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7-4EX_ミツヒデ・アケチ、オロス谷前哨戦

わかりづらい。


12/2画像添付し再送

 ~ミツヒデ視点~





 はぁ、結局、押し付けられてしまいましたね。

 ノブナガ様が動けばよかったものを。

 しかし、総大将として任命していただいたからには、敗走することは出来ませんね。



「じゃあ、終わったらそいつに言ってくれれば俺に伝わるから」

「わかりました。大御屋形様」

 そういうのは、ノブナガ様に魔力供給をしている、神獣様と呼ばれているアレクシス様です。

 ノブナガ様が客人としてこの国に迎えられているという格好を取っているので、便宜的に大御屋形様と読んでいます。

 敵対だけはしたくない、そんなお方です。

 理由は押して測るべし。

 我々四天王が全員でかかっても瞬殺でしょう。


「さて」

 私は大御屋形様からお借りした魔物を撫でながら考えます。

 敵は精鋭を含む千の軍勢。

 こちらは三百程度。

 どうしたものか。

 いえ、勝敗の話ではなく。

 この後ろに控えているであろう本隊をこの地から回避させることの話です。

「ミツヒデさん、招集終わりました」

「ありがとうございます、カズマス殿」

 カズマス殿に率いられた一団はこの部隊のエルフ、ウィンディアの一団、五十名です。

 全員、弓兵や工作用の装備に換装しました。

「では皆さん手筈通りに」

「はい。任せてくださいっす。じゃあ、皆さん!行きましょう!」

 彼らには夜のうちに山を超えてもらう手筈になっています。

 そのために、山岳の地形に強いウィンディアとエルフを選びました。

 彼らなら大丈夫でしょう。


 私は、魔族を中心とした部隊の隊長に声をかけます。

「そちらも、手筈通りにお願いします」

「承知しました」

 総数約百。ある策を授けています。まぁ、これだけあれば十分でしょう。

「では皆さん、この戦、完勝という形で終えましょう」

 と、歩兵たちに声をかけるも少し暗い表情です。

「なぁ、大将さん」

 誰が大将ですか。

「本当にこの数で、グレイスノース公の軍勢に勝てるのか?それにむこうは精鋭、こっちは領兵だから量も質も劣ってるじゃないか。それに、あんたは東の国出身なんだろ?あんたの国じゃどうかわからないが、俺たちはまともに戦闘なんかできないぞ?」

 なるほど。そんな心配ですか。

 他の領兵も不安がってるようですね。

「大丈夫ですよ。この程度の作戦に、兵の質はそこまで関係ありません……ところで」

「?」

「貴方は随分博識のようですね?徴兵された兵がなぜ私の出身地を知っているのですか?」

「っ!?」

 驚いていますね。

 それはそうでしょう。

 裏切りか工作かはわかりませんが、この兵が敵と繋がっているのは間違いないようです。

「捕らえなさい」

「ま、待て!俺は……」

「敵の間者でしょう?私の目を欺けるとは思わないことです」

 兵が、間者を取り押さえました。

 上出来です。


 実はこれにはカラクリがあります。

 私の目はノブナガ様と同じ魔眼になっており、名を『鷹の魔眼』。観察や遠方の偵察の他、洞察することに長けた魔眼です。

 この魔眼で転移してきた際に既に彼の不審な動きを捉えていました。そして、偵察隊と思われる、一団が東から山を通り我々を抜けようとしていることもわかっています。

 早々に潰しても良いのですが、彼らはもう、この戦場を抜けた様子。無理に追わず、利用させてもらいましょう。


「さて、皆さん。これで、私達が劣っていないことがわかったかと思います。彼らは、大群を利用し、卑劣な作戦でしか少数の我々に当たる勇気がないのです。これはあなた達が彼らより優れていることの証左です、自信を持ちなさい」


「「「おおー!!」」」







 夜明けが訪れました。

 すでに作戦は全軍に通達してあります。

 広がる台地には、敵八百。

 部隊を三つにわけ、防衛戦の前に展開しています。こちらの兵は整列陣形を取り、前衛に盾を持った歩兵、中列に槍兵、後列に弓兵を配置。防御姿勢を取ります。

 こちらを数で押しつぶす気でしょう。戦術も何もないただの力押しです。

 前線の兵がぶつかりますが、防衛線に配置された柵を挟んで拮抗します。

 この狭い地形では多数による進撃は鈍化し、数が限られます。

 ここまでは予定通りです。

 敵はすでに戦勝ムードで、必死になって攻める理由がないのも士気の低い原因でしょう。

 互いに死傷者の少ないまま、時間が過ぎていきます。




「だ、だめだ!逃げろ!」


 その時です。

 味方右翼の前線が崩壊しました。






 ~敵司令官ムラマント視点~


「司令官!敵左翼部隊が崩壊!撤退を始めました」

 部下の報告を受け、私の口元はゆがんだ。

 雑兵にしてはよく耐えた方だが、しょせんは雑兵。

 我々の敵ではない。

「左翼の撤退兵は放置でいい!この狭い空間だ!どうせ逃げられん!」

 左翼の兵たちは、崩壊し後方、いや東へ撤退を始めている。

 馬鹿な奴らめ。東には崖がある。もしそれを超えれても急流が待ち構えている。

 これではどうすることもできないだろう。

「敵は陣形を変え始めました!半包囲を警戒して円陣を組むようです」

「左翼の兵を中央に回せ!一気に突破する!」

 ここは一点突破で攻撃するべきだろう。


 戦線が膠着している。

「なぜ抜けん!この物量差だぞ!?」

「わかりません。敵の防御陣地が予想より硬かったとしか」

「くそ!ふざけるな!」

 なぜここまで苦戦する。

 おかしい。何かがおかしい。

「クーラー!左翼の兵を焚きつけてこい!」

「はっ!」




「報告します!」

「なんだ!」

 戦が始まって、すでにかなりの時間が経っていた。

 なかなか進展しない戦況に苛立ちつつ、報告兵の報告を聞く。

 なかなか進展しないせいで、昼を抜くこととなってしまった。

 そろそろ本陣に戻って食事でもしたいものだが。


「ほ、本陣が、敵の急襲を受け、炎上!混乱が起きています!」


 そ、そんな馬鹿な!!






 ~ミツヒデ視点~


 ふむ。

 敵の様子を見るに成功したようですね。

 先ほど、撤退した兵たちは偽装。

 彼らはそのまま東に向かい、急ごしらえの丸太で川を下らせました。

 台地付近に流れている川は、実は結構緩やかで、敵もそこに目を付け水分を確保しやすい、その場所を本陣としたのでしょう。

 さらに、本陣の兵たちも意識は戦場に向いています。

 裏をかくにはちょうど良い感じでしょう。

 何せ彼らには『急流を下ってくる』なんて頭にないでしょうから。

 認識外からの奇襲に感じたでしょう。

 我々の軍議でも、上るのは不可能とか言っていましたしね。

 ノブナガ様直伝、奇襲攻撃です。


 私は彼らに偽装撤退を指示。その際は士気が崩壊したように見せる。という命令を下しました。

 もちろん、全部隊織り込み済み。

 当然こちらの士気は下がりません。

 むしろ逆にここを耐えれば勝機があると前向きな気持ちに満ちています。

「さぁ!計はなりました!ここからは反撃の時です!」

「「「おぉ!!!」」」

 私は兵たちに高らかに宣言しました。






 ~敵司令官ムラマント視点~


「くそ!遊んでいる右翼、左翼の部隊を本陣の消火に回せ!敵の伏兵を根絶やしにしろ!一人たりとも逃がすな!」

 大切な兵糧を焼かれてはまずい。

 卑怯な奴らめ!

 まさか兵糧を直接狙ってくるとは。

「司令官!」

「なんだ!?」

「ほ、本陣の守備兵、百名以上が死傷!火の勢いが止まりません!」

「ばかな!敵の数は!」

 何故それほどの被害が出ているのだ!

 奇襲とはいえ、それほどの兵力をどこに隠していた!

「か、数はおよそ五十!」

「そんな馬鹿なことがあるか!!」

 たった五十だと!?

 なぜそれだけの兵で我らの本陣へ攻撃できる!!

 我らの本陣には二百の兵がいるんだぞ!?

 くそっ。こんなこと想定外だ!

 それにこの火の勢い。風が悪い。

 川下から乾いた風が吹きつけ、火の勢いを増している。

 失態だ。こんなことなら、もっと兵を残しておくんだった!

 こいつら、まさか風向きまで計算して……。

 いや、そんなことないはずだ。

 自然を操るなんてこと、できるはずがない!!


「司令官!」

「なんだ!?どうした!」

「それが、奇襲を仕掛けてきた部隊が撤退していきます!」

 なんだと?どういうことだ?

 いや、しかし。ここで逃がすわけにはいかない。

「追え!一人も逃がすな!」


「し、司令官!」

「今度はなんだ!?」

「そ、それが……、敵主力が、防御陣形を捨てて……突撃してきました!」

 は?

 どういうことだ?

 人智を捨てて打って出てきた、だと?

 なぜ、自分から有利な状況を捨てたんだ?

 功を焦ったのか?

 と、とにかく!

 今は迎撃することが優先だ!

「慌てるな!奴らが出てきた今がチャンスだ!奴らを倒せ!所詮は雑兵だ!」







 ~ミツヒデ視点~


 え、正気ですか?

 この状況で敵司令官は迎撃を選んだようです。

 馬鹿なものです。

 速やかに本陣を捨てて、全軍で突撃か撤退すれば何とかなったものを。

 わざわざ数を減らす方策を選ぶとは。

 先鋒としてはずいぶん馬鹿な行動をしたものです。

 功を焦ったのでしょうか。

 しかし、手心を加えるわけにはいきません。

 一刻も早く、敵を壊滅させなければ。

 既に、偵察兵の第一陣が戻り始めているころ合いでしょう。

 彼らには、先鋒隊は『全滅した』という情報を持ち帰ってもらわなければなりません。

「ミツヒデ殿!」

 おや?

「遅くなりました!騎兵五十、連れてまいりました」

「いえ、いいタイミングです。では、ロウフィス殿、騎兵を使い、一撃離脱作戦で敵後衛を蹂躙してください」

「後衛、ですか?」

「えぇ。今あそこで必死で火を消している集団の事ですよ」

 私は刀で、方向を示しました。

「しかし……」

「なにか?」

「いえ、こちらの援護はしなくてよかったのかと」

 あぁ、そういうことですか。



「必要ありません。今から、敵将の首を取りますから」






 ~敵司令官ムラマント視点~


「なんだ!?こいつらの強さは!」

 我々の軍団が次々と敵に押されている。

 おかしい。強すぎる。

 我が兵はなぜこれほどまでに押されているのだ!

「それは、貴方達が我々を侮ったからですよ」

「誰だ!」

 私は振り向いた。その先に立っていたのはエルフの男だった。

 耳が削がれているが、その佇まいはただものではないことを予感させた。

「アケチミツヒデ。こちらではミツヒデ・アケチですか。ともかく、貴方から見れば敵方の将をしております。見知り置く必要はありません。今からあなたにはご退場願いますれば」

「何を馬鹿なことを!」

 そういって、振り上げた腕が空を切った。

 私の腕が吹き飛んだのだ。

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 気づいてしまえば、痛みが襲ってきた。

「失礼。すぐに終わらせます」

「ま、まて……っ!」

 そういったのを最後に、私の意識は暗闇へと刈り取られた。








 ~ミツヒデ視点~


「そ、そんな……司令官が……、あんなにあっさり……」

「逃げろ!一人でも多く逃げるんだ!」

 おや、もう戦意喪失してしまいましたか。

 我々の前で先ほどまで戦っていた敵の第一軍は、あっさりと戦線を放棄し、我さきへと逃げていきました。

 こちらはもう大丈夫ですね。

 さて、あちらはどうでしょうか。

 ロウフィス殿率いる援軍部隊は一撃離脱作戦を決行し、確実に敵の士気と勢いをそいでいっていました。

 こうなると、もうあとは処理するだけですね。

 私は敵の一団の居る方向に、それを投げました。

「貴殿らの指揮官は私が打ち取りました!仇を討とうと気概のあるものは私にかかってきなさい!」


「うぁ……し、司令官!」

「くそ、なんだってこんなことに、ぐあぁぁぁぁ!」

「い、いやだ!死にたくない!死にたくない」

「どけ!俺は逃げるぞ!」


 彼らの方も、次々と逃げだしていきます。

 その先は狭い山道。

 西のカズマス達が控えるエリアです。

 もう、勝敗は決しましたね。

「では、ロウフィス殿。敵本陣からできる限り物資を運び出してください」

「はっ!」

「前衛の兵は追撃します。私に続きなさい!」

「おぉ!」







 ~カズマス視点~


 お、きたきた。

 ミツヒデさん、本当にやっちゃったんっすね。

 相変わらず、すごい手際っす。

「よし、兵の皆さん。出番っすよ」

 俺は、兵に合図を送ります。

「相手を倒す必要はないっす。適当な場所に打ち込んじゃってください!」

「はっ!」

「三・ニ・一!今っす!」

 その合図とともに、そう多くない矢が撃ち込まれました。

 これは敵を倒す待ち伏せではないっす。

 敵にココは通れる、と思わせる攻撃っす。

「ふ、伏兵!?そんな馬鹿な!」

「この矢の数なら押し通れる!全員全力ではしれぇぇぇぇ!」

 まぁ、予想通りっすね。

 敵はほとんど倒せてないっすが、こちらの予定どおりに動いたっす。

 俺は敵兵が抜けていった先を見たっす。

 そこには……。


 再び渡河して平地に先回りした部隊がいるっす。


 指揮系統が崩壊し、士気の崩壊した軍隊ほど、もろい軍隊はないっす。

 どれだけ個人が精強でも……、って精強だったら士気崩壊してないっすが。

 ともかく、彼らは次々と討たれていくっす。


 さて、第二陣がきたっすね。

「工兵、弓兵。今度は本気でやるっすよ!」

 俺の合図とともに、次は当てる攻撃を行うっす。

 思惑通り。

 兵たちは浮足立ち、前の兵たちを見て通れると勘違いしているっす。

 このくらいだったら通り抜けられる、と。

 まぁ、なんと愚かなことっすね。

 ほんと。













 ~アレクシス視点~


 こうして、のちに、オロス谷前哨戦と呼ばれた戦いは幕を閉じた。

 まぁ、ミツヒデに結末を言われるまでもなく、俺は召喚した猫を通して確認したわけだが。




 一ついいか?


 君ら、生き生きしてんなぁ。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

ミ「なんでこんな狭いところを通ろうとしたのか」

敵「兵站戦を最短で繋ぎたかった。後悔している」

頑張って全部、文章だけでやろうとしましたが、途中で力尽きました。


戦勝ムードからの油断→粘られたことへの焦り→本陣の火計からの慌て→敵増援からの焦燥感

と敵の部隊は士気が常に低い状態だったと予想。

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