ブーブーメリーゴーラウンド
「ちっ、今日もバカみたいな顔して回り続けなきゃなんねーのかよ、さみぃしよ。あーあ、つまんねぇの…」
「豚君っ!なんですかその汚い口の利き方は。私たちは100年前から動き続けている由緒正しいメリーゴーラウンドなのですよ!?」
「お前はいいよな、人気で。誰でも白馬の王子様になれるもんな」
「本当にね!私だって馬は馬だけど、茶色よ。白馬が全部埋まったときに渋々…って顔される、その気持ちわかるの?」
「何言ってんだよ!こっちなんか豚だぞ!?露骨に『ママ―もう豚しか無いから、僕次待って乗る~』っていわれんだぜ。たまったもんじゃねぇよ、ったくよ。なんで豚なんか付けちまったんだか、作ったやつ頭おかしいんじゃねぇのか」
「そうね、あんたみたいに口だけ達者なブス豚なんて付けなきゃ良かったのよ!」
「紳士淑女たちよ、落ち着きたまえ…」
「んぁ!?てめぇよくも言ってくれたな。ポークチョップキック!」
「はぁ!?ばっかみたい。身体一ミリも動いてないじゃない。野原を駆け回るみたいな態勢しちゃってさダサすぎ」
「2人とも!もうやめるんだ!100年間懲りずに争い続けて。いい加減仲良くやろうじゃないか。さぁ、あと30分で開演時間だ…」
「ねぇ、馬車はどうなのよ」
「…どうって…何が?」
「そうだよ、孫の付き添いで来たけど乗り物は苦手なジジイババアに、お前ちゃっかり人気じゃねぇか。え?」
「えっと…僕はその…」
「どうせ俺たちのことバカにしてるんだろ?こんな小競り合いして、結局どっちもどっちじゃないかって。」
「え、馬車あなた、そんなこと思ってたの…?見損なったわ。嘘でしょ、ねぇ、嘘だと言ってぇぇ!」
「大げさだ。耳がぶっ壊れるから黙れ」
「豚君!茶馬さん!馬車君!いい加減にしてください!あなたたちには名誉とか誇りとか、そういったものはないのですか!?100年間もたくさんの子どもたちを乗せてきて、笑顔にしてきたという…」
「私なんて、乗せてきた子どもの数あなたの1/10にも満たないわよ」
「俺なんか両手で数えるほうが早いぜ」
「白馬には僕たちの気持ち…分からないんじゃないですか?」
「よっ!キャリッジ!いいこと言うじゃん」
「こいつの言うとおりだ。お前の美徳を押し付けられるのはもうこりごりなんだよ…客が来たぜ」
「あーあ、憂鬱な一日の始まりね」
「皆さん笑顔で!張り切っていきましょ…」
「うっせぇ、シバくぞ」
埋まったのは、白馬、茶馬、馬車だった。
私は昔から馬車派です。
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