。

 これが隊長級って冒険者ってすごいんだな。

「縮地。……久方ぶりだったが、なかなかうまくできるものだな」

 イドバルドが剣を振って血を飛ばす。


 縮地。

 漫画とかでよくある、移動方だな。

 あれ?イドバルドのステータス見た時にそんなのあったっけ?

 もう一度見てみるが、やっぱり無いように見える。

 あ、もしかしてこれか?

『東方式古武術:Cランク』

 そういえば、ヴィゴーレもなんか『技』的な物使ってたな。

『技』と『スキル』は違うものなのかな。






「陛下。頼むから自重してくださいよ……」

 ガラハドが再び頭を抱えた。


 ガラハド、お前、苦労人なんだな。




 ……苦労を掛けているうちの1人が言えたことではないが。


 ごめんちゃい☆

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