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8-6.神隠し

「し、死ぬかと思った……」

「神獣様……も、もう少し、ゆっくり……」

 大げさな。

 大分速度は落としたぞ。

 この中洲に降りるまで、大体10秒くらいかかったしな。

「グレイ?何やってるんだこんなところで?」

「ぜぇ、はぁ……、あ、オットマン。悪いけど、姫様達かドラディオ殿を呼んできてもらえない?至急の要件で」

「至急?なにをしてるんだ?」

「いいから、お願い」

「わ、わかった」


 オットマンが走り去ると、遠くから声が駆けられた。

「グレイ殿、少しいいか?」

「え?」

 俺たちが声が聞こえた方へ目を向けると、壮年といった感じの騎士風の男が立っていた。

「あ、クルクス団長」

 クルクス・クルシオ。

 以前チラッとだけあったことがある。

 白薔薇騎士団の団長だ。


 ちなみに、この国の騎士団というのは少々複雑な構成がされている。

 赤百合騎士団と白薔薇騎士団の2つの騎士団があることと、それぞれの役割は依然話した通りだ。

 しかし、実際はその上に騎士団をまとめる存在というのがいる。

 皇立騎士団、と一般的には認識されているらしい。

 本来の名称は『双華騎士団』団員はわずか4名。

 実際には騎士団というよりは皇族と2つの騎士団の調整役、まぁ、大臣みたいなものらしい。

 この国の大臣職は、宰相、騎士局、魔法士局、冒険者局、経済局、外交局、農業局、漁業局、法務局、皇室局、軍務局、司祭局、催事局、内務局、文化局、それぞ乗れの局長が大臣と呼ばれる。

 このほかに、将軍と呼ばれる人が2名。

 それぞれ、軍務局、冒険者局から2名が選抜される。

 ちなみに、貴族をまとめる役職というのは存在しないらしい。

 これらは外交局が担っているそうだ。

 絶対王政じゃないのがその辺と関係してそうだが。

 ざっと見た感じ、絶対王政寄りの封建制といったところか。

 正直なところよくわからない。

 で、この双華騎士団。

 2つの騎士団に加えて、色々な組織が下部にいるらしい。

 グレイによるとそのうちの一つは、暗部と呼ばれ、情報収集や諜報を請け負う役職だとか。

 その騎士団の局長、つまり騎士団長をしていたのが、セ・バスティアン・ローランド。

 つまりじぃやさん。

 驚くべきことに、じぃやさんは騎士局のほかに、宰相、皇室局、内務局、文化局、外交局を兼任していたそうだ。

 ほんと、完璧人間だったんだな。じぃやさん。

 勿論まだ後任は決まってはいないが。

 ちなみに、メンバーの4名の構成は以下の通り。

 団長、セ・バスティアン・ローランド。

 レノス・ジュノア。

 オクス・トラメラ。

 ファファ・ビビ。

 じぃやさん以外の人は……レノスを除いてあったことはない。

 レノスもチラッと会っただけだしな。


 で、このおっさんは白薔薇騎士団の騎士団長。

 マリアゲルテさんの上司にあたる人物だ。

「どうかされたのですか?」

「いや、それがな……。今日はシャルロッテ姫殿下の観覧訓練がある予定だったのだが、姫殿下が御両名とも体調不良で休まれておるのでな、今日の訓練は延期になったのだ」

 あ、すみませんそれ、俺のせいです。

「それで団員には自主鍛錬を命じていたのだが……ん?そちらの方は?」

 クルクスがグレイに問いかける。

「あぁ。それが……」



「……なるほど。わかりました。では彼は私がお連れしよう。神獣様とグレイ殿はご同行されますか?」

「あー、そうですね。僕が同行します」

 俺はどうしようかな。

 どうせ喋れないし。

 言っても意味ないといえば意味ないんだよな。

 うーん。

 まぁ、ついて行くだけついて行ってみるか。

「そういえば騎士団長、例の調査の方はどうなってますか?」

「あぁ。あの件か。今のところ、目立った動きはない。あれから、被害者も出ていないみたいだな」

 例の調査?

 何の話だ?

「あの?一体何のお話ですか?」

「あぁ。すみません。実はセレーノ伯領内で不思議な事件が起こっていたらしくて」

 不思議な事件?

「唐突に人が消えるんです。本当に唐突に。消える瞬間を見た人もいるくらいで。始めは1人、次の日は2人、また次の日は3人って具合に」

 なんだそりゃ。

 また物騒な事件だな。

「で、6日目に『黒蹄』のバルクス殿が新しいダンジョンと思われる洞窟を見つけたんです。これ自体はがけ崩れで露出した洞窟だったみたいなんですが、その中に行方不明の方が全員見つかったことから、国に調査の依頼が出たんです。それから行方不明事件は起こっていません」

「その方たちはご無事だったのですか?」

「えぇ。全員、眠ったように目を覚まさないこと以外は五体満足で」

 ふーん。

 まあ、全員無事で良かったな。

「それで、調査に派遣されたのが、白薔薇の面々だったわけだが」

 ん?

 なんだこれ?

 魔力の流れを感じる。

 いや。これ魔力か?

 なんかもっと違うもののような?

 気配を探ろうとするも、俺の感じた感覚は直ぐに霧散してしまった。

 あれ?何だったんだ?一体?

 街の方向から感じた気がするんだが。

 まぁ、問題ないか。

 今、街には氷室さんをはじめヴィゴーレ達、黒鉄の騎士の面々にガラハド達、紫煙の剣もいる。俺の配下の猫達も大勢いるから、早々問題なんて起きないはずだ。

 俺はそう考え、グレイたちについていくことにした。

「とまぁ、このあたりが事件のあらましだな。今は目撃者の聞き込みに行っているところだ」

「なるほど。しかし良かったのですか?一般人の私に話して」

「なに、心配はいらん。ギルドに行けばわかることだし、貴方はグレイ殿が連れてこられた方だ。心配ないと言うならそうなのだろう」

 なんだろうか。

 それにしてもへのグレイ、クルクスからの評価が妙に高い気がするんだが。

「お父君からグレイ殿のことはよく聞いている。よくエールを片手に語り合った物だ。おっと、失礼。感慨に浸ってしまったな」

 成る程。

 旧友の息子だからか。

 何にしても、いい環境に恵まれたんだなグレイ。


 俺たちは警備の宿舎に入り、簡単な質疑を受け、今日は解散という流れになった。

 俺たちが外へ出ると辺りはもう暗く、日はすでに落ちた後だった。

「さて、これでとりあえず嫌疑は晴れたと言っても大丈夫でしょう」

「色々ありがとうございました。グレイさん。それに神獣様」

 ああ、まぁ。俺、何もしてないけどな。

「ご家族も心配されているでしょうし街まで送りましょう、遠藤さん」

「ありがとうございます」

「神獣様はどうします?」

 なんだかグレイがすごく手際良くなっている。

 最近、貴族としての勉強もしているらしいからそのせいだろうか。

 正直、前より頼もしいぞ。


 そんなことを考えていたときだ。慌てて走ってきた兵士が叫びながら警備室に向かってきたのは。

「急報!!急報!!!」

 兵士は、俺たちには目もくれず、警備室に入っていった。

 流石に気になった俺達は、開け放たれた扉からこっそりと中を覗いた。

「どうした!?落ち着いて状況を説明しろ!」

「はぁはぁ!……城下で、神隠しと思われる現象が発生!!」

「なんだと!?セレーノ伯領のか!?」

「同一のものと思われます!」

「被害者や目撃者はの詳細は!?」

「か、確認できた被害者三名!……『黒炎』のテルミス!『閃光』の氷室!そして冒険者一名!すべて女性です!」









 は!?

 な、なんですと!?

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