表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/300

7-9.神聖公王

 たっぷり1分。

 雪煙が晴れた先には。

 何もなかった。


 いや、正確には不自然に凸凹になった雪原があったが。

「主様。お見事です」

「そういうのいいから。悪いけど二人とも、敵兵の片づけを頼めるか?」

「はい。主様。ところで主様、これからどうされるのですか?」

 なんだ。随分わかりきったことを聞くな。

「後ろに続く敵国の兵を屠る。随分わかり切ったことを聞くんだな?トラキス」

「すみません。ですが、なにやら別人のように怒っておられたので」

 ん?そんなに?

 ちょっと反省。

 まぁ、相手を全滅させることに変わりはないが。

「……主様。この氷柱は全て皇都に移動して良いのでしょうか?中にはバラバラなものも在りますが」

「ん?あぁ。後始末は城の人にお願いするといい。葬儀の仕方とかわからないしな。あと、もし、じぃやさんやアドマが見つかれば……」

「……わかりました。そちらも移動さておきます」

「よろしく」


 さて、ふざけたことをしてくれた国に制裁を加えに行かないとな。




 俺は戦場から飛び立つと、そのまま北へ飛ぶ。

 ここら一帯は山岳地帯で高い山々が多い。

 僅かな平地に人が密集している作りのようだ。

 恐らくこの辺りが公爵領なのだろう。

 そして谷を縫うように作られた町や、山岳地帯の一部に広がった街を通り抜け、そこそこの広さを持つ街道に出た。

 オロス谷から伸びていた川はいつの間にか消えていた。

 そういえば、あそこの川は何故か北に向かって流れていたな。

 皇都の北側、つまりこの辺りは山だったからなんとなく違和感のある光景だった。

 此処から先は台地のようになっているのか。

 その街道を辿っていくと、いくつかの小さな町や村、そして再び小さな山脈が現れた。

 その麓、そこにそれはあった。

 皇都のそれよりは小さいが、立派な城に城壁を備え、城の山側には石造りの城より大きな建物が見える。

 高さこそ城より高い部分は正面の左右に設置された塔だけだが、建物自体の広さはそちらのほうが広い。

 城は……恐らく公爵の居城だろう。

 だったら奥の建物が教会かな?

 よくよく見渡してみると、狭いながらもぶどうのような畑や小麦なども栽培しているようだ。


 ここも全て更地にしてしまおうか。

 そんな黒い考えが頭をよぎるがなんとか理性を保ち、気を取り直して更に北に進む。

 やがて山脈が途切れ平地が現れた。

 すると直ぐに目的の軍隊を見つけた。

 少し遠くに立派な街も見える。

 まだ街を出たばかりなのかな?

 よくよく目を凝らして見てみると、神聖トリポリタニア公国の旗が見えた。

 所謂ケルト十字に近い、+と○を組み合わせたような形の紋章にゴテゴテしい装飾を中央に備え、6枚の羽と獅子、イッカクのような動物、三ツ首の馬があしらわれた意匠で黄色い布をベースとした旗だ。

 間違いない。

 あれが神聖トリポリタニア公国の軍だろう。

 シャルロッテさんの部屋で見た物と同じだ。

 公爵の街は本人が制裁を受けたので放っておいたが、彼らには制裁していない。

 またグングニールを飛ばすか。

 いや、それじゃぁ、芸がないか。

 同じ理由で天候魔法と地殻魔法も無しだな。

 さっき使ったし。

 影魔法と幻影魔法も無しか?

 あれ?俺、意外とできること少ないな?

 何かいい手は……。


 ふと俺の頭は、Sランクの魔物の一覧を思い出した。

『深紅の魔猫』に『光陰の猫将軍』『冥界の番人』。

『九尾猫』以外の魔王級の魔物たち。

 いやいやいや。

 あんなヤバそうなのあと3つもあるのか。


 んー。

 相手は光の神の信徒だよな。

 やるんだったら『冥界の番人』かな。

 いかにもって感じの名前だし。

 とりあえず、アクティブ化しておくか。



 以下のスキルを獲得。

『冥界の門』『審判の天秤』『天衣無縫』『超速再生』『魔胎の刻』


 猫型、闘争系統をすべて獲得したことにより、下記のスキルを獲得。

『獄炎』『天水』『剣山』『寒獄』


 以下の称号を獲得。

『審判者』『天獄の使徒』



 うーん。まぁ、予想通りやばそうなスキルが増えたな。

 ってあれ?

 Sランク到達が何たらって表示が出てこないな。

 まぁ、いいか。


 あ、『審判の天秤』とか『冥界の門』とか対宗教軍団にはよさそうな名前のスキルだな。

 というか『鑑定の魔眼』でも表示が空白なんだよな。

 何が起こるかわからない以上、簡単に使うことはできないが……。

 ま、今日はいいだろ。

 あれだ。怒っているから判断力が鈍ってるんだろう。

 そう言い訳できるさ。





『審判の天秤』発動!












 ゴーン!ゴーン!と、どこからともなく鐘の音が響く。

 荘厳な音が平野一帯に響く。

 すると、下にいた兵士たちのが血を吐きながらバタバタと倒れていった。


 えっ、何このスキル。

 これもしかして聞いた人間をどうにかするスキルなのか?

 もしかして街の方にも同じ被害が出てるんじゃなかろうか。

 まぁ、良いんだけど。

 流石に一般人に被害が出るのは気が引けるが。

 お?何人かまだ動いてるな?

 あ、また一人倒れた。


 俺は速度を上げて街の方へと進んだ。

 軍隊の方はもう無力化できているし、放置でもいいだろう。

 街へ進むと広場に大勢の人が集まっていた。

 中には先程の鐘の音で倒れた人もいるようだが、この場で倒れているのは殆どが長く、白いローブを纏った人物ばかりだ。

 あの壇上にいるのが一番偉そうだな。

 俺はそいつに向かって降りていった。



「な、何者だ!お前は!」

 他のローブより一段と豪華なローブを纏ったハゲ頭がこちらを誰何してくる。

「誰って、自分たちから喧嘩を売っておいて知らないわけ無いだろう?」

「お前は……まさかドリス皇国の!」

「そういうことだ。じゃ、責任取って死んでくれ」

 俺が手を伸ばすと、ハゲ頭が慌てた。

 民衆もざわめく。

「ま、まて!何故このようなことをする!神の意に背くことをするのだ!」

「はぁ?」

 何言ってるんだこいつ。

 て、あぁそうか。

 そういえば、教会のトップは教皇だったな。でも実際は元老院に支配権を取られてるんだっけか。

「なんだ。聞いてないのか?お前んとこの国が公爵領に手を出してじぃやさんが死んだ。わざわざ聖女を通して神の意、とやらを光の神から伝えてやったにもかかわらず、だ。あぁ、そういえば聖女も監禁してるんだってな。まぁそんなわけで、報復として出撃した部隊をさっき壊滅させた。以上」

「なっ!?」

「もういいか?じゃ、続けるぞ」

「待たれよ!聖女は病床に臥したはずだ!それに貴様は光の神となんの関係があるのだ?」

 ふぅん。そういうふうに聞いてるのか。

「そういえばお飾りって言ってたな。ご自慢の元老院とやらに聞いてみればいいんじゃないか?」

「……それは叶わぬ。そ奴らはそこで倒れておる」

 はぁ。

 どうやらさっきのスキルで倒れたみたいだな。関係ないが。

「じゃ、もういいな。起こすのも可愛そうだし、そのまま死んでくれ」

 俺がそう言うと、教皇はそれを遮る。

「待て。私はどうなっても良い。賠償が必要であれば即時用意しよう。私を八つ裂きしたければするといい。だがせめて我々の罪だけでも教えてくれないか?罪もわからず死ぬのは忍びない」

 その言葉に、一瞬俺の手が止まる。

「時間稼ぎのつもりか?」

「違う。本心からの言葉だ」

 ふむ。なるほど。

 そんな真っ直ぐな目で見られてもな。

 こいつは信用してもいいかもしれない。

「わかった。なら教えてやる」




 俺は民衆の前で、彼らの罪を話してやった。

 侵攻幇助……はまぁ、大きな問題ではない。が罪は罪だが。

 その後、神の神託を邪神の神託とし、聖女を監禁し和解の道を断ったこと。

 結果として、うちのじぃやさんとアドマを死に追いやったこと。

 それに伴い、姫さんたちに精神的苦痛を与えたこと。

「……ということだ」

「なんと……まさか聖女までとは」

 民衆の前で、語ってやったら、みるみるハゲ頭の顔が青くなっていった。

「直ぐにこやつ等を牢に閉じ込めろ!それに聖女も探し出すのだ!」

「はっ!」

 無事だった神官っぽい服の兵士たちに命令を飛ばしはじめた。

 正直驚いた。

 お飾りと聞いてたからこんな風に指示を飛ばすとは思わなかった。

「ふぅ。ん?どうしたのだ?」

「いや、お飾りって聞いてたから意外だなと思ってな」

「?あぁ。これでも若い頃は他国の貴族の家に生まれてな。多少は覚えがある」

 へぇ。貴族ってすごいな。

兵士たちはまだ○んでません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ