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8-7.ダンジョン

ほぼ説明だけで終わってしまった……

「ここが例の洞窟ですか。ここにクリアンティーナが」

「多分。『黒蹄』さん。前に来た時、行方不明になった方たちはどこにいたんですか?」

「バルクスでいいぞ。伯爵殿。前の時は確か、神隠しにあった奴らは一段下の階層にいたな」

「次期、です。僕もグレイでお願いします。次期伯爵って言われるのまだ慣れてなくて」

「あの、バルクスさん。一段下、ということはこの洞窟は何階層もあるのですか?」

「さぁ?本格的に潜ったわけじゃ無いからな。ただ、今はダンジョン化してるみたいだが、自然に出来た洞窟なのは間違いないな。町の住人にも確認したが、地滑りから枯れた井戸があるらしいから、元は地下水脈が流れていたのかもな」

「成る程、これは結構覚悟して向かわないとですね」

 グレイ、遠藤氏、バルクスの3人が洞窟前で喋っている。

 俺は後ろで聞いているだけだ。

 まぁ、喋れないからな仕方ない。

「……ところで…………」

 バルクスがたっぷり貯めている。

 なんだ?何か言いにくい事か?

「なんだよこの化け物は!?」

 俺を指してグレイに怒鳴った。


 化け物とは失礼な。

 ただの可愛い猫じゃないか。

 ……少々デカくて尻尾が9本あるが。





 急報を聞いた俺達は直ぐさま、例の洞窟へ文字通り飛んでいった。

 飛んでいった先の村で、バルクスを見つけ、合流することができた。

 幸いにも、今回のこの村で起きた事件に一役買ったのが彼で、かつ洞窟内にも潜ったことがある人物だったため、道案内を頼むことにしたのだ。

 バルクスが解決した後には、失踪の日を迎えていないため、真実は分からないが、神隠しは止まっているはずだ。とのことだった。

 数ヶ月前から1ヶ月おきで起きていたこの事件は、月の決まった日に起きていたらしく、神隠しにあった人間と思われる人間は全員保護された。

 蜘蛛の巣の繭ようなもので絡め取られ、眠っているようだったとは彼の言だ。

 そのようなものがある以上、神隠しに何らかの力を持つものが背景にいることは間違いなかった。

 敵の正体は結局、出会わなかったので分からなかったようだが。

 今では被害者は全員意識が回復し、通常生活を送るれるレベルまで回復しているとのこと。

 なんだか、目的が分からない事件だ。

 人間を攫うか隠すかしてその後どうしたかったのだろうか。


 しかし、普通の人間には眠り以外にはなくとも、俺たちには問題があった。

 氷室さんとテルミスのことはもちろん心配だが、フレズベルクの団員、クリアンティーナの事だ。

 彼女は妊娠していた。

 遠藤氏との間に授かった子が未だ腹の中にいるのだ。

 本人は眠っていても、子に影響がないとは限らない。

 なので俺達は救出を急ぐ必要があった。

 全力を出すため俺も九尾の猫の姿になった。

 幸いにもグレイが場所を知っていたので直ぐに飛んできたわけだ。



「吾輩の眷属の養育者よ。よもや吾輩を忘れていまいな?殺意なき闘争の場で相見えたであろう(あぁ、猫を引き取ってくれたバルクスか!俺だよ俺!試合で戦ったろ?)」

 何だこの翻訳。マジで。

 やっぱり、この姿で下手に喋るもんじゃないな。

 若干、バルクスも引いてるし。

「あぁ、あの時の神獣様か。いやなんか、凄い姿になったな?」

「うむ。神の力の権化と化した吾輩が力を開放した姿だ。口調は吾輩の特性だ。容赦せよ(あぁ、なんか進化したらこうなってな。喋り方が変わってるのは勘弁してくれ)」

「あ、あぁ。うん。まぁなんというか。なんとなく言いたいことはわかった」

 バルクスが察してくれた。

 なんと優秀な人なのだろうか。

「なんか、神獣様。喋り方おかしくありません?」

「先ほどの人の姿の時とはだいぶ印象が……」

 グレイと遠藤氏はツッコミを入れてきた。

 グレイは察してくれよ。

「容赦せよ(すまんが喋るとこうなるんだ)」

 ほんとすまん。




 そういえば、人の姿には成れないか試してなかったな。

 今まで、一日一回だと思い込んでいた。

 シーツは……空間魔法にあったな。

 試してみるか。

 俺は人化を意識した。




「出来たな」

「うぉ!?こいつは驚いた」

 俺も驚いた。

 今までは時間的な制約があったから試せなかったが、これで単純な時間されていることが分かったな。進歩だ。

「ところでバルクス?ここってこのまま入っても問題ないのか?」

「あ、あぁ。普通ならギルドに申請とかそれなりの準備はいるが……今回は緊急事態だからギルドに人を走らせた。ギルドの問題はクリアだ。後はダンジョン攻略の準備だが……」

 バルクス曰く、それなりにポーションとか食料とかを用意して挑むのが一般的だそうだ。

 悪いが今回は買い物をしているような暇はない。

「多少なら私のマジックバックに入っています。今回はこのまま潜りましょう」

「わかりました。そうしましょう」

 俺達は準備もなく、洞窟の中へと急ぐのであった。




 洞窟の中はなんだか息苦しい。

「そういえば、ダンジョンってなんなんだ?」

「ダンジョンってのはだな……」

 歩きながら俺は素朴な質問をした。

 バルクスの話によればダンジョンには2種類のタイプがあるそうだ。

 1つ目は自然にできた魔力溜まり。

 長年魔力が溜まり、排出、循環が上手くできないときに一帯が魔物を生み出す装置として機能し、結果としてギルドからダンジョンとして認定されるタイプのダンジョン。

 もう1つは魔導具や術者の力で無理やり魔力をとどめ、魔物を生み出せる程環境を作り変えられた施設。

 この間、トラキスが激怒したときに起きた現象に近いのはこちらのようだ。

 ダンジョンについてはギルドによって管理されていることが多く、共通しているのは、魔物を生み出す環境が作られているという点だ。

 また、ダンジョンからは貴重な品が算出する事でも有名だ。

 これは魔力のこもった品であったり、鉱石だったりと様々だが、主な産出品は魔物の素材だ。

 この辺りは蓄えられている魔力の量が関係しているらしく、より魔力の量の大きいダンジョンほどそういった品が出やすいらしいく、魔物も強いらしい。

 ちなみに、皇都の近くにある、俺とガラハドが潜ったダンジョンのように、人が出入りすることで魔力が拡散され枯れてしまったダンジョンもあるそうだ。


 また、ダンジョンはまるで意志があるかのようにその中身を変化させらこともあるそうだ。

 数百年単位らしいが。

 有名所では帝国に『迷路迷宮』と言うものがあるらしい。

 これは三皇家時代に作られたダンジョンで、一定時間ごとに道順を組み替える恐ろしい洞窟型ダンジョンなのだそうだ。

 このダンジョンを作った際には、ダンジョンコアと呼ばれる魔導具が使われ、今も深部ではこのダンジョンコアの劣化コピーを生み出しているそうだ。

 何故そんなことをするのか、できるのかは定かではないが、一説にはダンジョンコアは人工的に作られた魔物の一種ではないかとのこと。

 当時は今よりも魔石や魔獣の素材は高価だったらしい。

 そこに目をつけた技術者が作り出したもので、素材の収集とさらに新しい場所を作るためにではないかと。

 なるほどなぁ。この世界も色々あるんだな。


 ちなみにだが、バルクスの予想ではこのダンジョンは前者のタイプ。

 理由はここががけ崩れによって発見された洞窟だからだそうだ。もともと、魔力の溜まりやすい環境だったということだろう。


 つまり要約すると、ダンジョンってのは魔力によっていろいろ起こる不思議空間、ってことらしい。


 歩みを進めると、いろいろ普通ではない感じが見て取れた。

 まだ魔物こそ出てこないが、視界の端々には、見たことのない植物の根や、苔、鉱石の類があった。

 バルクスは途中何度か立ち止まり、バックから試験管のようなものを取り出しそれらを採集していた。

「何してるんだ?」

「ん?あぁ。気にするな。趣味みたいなもんだ」

 急がなきゃいけないときだから趣味なら後回しにしてもらいたいんだが。

「まぁ、そういうなよ。これもダンジョン攻略には役に立つんだ」

 ん?どういうことだ?

「このダンジョンは何の魔力を元に出来てるかまだわかっていないからな」

 ?

 さっぱり意味がわからない。

「成る程。ダンジョンを形成する魔力がどんな魔力か分かれば、そこに生息する魔物の予想もつけられる、ということですか?流石、天災級の冒険者です」

 正解を導き出した遠藤氏がバルクスを褒める。

「そういうこと。冒険者ならお前たちも覚えておいた方がいいぞ。役に立つからな」

「確かに。そういえばうちのククも植物収集が好きでしたね。参考になります」

「あぁ、フィルボルの知り合いがいるのか。まぁ、俺らフィルボルは毒素を分解できる特性があるしな」

「え、はぁ!?フィルボル!?……いや、でも身長が……、名前も……」

「気にしないでくれ」

 うん?

 よくわからない。

 俺にもわかるように説明してくれればうれしいんだが。




 そうこうしているうちに、俺たちの目の前に下の階へ続く階段が現れた。

 いや、これは階段ってより……。

「坂道?」

 うん。坂道だ。

 自然に転がった岩や障害物を避けて自然にできた通り道。

 地面が砂地のがなお自然っぽい。

「ここが、下の階に降りる道だ。例の繭のところまではここからすぐだ。……邪魔が入らなければ、だが」




 下の階から、流れてくる魔力の気配。

 相当量の魔物が、この下の階層に居ることを予感させた。

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