15話 魔力査定①
「毎度ありがとうね、エルちゃん!」
ちょうど今出てきた店の奥から声がかかる。
エルが会釈するのに合わせて俺も「どうも」と軽く頭を下げておいた。
どうやらエルはここらの商店街で顔が売れているらしく、買い物をしようと店を訪れる度に声をかけられている。その度にエルは無言のまま会釈してるんだが・・・その様子は人見知りそのものだ。
こいつ、ひょっとして内弁慶というヤツなのだろうか。
「えっと、次は・・・あそこか。急げ、グッサン」
「待て待て、まだ走れるほどには————」
買い物袋を持つ俺の右腕を掴み、ズンズンと引っ張っていくエル。
「全く強引だな・・・」
自分も結構な荷物を持っているにも関わらず、歩みを止める気配は全然ない。
少女が持つには流石に重いだろうと思って俺に持たせるよう言ったんだが、「別にいい」と受けあってくれなかった。
俺のことを気遣って無理をしてるんじゃないか?とも思ったが、無理してる様子は全くないしどうやら本当に大丈夫らしかった。すごいね。
・・・鍛えているんだろうか、体。
「着いたぞー」
「お次はなんだ?」
目の前に建物が見えてきた。
「・・・随分と立派な建物だな」
「そりゃギルドだからな」
「ギルド?」
「なんだ、グッサン知らないのか?・・・ってそういえば記憶喪失だったな」
「ん?・・・ッ!お、おう!そうだな!俺は記憶喪失だよ!」
あっぶねぇ・・・自分でつくった設定忘れてたぜ・・・
俺がこの世界の常識を知らないことが怪しまれないように、俺は「過去の記憶を失っている」・・・つまり記憶喪失になっているからだ、という設定をつくって疑念の目を回避していたんだった。
幸いエルもシスターもこれで納得してくれたから良かったものの、これがもしめちゃくちゃ疑り深い人のところに落ちていたら・・・俺は今頃どうなってしまっていたのだろうか?
————想像したくもないな!
「ギルドは簡単に言うとお役所みたいなもんで・・・あれ?・・・そういえばお前、役人をしてたって言ってなかったか?ギルド知らないのおかしくない?」
「あっ」
・・・バレました。
「実はそれ・・・嘘で・・・」
「————まあ、確かにおかしいとは思ってたよ。他のことは何も知らないのに、なぜか自分の職業だけ覚えてるってのも変な話だしな」
「あれはそもそもエルの聞き方が————」
「なに?」
「いえ、なんでもないです」
首にナイフ当てられながら聞かれたら、そりゃ無理にでもでっち上げたくなるだろ・・・
まぁ済んだ話だし、別にいいんだけどさ。
エルがギルドに入っていくのを追いかけ、俺も入店する。
ギルドの中は広いラウンジになっていて、左側に受付が並んでいる。
右に目をやると何やら宴会のようなものが行われていて騒がしい。どうやら右側は居酒屋のカウンターのようになってるみたいだな。
中心のラウンジでは、多数並べられたテーブルに着き話し合いをする者や、ジョッキを持って乾杯している者、すでにベロベロな者、テーブルに突っ伏していびきを立てている奴もいる。
なかなかカオスなところだな・・・
そんな中エルは落ち着いた様子で左の受付へ向かい、俺を指差しながら受付嬢に「あいつの魔力査定をお願いしたいんだが」と言った。
・・・って俺なのかよ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「エルも魔法使えるのか?」
「・・・」
何言ってんだこいつ、とでも言いたげな視線だな。
「ほら俺、記憶喪失だからさ」
「————ああ。使えるよ。もちろんシスターも、そこら中の奴もな」
「じゃあ俺も使える?」
「それを今から査定してもらうんだろ」
受付裏の待合室。
俺達はそこへ通され、受付嬢が帰ってくるのを待っていた。
「それよりグッサン、ちゃんとシスターにお礼言っとけよ」
「・・・シスターに?」
「今回のお前の魔力査定のことを言い出したのはシスターなんだからな。これもただじゃないんだぞ」
「お・・・おう、分かった」
エルによると、記憶喪失なら自分の魔法適性も忘れているかもしれないから、俺をギルドに連れて行ってくれとシスターから言いつけられたらしい。
何から何まで本当に面倒見のいい人だな、シスター。
ありがたい限りだ。




