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8-4EX.倉庫個体フォレストキャット、恋の季節

ギリギリかもしれん。

表現的にアウトかセーフか。

 吾輩は魔物である。

 名前はテリーである。

 最近人間たちの間では、吾輩や吾輩の同輩の事をフォレストキャットと呼んでいるらしい。

 吾輩たちは、魔物とはいっても魔法を自在に扱えるほど熟達してはいない。

 だが、そこらの魔物や魔獣には負けない自身はある。

 事実、人間一人くらいなら簡単に屠れる。

 まぁ、よほどのことがないかぎりはしないが。

 吾輩もこの自慢の尻尾を突然掴まれでもしない限りは、危害を加えようとも思わない。

 ……人間の子供はそれをしてくるので苦手ではある。


 吾輩が食と寝床を提供してもらっている宿舎では、吾輩はテリーと呼ばれている。

 それが吾輩の固有名詞だと気付くにはそれなりの時間を要した。

 なにせ行く場所によって名が変わるのだ。

 今、吾輩が呼ばれている名前はテリー、コレッタ、グルー、タマ。

 行動範囲が増えれば、名が増える。そんな感じだ。

 吾輩の同輩では実に十数個の名前を持つものもいる。

 統一するためにもなにか名前がわかるものがほしい。

 そう思っていたら、若い男が首輪なるものを用意してくれたようだ。

 彼は、たしか主のお付きだったはずだが。

 聞くとこの広大な街に残った同輩全てに配っているようだ。

 吾輩のように一処にとどまっていない同輩もいるため、苦労しているようだ。

 ともかく、吾輩には革製のベルトが贈られた。

 ベルトには吾輩の名前が彫られているらしい。

 ……残念ながら、吾輩には人間の言葉は読めないのだが。

 それをどう使うのかと思っていたら、首に巻かれてしまった。

 はじめは邪魔になるかとも思ったのだが、慣れてみると意外とそうでもない。

 むしろなにかに目覚めそうな……。

 いや、やめよう。




 吾輩たちはフォレストキャットは三日に一回、定期的に集まって集会を開く。

 互いの近況報告と、情報交換のためだ。

 時刻は三回目の日が落ちる頃。

 吾輩たちは闇夜でも目がよく効く。

 しかし、人間にとっては薄暗いこの時間が本来は一番動きやすい。

 何処かについていってしまった個体を除き、我々はこの集会に集まっている。


「いやぁ、最近は忙しいな」

「なんでも、人間の間じゃ、俺たちに餌を与えることが流行になっているらしいぞ、神獣様のご利益があるとかで」

「いいところに当たれば上等の飯が出てくるんだがな」

「私、この前肉を貰ったわ。焼いたやつ。パンってやつに挟まれてて美味しかった」

「「いいなぁ……」」


 などと、他愛のない話をしている。

「ん?今日はあいつは?いないのか?」

 思わず口に漏れる。

 アイツというのは俺の狙っているメスの事だ。

「あいつ?あいつって、あの兵士に引き取られた個体のことか?」

 そう、兵士に引き取られた。

 確か吾輩に首輪を持ってきた兵士。その後、その兵士の番候補に引き取られたところまでは聞いたが。

「あいつなら、体調悪いらしいぞ。なんだ?まだあいつを狙ってたのか?脈なかったろ?」

 別にいいじゃないか。脈が無くても。

 吾輩はあいつが気に入っているんだから。

「そんなに心配なら、手土産でも持って見舞いでも行けばいいんじゃないか?」

 それだ!

 なんで気づかなかったんだ!

 一気に距離を詰めるチャンスじゃないか!

「程々にな~。あんまりしつこいと嫌われるぞ~」

 そんな同輩の言葉を背に吾輩は走り出したのだった。



 あいつを吾輩が気にしだしたのは召喚されてすぐのことだった。

 同輩は数十居るがあいつはある意味で特別だった。

 ほぼ横ばいの能力を持つ魔物だが、例外的に外見や能力に大きな差が生まれる個体がある。

 それは進化の直前であったり、容姿に優れていたりと様々だが、あいつの場合はその毛並みに出た。

 ひと目見て惚れた。

 そのきめ細かな丁寧に毛づくろいしてあるであろう毛並みは吾輩の心を射止めたのだ。

 まぁ、吾輩達の種族の特性上、あまりその手の事を表に出すことはしないのだが。

 雄は雌を待つべし。

 それが吾輩達の交尾の条件だ。

 雄が雌を選ぶのではない。雌が雄を選ぶのだ。

 だが、アクションをかけてはいけないという決まりはない。



 吾輩は、走ってたどり着いた先で窓の端に彼女を見た。

 カリカリと窓の端を掻いている。

 なんだ。思ったより元気そうだ。

 っと、そうだ。

 手土産の事を忘れていた。

 まぁ、いいか。

 今日は元気な姿を見れただけで十分だ。

 む?向こうもこちらに気づいたようだ。

 窓に近寄ってみると、何やら甘い香りが……。

 あぁ、そういうことか。

 だから彼女は体調不良と言っていたのか。


 これは吾輩たちの種族としてはどうしょうもない類の物だ。

 所謂、本能というべきものだ。

 この匂いは、吾輩達の「そういう気分」を増大させる。

 あぁ、なんとも抗い難し匂いか。


「あら?貴方はどこのどちら様?」

 人間が窓を開けた。

 雌だ。

 たしか、主の付き人の雌だったはず。

「どうかしましたか?ティナさん?」

「グレイ様。いえ、こちらの子が……」


 そう言うやいなや、吾輩のお気に入りの雌が飛び出してきた。


 なぁーん!


 うむうむ。受け入れ体制万全だそうだ。





 うおぉ~ん!

 なぁーん!

 にゃーご!
















 -グレイ視点-





「あの?グレイ様?これってもしかして……」

「あ、え、えぇ。多分、そうだと思います」

 これってあれだよね。交尾。

 え、なに?

 恋人同士なの?

 というかなんでわざわざここまで来て……。

 僕たちはいったい何を見せつけられているんだろうか。

 これは何かな?

 僕たちに対する当てつけかな?


 あれは……。

 首輪の名前から察すると倉庫番の個体かな?

 この個体が家で引き取った個体と特別な関係だったとは聞いてないけど。


 というか、ティファニーに発情期の兆候があったから家に閉じ込めておいたんだけど。

 ティナさん、普通に開けちゃったなぁ。

 まぁ、説明してなかった僕も悪いんだけど。

 まさか、避妊手術なんてこの世界でできるわけじゃないし。

 こんななりして、神獣様曰く、金級・戦争級の魔物らしいし。

 ちなみに戦争級といえば、ダンジョン、いわゆる迷宮のボスクラスの魔物だ。

 めったに人前に現れることはないし、人間からわざわざ遭遇することも少ない。

 それがこの街じゃ、数十頭。

 まぁ、人間に危害を加えるわけじゃないからいいんだけど。

 ちなみに、最高ランクの冒険者パーティーのヴィゴーレ様が天災級。

 その2つ下が戦争級になる。

 上から、天災級、災害級、戦争級、隊長級、兵士級、一般級そのさらに下に、特殊、猟種となる。

 びっくりだよね。ほんと。

 あ、そうそう。

 ダンジョンといえば、この間、セレーノ伯の領地の1つであるアルバンド男爵領で新しいものが1つ見つかったそうだ。

 今は伯爵側で封鎖しているのだそうだけど。


 ってあれ?

「どうしたんです?ティナさん?」

 顔を真っ赤にしてなにかぶつぶつとつぶやいている。

「…………あのくらい積極的なら……」


 ……聞かなかったことにしよう。

 うん。それがいい。

少し短いですが。

明らかにアウトなところを削ったらこうなりました。

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