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狼は春を唄う  作者: ほたる
砂敷村(さじきむら)
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4


幼稚な衝動だ。


こんなことをする俺に誰か気づいて、とどうしようもない承認欲求を持て余しているような。


そして怖がっている人々を見て嘲っているのだ。


お前達とは違って俺はこんなことも出来るのだ、と。


あいつはそういう奴だった。


「探してみた方がいいな」


十和は嫌そうに言って、立ち上がった。


不安そうに両手を胸の前で重ね合わせた泉桜は、気をつけてねと十和に言った。


「任せとけ」


お兄さんらしく笑い泉桜の頭をがしがし撫でて出て行った十和は、その夜、血相を変えて泉桜の家に飛び込んできた。


まだ日が暮れたばかりの時分であった。


泉桜と佑真は夕食を取ろうと、囲炉裏を囲んでいた。


昨日から今日にかけて随分と気が削がれたような感じがする。


疲労感漂う泉桜に佑真が話しかけようと口を開いた時ーー。


呼び掛けもなく、扉が開いた。


押し開けられた勢いで、扉の繋ぎ目がぎいぎいと嫌な音を立てている。


その場に崩れ落ちた男は、ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返している。ここまで走ってきたようだった。


「十和くん?」


戸惑いつつ近寄った泉桜は、床にしゃがんで十和の背を撫でた。


その腕を掴んだ十和は、血の気をなくした顔を泉桜の前に曝け出した。


「どうしたの?何があったの?」


尋常でないその様子に、泉桜も手を止めて呼び掛ける。


「……が……」


「え?」


がほがほと咳をした十和は、大きく息を吸い込むと一気に吐き出した。


「葵が、いなくなっちまった!」



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