アリスとセバス
「アリス様、目標は定められましたか?」
コウモリがばさばさと空を舞い、カラスが合唱をする辺り一面木だらけの森の中。スーツに身を包み、黒縁眼鏡をかけた成人男性が場に会わない白のチィ―カップに紅茶を注いだ。
「まだよ」
その男性の言葉に、ある少女が返事を返す。
男性の目の前には小柄な、ロリータのようなフリルがたくさん施されたワンピースを身にまとった、小学生くらいの幼い少女が大きな黒い椅子に座っていた。目の前には大きな白いテーブルが置いてある。
男性はそうですか、と言葉を返すと少女の目の前にカップを置いた。
「サンタから連絡が来てからずっと行方を追っているのだけれど、全然だめ」
少女は上品にカップを持つと紅茶を飲んだ。
「そういうセバスは定められたの?」
「いえ、まだ」
「まっ、そう簡単に見つかったらこんなに私も苦労しないわ」
「さようでございます」
セバス、と呼ばれた男性は少女の言葉にうなづく。そして、少女のカップにまた紅茶を注いだ。
「……。今日もダメそうね……。もうお腹一杯だし、この一杯で無理だったら今日は帰りましょっか」
「そうですね」
少女はそういうと、紅茶を一気に飲み干した。その様子をセバスは冷や汗を垂らしながら見守る。
「……どうですか?」
「見えた」
「本当ですか!?」
セバスは少女の一言で嬉しそうにする。
「ええ」
「目標はどちらに!?」
「目標は―」
にっ、と少女は嬉しそうに笑った。
「私についてきなさい」