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1-1.交換転移

 俺の名前は十和田多夢和とわだたむあ

 今、絶賛人生のピンチ中です。


 というのも、ここは真っ白な部屋。

 10m四方くらいか?部屋とわかる程度には陰影がある。

 そしてそこに俺と向かい合わせに立つ耳の長い男。

 俺のゲームや漫画の知識が正しければこれはエルフ。エルフだろう。

 いや見た目とかどうでもええわ。

 ぶっちゃけ今日は休日出勤なんです!仕事があります!

 印刷業界なんで締め切りやばいんで早く帰してください!


 あれ、ちょっと悲しくなってきた…

 今日って休日だよな…


「ここは…?そなたは何者だ?」


 あ、向こうも困惑してる。

 ということは、これは目の前の男は関係していない?

 がんばれ!俺!ゲームと漫画の知識を総動員するんだ!


 ………

 ……

 …


 あ、挨拶は必要ですよね。



「ど、どうも俺…、いや自分は十和田多夢和って言います。しがない技術屋です。あの、そちらは?」

「…、これは失礼いたし申した。私はアスティベーラ。冒険者をしておる」

「はぁ、冒険者ですか…」

「うむ」

「………」

「………」



 か、会話が続かない…

 というか、刀っぽいの腰に刺してるし、平安武士みたいな鎧着てるな。

 もしかして、侍か?


「あの…、もしかして侍ですか?」

「…いかにも。私は侍職で修行しておってな。この刀は鍛冶師のゲオル老に打って頂いたミスリル製の業物で…」

「あ、いやそういうのはいいんで」

「……す、すまぬ…」



 とりあえず、状況確認に戻ろう。

 え?いやに冷静だねって?

 そりゃ冷静にもなりますよ。

 目の前に君みたいに露骨に動揺してる人がいればさ。

 ってかほんとに侍か?メンタル弱すぎだろ。

 印刷業界なめんな。この程度、トラブルのうちに入らん!


 ……うそです。ごめんなさい。

 誰か助けて!


 そもそもこの状況はどうだ?

 ホラー作品なら、脱出系か?

 それとも、人体改造か生贄あたりかな?

 最近の流行なら実は死んじゃってて転生、召還パターンか。


 ん~、だめだ。どれだとしてもすぐには帰れそうにない。

 てかこのエルフ何してんの?

 いじけてる場合じゃないでしょ!



 突っ込みを入れようとしたとき、真っ白だった空間に長方形の亀裂が入る。


「あれは…ドアか?」

「ドアっぽいでござるな」

「どう思う?」

「…罠でござろうな」

「だよなぁ…」


 まぁ、でも行くしかないんですけどね。


「……参ろうか」

「…ですね」


 何が悲しゅうて、さっき知り合った男と怪しさ満点の部屋の外へと行かねばならんのか。

 それにしても、エルフ耳って始めてみたな…コスプレかな?


「あの…、その耳って…」

「ん?エルフの耳がどうかしたでござるか?」

「あ、やっぱりエルフなんですね」


 侍エルフってどんなニッチなコスプレなんですかね。

 ゲームでもなかなか能力値があわなくて選ばない職業ですけど。


「いえ、本格的なコスプレですね」

「…こすぷ、れ?すまぬ、こすぷれとは…」


 コスプレ?みたいな顔をされたけど彼のところでは呼び方が違うのかな?

 そういえば、外人っぽいな。背が高いし肌が日本人に比べて白いように思う。

 残念ながら確認する前に目的地に到着してしまったので話題を変える。


「あ、やっぱり外みたいですね」

「あ、あぁ。そのようでござるな。どれ、外の様子は…」


 二人して外をのぞく。が、外の景色を確認する前に眩しい位の光が視界を覆った。


「ようこそ、おいでくださいました」


 視界が戻ったとき、そこには一人の女性がいた。

 身長と同じくらいあろうかという金髪がふわふわと宙を漂い、後光?っていうのか、よくアニメとかで神様の後ろに輝いてるやつ。あれがこれでもかと女性の後ろに存在感を主張している。


 本能がささやいている。彼女は人ではない。

 まず人は宙には浮けない。白い部屋なので錯覚とかトリックとか何かしらあるかもしれないが、少なくとも今、俺に確認するすべはない。

 髪が重力に逆らってふわふわと浮いているのも彼女が宙に浮いている証明になるかもしれない。いや、このくらいなら静電気とかで何とかなるか?

 後光にしたって衣装とかにとめてあるならともかく、くるくる回っている。仮にモーターなどで動かしているとしても、結構な重量だろう。目の前の女性が背負える重さとは思えない。


 というかなんかどんどん近づいてませんかね。

 浮いてたので遠近法でわからなかったけど、結構でかい。

 いやでかすぎる。彼女が俺達のところまで来たとき、俺達はひざ下から見上げているような格好になっている。

 いや何メートルあるんだよ。何だこれ立体映像か?

 触れてみると確かに感触があった。立体映像ではない。


「きゃぁ!ちょ、ちょっと!乙女の素足にいきなり触れるとか!何事ですか!」

「あ、すみません。立体映像とかじゃないんですね」

「当たり前です!まったく、あなたはもう少しデリカシーってものを覚えてください」

「や、もうほんとにすみません…、ところであれは良いんですかね…」

「え?」


 俺が指差したほうにはエルフ侍。

 鼻息荒く女性を見上げている。

 そして突然目を見開いて大声を上げたのだ。


「けしからん!たいっへんっ!けしからん!!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 言い切った途端、横を何かが通り抜けたかと思うとエルフ侍が後方へ吹き飛んだ。女性の蹴りが入ったのだ。圧倒的な質量でエルフを部屋の反対まで吹き飛ばし、今は壁にかえるのように張り付いている。

 とりあえず、エルフを抱えて女性のところに戻る。


「まったく!なんですか、このむっつりは!」

 知らんがな。むしろこっちのほうが聞きたい。

 あと、眼福でした。個人的には白いレースほうが好きですが。

 いやなんでもないです。だから睨まないでください。お願いします。



 ………

 ……

 …


「さて、あなた達をお呼びしたのは、ほかでもありません。あなた達の世界に危機が迫っています」


 仮称、女神が深刻そうに呟く、そしてそれにエルフの侍が答えた。

「いや、拙者のいる世界なんて、ほとんど毎日、何かしらの危機があるようなものでござるし」

 …すごい世界だな、オイ。

「うちはそんなことないですね…。まぁ、うちの近所だけかもしれませんが」

 実際、ここしばらくは日本が直接戦争することなかったはずだし…。

 次の世界大戦が起きれば、確実に世界の危機になるだろうけど、少なくとも今すぐ世界の危機になることはないと思う。


「いえ。そこのむっつり変態男の世界では今より約3年後、そちらの彼の世界では約半年後に、それぞれの世界が未曾有の危機に瀕します。惑星レベルではなく世界レベルで」


 エルフ耳…、早々に変態男に格下げされたか…


「世界の神々はこれを危惧し、いくつかの解決策を出しました。それが、今回の異世界転移です」


 転移でしたか。あー、漫画的に考えるなら勇者召還ってやつか。

 いや、俺仕事あるし勘弁してもらいたいんだけど。


「それぞれの世界を確認し、条件に合うあなた達をお招きいたしました」

「条件?一体それは…?」

「家族がそれなりに放任主義で、現在無職であり、それなりの責任感と性欲を持っている方です」

「は?いやいや、確かにうちの家族は年に一度も連絡ないときもあるけど、俺は無職じゃないよ?妄想で就職してるわけでも、夢の中で就職したわけでもないよ?」


 その辺はっきりしとこう。正直この年で無職とか言われたくない。


「いえ、あなたの職場は土曜日にあなたの直属の上司の課長さんが自殺されまして…。月曜日から休日になり、会社の経営が厳しくなってしまう予定ですので実質無職です」


 知りたくもなかった事実!!

 あー、でも課長なくなってしまったのか…南無阿弥陀仏…

「……」

 さっきから無職を否定しないってことはこのエルフは無職なんだな…


「そういうことで、あなた達はそれぞれの世界から交換されることになりました。もちろん、私達、神々からも最大限のサポートをしますし、目的を達成したあとはそれぞれの世界への帰還もサポートします。ではお二方へのサポートについて説明いたします」


 いやいやいや、勝手に話し進めるなよ。了承してないよ。

 拒否権!拒否権を発動する!


「残念ながらここに召還された時点であなた方に拒否権は存在しません」








 理不尽!神様らしい理不尽!








 それからのことは、正直よくわからない。

 何でかって?正直、理不尽への反抗ってのもあるけど、部屋が眩しすぎたのが一番の原因だと思う。眩しいと集中力って途切れるよね?

 俺とエルフは別々の場所に連れて行かれた。

 おそらくエルフも俺と同じように何かしらの説明を受けていることだろう。

 俺への説明は要約するとこうだ。


「魔力を集めろ」


「魔物を集め獣人の始祖となれ」


「世界の崩壊を止めろ」


 いや、大雑把に言われたことだから、なんともだけど。

「無理です。交代を要求します」

「あなたなら大丈夫です」

 速攻で拒否された。

 そのままサポートとやらの説明を受けた。こちらは要約すると


「いくつかの能力を与える」


「何日かに一度、元の世界と交信できる」


「言葉はわかるようにしておく」


 というものだ。

 世界の崩壊については魔力を集めることで何とかなるらしい。

 いや、あれしろこれしろって要求多くないですかね?

 了承もしてないし。あ、拒否権ありませんか。そうですか。


「では、がんばってきてくださいね」


 結局、こちらの都合なんて関係なしに、俺は転移させられたのであった。

はじめまして。グッチと申します。

初投稿になります。


執筆速度がほかの方に比べ、とてつもなく遅いかもしれません。

気長にお付き合いいただけると幸いです。



また、小説内では意図的に情報を制限しています。

これは語り手である多夢和君の性格が関係しています。

彼は興味あることにはとことん、興味ないことには聞き流してしまう癖があります。

このため、作中で多夢和君が興味を持ったものには説明や解説が多く、ないものにはざっくりしたものになります。

状況説明や解説が、よくわからないまま話が進んでしまうこともあるかと思います。ご了承ください。





ちなみに、エルフは多夢和君の世界に転移しており、これから勇〇シリーズかト〇ンスフォーマーの世界に、魔術結社や特撮を組み合わせたような世界で無双していくことになります。


…あれ?こっちのほうが主人公っぽい?(笑



追記(8/25)

すみません。サブタイトルを間違えていたので修正しました。

召喚→転移


9/1 改稿

一段下げの機能を教えていただいたので、全文改稿いたしました。ありがとうございます。

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