青空
青空。ルパンの掃除機に宝石が吸い込まれるみたいに、吸い込まれそうになるときがありますね。大学は請求できないものは去れの世界です。何を請求するかというと学位です。エリー・カルタンの学位請求論文は、有限次元連続変換群の構造について、です。エリー・カルタン→矢野健太郎、清宮俊雄の流れの中に、ぼくはいます。
洞窟の中で聞いた言葉であったか、今は思い出せない
でも、自分で自分の肩を叩くこの言葉が好きだ
(哲っちゃん、どうした、青空を見ようよ)
研究者として大学に残れず、ハローワークの帰りだった
公園のベンチ、くたびれた靴を投げ出して、トマトサンドを食べていた
おじさん何しているの?
赤い羽の少女が立っていた
求職だよ
給食?
大人にもあるんだね
いたずらっぽく笑う少女の靴は花のように明るい
少女の勘違いで自分で自分に微笑んだ
(哲っちゃん、どうした、青空を見ようよ)
ぼくは素寒貧だった
横向けに遠い井戸の底にいた
登っても登ってもたどり着けない暗闇の中、希望もなく
空耳がした
(哲っちゃん、どうした、青空を見ようよ)
こんな地の底に青空なんかあるものか
ぼくは拳を握りしめて壁を叩いた
震動する闇の中で土が青空に輝いた
肩越しに少女の声が聞こえる
土ボタル、おじさんの怒りを静めようとしているのね
もし君が落ち込んで、元気をなくしたら、ぼくのように言ってごらん
(どうした、青空を見ようよ)
そこには、どんな場所に落ちても咲く花のように、青空があるはず