表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/300

2-1.城での生活

 ひどい目にあった。

 感触は幸せだったけど、超苦しかった。


 あの後、マリアゲルテさんにベッドに引きずり込まれた後、シャルロッテさんがマリアゲルテさんを抱擁。

 俺は二つの山に挟まれることとなった。

 やわらかい二つの山脈に挟まれ、いろいろな所が緊張やらなんやらで痛くなってしまった。

 反省。




 朝、目を覚ますとすでにベッドに二人の姿はなく、俺は一人起き上がった。

 窓のカーテンの隙間からまぶしい日光が入り込んでくる。

 空気が澄んでるからなのか、地球にいた頃より光が直接入ってくる気がする。

 カーテンの隙間から窓の外をのぞくと、兵士たちが…朝の訓練だろうか?声をそろえて走り込みを行っているところだった。


「日の出とともに起きだして!」

「「「日の出とともに起きだして!!!」」」

「走れと言われてひた走る!」

「「「走れと言われてひた走る!!!」」」


 …聞かなかったことにした。

 軍隊かよ。軍隊だったわ。


 あとそれ、某国の訓練するときの歌だろ。何で知ってんねん。

 そんなことを考えていると、後ろから抱き上げられた。

 シャルロッテさんかな?

「アレクシス様、おはようございます。お食事のご用意ができておりますので、食堂の方へまいりましょう」

 じぃやさんだった。残念。

 しかし、抱き方は優しく、こちらに負担がないように両手で抱えている。素晴らしい。

 ちょっとだけサービスしよう。俺は彼の見上げて鳴いてみた。


 にゃーん。


 無表情なじぃやさんだが、少し頬が緩んだような気がする。

 やはり猫の魔力は偉大ということか。



 俺はじぃやさんに連れられて食堂へと行くと、シャルロッテさん、マリアゲルテさんとともに朝食をとった。

 ちなみに朝食のメニューはウーマとかいう牛っぽい肉とパン、それにキャベツっぽい野菜だった。

 俺のメニューだけは食べやすいようにか、パンは塩味のスープに浸けられていた。

 なんというか、貴族…それも王族の食事の割にはレパートリーが少ない気がする。

 もしかして貧乏なのだろうか?

 いや違うな。貧乏だったら少なくとも城の中の調度品がこんなに良いはずないだろう。

 というかそもそも食事が肉だ。俺の読んだ物語だとファンタジー世界で貧乏だったら、やれ草だの薄いスープだの硬い黒パンだのそんな食事だったはずだ。まぁ、この辺はおいおいわかるだろう。俺の食事に影響がなければいいなぁ…。

 うむ、現代日本の食事に慣れた俺には毎日これはきつい。食べるけど。


 食事を終えると、マリアゲルテさんが席を立つ。うっきうっきした感じで肩をぐるぐる回しながら出て行った。

 姫様って感じじゃねぇなぁ……。

 シャルロッテさんはいつの間にかいなくなっていた。

 メイドさんの一人が俺の空になったスープ皿を下げる。

 思わず目で追うとソレに目を奪われてしまった。

 ……で、でかい!

 メイド服の上からでもわかるデカさだ。

 いや、いかんいかん。自重自重。

 あ、メイドさんがこちらの視線に気づいた。ニコッと微笑んで皿を下げてくれた。

 そうだよな、向こうからしたら俺はかわいい小動物だ。中身がおっさんとは思わんわな。

 そう、かわいい小動物。かわいいのだ。

 役得役得。


 食堂でのやり取りが終わると俺はテーブルから飛び降り、場内をぶらつくことにした。

 のだが……、しまった!?扉があけれない!?

 取っ手に飛びついて開けられるか?いや、取っ手をひねった後で押せるかわからん。

 うーん何とかできないか?

 そんなことを考えているとヌゥーと影が伸びて扉の取っ手をひねってくれた。

 なんだこれ?あ、もしかして影魔法か!?

 影が動かせるのか。すごいな魔法…。

 で問題は押せるかどうかだが…。

 問題なかった。左前足で少し押すと抵抗なく開いた。

 その隙間から外に出る。

 とりあえず、影魔法の使い方と、城の配置を把握する事にしよう。








 ~多夢和が出て行った後のメイドの会話~


「あら?」

「どうかしたの?」

「いや、アレクシス様がいないと思って」

「どこかに隠れてるんじゃないの?」

「うーん?いないみたい。扉も閉まって…あら?」

「開いてるわね」

「さっき見た時はそんなことなかったように思ったのだけど…」

「まぁ、開いているってことはアレクシス様は出ていかれたんじゃないの?」

「そうかしら…?まぁ、姫様から自由に行動させていいと言われているし、お探しする必要はないかしら?」

「そうね。きっとおなかがすいたら戻ってくるわ」

「…でも、あの扉って壊れて開きづらくなってなかった?」

「そういえば…誰が開けたのかしら?たしか、バスティアン様くらいしか開けられなかった気が…。あの方が閉め忘れるとは思えないし…。まぁ、考えてもしょうがないわ。さ、仕事しましょう」

「そうね…」






 食堂を出て、左に折れてまっすぐ進む。

 実は昨日の段階でこっちの方向に階段があることは確認している。

 あった。

 1階から3階まで伸びる大階段だ。

 1階から大きな階段が伸びて、突き当りで左右に折れた後10段ほど登り、2階となる。

 登り切った後には真っ直ぐな廊下が続いており、1階のホールを眼下に収めながら、壁側に大きな階段が現れる。

 2階から3階へと続く階段だ。3階は今は用事が無いのでスルー。

 1階への階段を降り、ホールへと降りる。

 このホールは2階天井までは吹き抜けになっており、3階がある。

 ホールに降りた後は左手に抜けると今度は渡り廊下…というか外廊下に行き当たる。

 外廊下の外側には広大な花壇や噴水が備え付けられており、そこにはシャルロッテさんが花壇に水を与えていた。

 花壇には薔薇などの花のほかに、ほうれん草っぽい野菜やキュウリっぽい野菜なども植えられていた。

 にしても広い花壇だ。ってかこれもう畑だろ。よく見たら花壇のほとんどは野菜じゃないか。入口付近しか花ねぇぞ。

 あ、いや野菜の花があるか。花といえば花だ。

 シャルロッテさん、入口にいる俺の存在に気づいていない。

 これも気配遮断のスキルの効果かな?このスキルも自分の意志でオンオフができるようにしないとなぁ…。気づかずに蹴り飛ばされたりしてもシャレにならない。

 俺はそんなことを思いながら、花壇から奥へと抜けていった。


 個人的な時間感覚では4時間くらいたっただろうか。

 何とか城を一回りできた。…といっても城の建物だけだが。

 デカいし広い。それにたぶん俺の体の大きさのせいもある。

 中庭…というか、城壁と建物の間の広場や城壁から続く通路とか塔とか。その辺はとてもじゃないけど回り切れない。

 俺はちょっとした小屋の屋根の上で休むことにした。

 ちょっと腹減った。…が、どうもこの国では昼食は一般的ではないようだ。

 というのもさっき腹が減ったのでメイドさんの一人に、飯をくれとねだってみたところつい先ほどおやつを食べ終えてしまって片づけてしまった、とか言われてしまった。

 昼食の代わりに、軽食やおやつを2度取る、1日4食スタイルらしい。

 次のおやつは逃さないようにしよう。



 屋根の上でボケっと自分のパーソナルデータを見ていたら新たな項目があることに気づいた。

 ずらっと並んだ名前と思われるリストの上半分、名前の横にCだのBだの書かれているところのさらに横。

 正直、なぜ左右にもスクロールできるようになっているのか。わかりづらい。

 もう少しUIというものを考えてほしい。

「登録」なる項目があった。試しに押してみた。

 お試しなので一番上にある「ワンダリングスター」なる項目を選んでみた。

 すると「登録済」という項目に変わった。さらにその横、に☆のマークが付き、ポーションイーターのところには★といった感じで色が塗られている。

 うーん。ゲーム的に考えるなら、今選択中のものが塗られているのかな?試しにワンダリングスターに色が移動するかいろいろ試してみる。あ、変わった。

 ん?心なしか目線が少し高くなったように感じる。

 もう一度戻してみた。やっぱり目線の高さが変わった。

 多分これ、他から見たら俺ちょっと大きくなってるな。

 おっと、スキルが少し増えてる。なになに…?

「幻影魔法」

「言語理解」

「ラッキースター」

「罠感知」

 なるほど、これが『ワンダリングスター』とかいう奴の能力なのかな?

 魔法二つ目ゲットだぜ。後で試してみよう。

『言語理解』は…、すでにあるんだよなぁ…。チートだけど。

『罠感知』もかなり有用だろう。

 で、よくわからないのが『ラッキースター』。説明をみてもさっぱりわからない。


 スキル名『ラッキースター』

 効果範囲『パッシブ』

 スキルレベル『EX+』

 効果『君は実に幸運だ!』

 説明『君はとても幸運だ!』


 もうちょっと説明しろよ、と突っ込みを入れたくなる。

 さすがにこれはひどいだろ。

 某MMORPGの強化屋のおっさんを思い出してちょっとイラッとしてインターフェイスを殴ってみたが、案の定すり抜けてしまった。くそ。

 しょうがないから昼寝することにした。ちょうど屋根の上は良い陽気ですぐにでも寝てしまえそうだ。この体になってから、ほんと寝る時間が長くなったなぁ…




「アレク様~?アレク様~?……何処に行かれたのかしら?」

 うとうとしていると、下からメイドさんの声が聞こえてきた。

 朝に見たメイドさんと違って胸の部分が慎ましい。ぺったんだ。


 俺はここですよー。


 お?俺の姿に気づいた。

 手を振ってこっちを呼んでるみたいなので、飛び降りる。

 てっ、ちょ?メイドさん急に走ってこっちに来ないで!危ない!

 うぉおおおおお!?

 俺はメイドさんの胸の中にダイブすることとなった。

 正確には胸にダイブしたなんてうらやまけしからん展開じゃなくて、実は微妙に体には届いていない。

 その距離わずか数ミリ。ほんのわずか手を伸ばせば届く距離。アニメや漫画ではよくある絶望的な距離だ。


 …ところで、猫の爪というのは普段は手の中に引っ込んでいるということを、皆さんはご存じだろうか。

 手を押したり、びっくりしたときに実は結構な長さで「にゅっ」と伸びる。

 そして俺は今結構びっくりした。つまり、そういうことだ。


 俺の爪は幸いにもメイドさんのメイド服のブラウス?を引き裂いてしまうことはなかった。

 代わりにコルセットのようになっている部分に引っかかった。

 革製と思われるコルセットは俺の爪になすすべなく引き裂かれてしまった。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」


 やっべ。こりゃ怒られるだろうな。

 いや、ほんとすみません。反省してます。

 だから首を持たないで。

 せめて抱えてくれませんかね。

 あと、顔が怖いです。その笑顔が怖いです。


 いついかなる世界であっても、女性の笑顔ほど怖いものはない…

今回から2節突入です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ