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真・家賃1万2千円風呂共用幽霊付き駅まで縮地2回  作者: タクティカル
真・第二部 パロディ頼りなタイトル編
9/29

【作者が放った衝撃の''プロローグ''に一同驚愕!】 全世界が恐れ慄く驚愕のプロローグとは……!

■■■前回までのあらすじ■■■



 玄関を開けたら、雪菜ちゃんが立っていた。



「――フフ、兄さん。久しぶりですね」



 いつも通り口元に薄い笑みを浮かべる雪菜ちゃんを見た俺は、速攻で扉を閉めて鍵をかけた。

 扉を閉めるバタンという音と鍵をかけるカチャンという音がほぼ同時に聞こえるくらい、素早い動きだったと思う。バチャン、みたいな。どうでもいいか。




■■■


 気が付くと真っ白な空間に立っていた。

 どこまでも続く、白だけの空間。空に浮かぶ雲の中で泳いでいるような、そんな錯覚を覚えてしまう。


「あれ?」


 おかしいな。さっきまで玄関に立ってたはず。

 確かエリザが温泉旅行から帰って来て、エリザと大家さんとプチ宴会をして……次の日だ。

 誰かが訪ねてきたから、玄関を開けたら――雪菜ちゃんが居たのだ。


「い、いやいや……」


 ナイナイ。ありえない。

 まさか雪菜ちゃんが来るなんて、そんなことあるわけない。雪菜ちゃんが俺の家に来るとか、ありえない。限定ガチャで北斎を三枚抜きするくらいありえない。

 きっとアレだ。見間違いか何かだ。

 雪菜ちゃんに似てる宅配のおねーさんとかに違いない。世の中には自分にそっくりな人間が3人はいるって、科学的に証明されてるらしいし。実際、髪型一緒にしたら見分けがつかない巨乳の五つ子ちゃんも存在してるし……俺はもちろん四女派。アニメ化で三女派に戻りそうになったけど、何とか踏みとどまった。五つ子で思い出したけど、結構前に七つ子が出て来る漫画があったっけ……いや、正確には姉妹じゃないんだけど。あれはナナさまが好きだった。……ん? 何の話だっけ? 一卵性姉妹が出て来る作品の話? みつ〇どもえかkiss×s〇sの話でもする?


 そもそも、何で俺はここにいるんだ?


「ここって……やっぱりアレだよな」


 この曇りの日のウユニ湖みたいな、真っ白な空間は一ノ瀬ハートインランド(仮称)――ぶっちゃけ俺の心の中だ。

 眠った時、たまーに来てしまう場所である。

 ランドという割にはアトラクションやタワーの一つもない、殺風景な場所だ。

 精神〇時の部屋をイメージしてもらえばいい。


 ここにあるのは俺の部屋にあるのと同じ、6畳間(壁、天井無し)だけだ。

 そこには1人の少女が在住している。


「おっす、シルバちゃん」


 俺は6畳間に近づき、少女に声をかけた。

 褐色肌の少女は読んでいた本から顔を上げて、こっちを見た。


「ん? 何じゃい、お主か」


 装飾過多なドレスを着た、褐色肌の少女――シルバちゃんがこちらを見ながら言った。

 彼女はシルバちゃん。俺の心の中に住んでいる謎の少女――だったのは以前の話で、数週間前にあったエリザ消滅のあれこれを経て、その正体を説明してくれた。

 彼女は俺が以前遠藤寺から貰った眼鏡だ。眼鏡の精霊?みたいな? 多分、大家さんの着物に取り憑いてた付喪神と同じ存在だと思う。

 彼女を装備すると幽霊とか妖怪みたいな普通は見ることが出来ない物を視認することが出来る――というのはあくまで本来の能力の副産物で、本当の能力は――まあ、前章を見たら分かるだろう。エリザをアレした本来の能力は思い出すだけでマジ震えてきやがった……。

 基本的には俺の心の中でダラダラ過ごしてる褐色美少女(年齢可変式)と思ってくれればいい。今日は見た感じ、中学三年生女子くらいの年齢だろう。今にも卒業式で卒業の歌を歌った後に教室で級友との最後の別れをしそうな雰囲気を感じる。

 

「何読んでんの?」


「お主が中学生時代に行った修学旅行の記録じゃな」


 俺の心の中に住んでるシルバちゃんは、こうやって勝手に人の記憶を本にしては無断で読んでいるのだ。……俺の人生って著作権とかないの?

 そもそもごく平凡な人生を歩んできた、俺の記憶なんて読んでも面白くないだろうに、変わった子だ。


 ん? 中学の修学旅行……?


「てーまぱーく、というのか? その中にあるトイレの個室でほぼ一日を過ごした記憶じゃが、これがなかなか面白くてのう。特に同級生がトイレに入って来てお主の話をしだした時の緊迫感ときたら……」


「あー! 回収! 一ノ瀨辰巳修学旅行記は回収です!」


 俺はシルバちゃんから本を取り上げ、「ふんしょー!」と言いながら明後日の方向に投げ捨てた。


「むっ、まだ半分しか読んどらんのに。……ま、よいわ。後でまた図書館に行って新しい記憶を持ってくるとしよう」


 人の黒歴史を嗜むとか、この人悪魔か何か? 絶対まともな死に方しないわ。


 本を捨てられてむすっとした表情を浮かべるシルバちゃんの正面に座る。


「ところでお主、昼間っから何の用じゃ?」


 それは俺が聞きたいんだが……。

 ここでお茶目は俺は場を和ます為に、ちょっとしたジョークを一つ。


「シルバちゃんに会いに来たんだ……よっ」


「はっ」


 鼻で笑われた。いい感じに間を置いたセリフを笑われてしまった。

 褐色ロリに嘲笑された。……やったぜ。


「妾を口説くのなぞ、100世紀早いわ。若造が」


「人類存続してるんですかね」


 100世紀って……少なくともとっくに宇宙に進出して、なんやかんやあってコロニーの一つや二つは地球に落とされているだろう。

 100世紀は長いなぁ……せめて100年ならなぁ……義体化技術でワンチャンあるのになぁ……。


 ワンチャンなさそうなので、ここに来た経緯を説明する。


「何か気づいたらここにいたんだよ」


「ほう……どれどれ」


 シルバちゃんが立ち上がり、6畳間の隅にあるテレビを付けた。ウチにあるのと同じ、ちょっと年代物のテレビだ。

 ぶぅんと虫の羽音のような動作音が鳴って、電源が入る。

 画面に表示されたのは――玄関の扉だ。

 さっきまで俺が見ていたウチの玄関。


 あ、これ俺の視点か。つーかシルバちゃん、こうやって外の様子見てんのね。勉強になったわ。


「ふむ。……お主、立ったまま気絶しとるな」


「はい?」


「何やらショックな出来事があって、その衝撃で気絶したらしいのう。立ったまま気絶とか……器用じゃな」


 ショックな出来事……そうか、雪菜ちゃんが……いや、雪菜ちゃん似の宅配のおねーさんが来たことだな。

 全く、我ながら雪菜ちゃんを怖がり過ぎだ。ちょっと似てる人を見たくらいで気絶するとか……。

 まあ、雪菜ちゃんに似てる人とかそうそう居ないけどな。見た目だけならクッソ美人だし。

 

 シルバちゃんがリモコンをポチポチして、テレビに映る映像を巻き戻す。

 画面に雪菜ちゃんにしか見えない宅配のおねーさんが映る。うーんクリソツ! 素人ならまず雪菜ちゃんと見間違える出来だ。

 俺は雪菜ちゃんの兄歴が長いから似た人だって分かるけど、ちょっと雪菜ちゃんを齧っただけの人なら間違えるだろう。……雪菜ちゃんを齧る? お前、誰の許可をとってウチの妹を齧ってんだヨ……!?


「ほほう。なるほど……妹が訪ねてきたショックで気をやったのか。……うわ、情けなっ」


 シルバちゃんが軽蔑の視線を向けて来る。

 いいぞ。もっと向けてこいやぁ! ククク……その視線は我の糧になる。それは糧ゴリー《褐色ロリ》《S》枠として、いずれ我が世界を支配する時の栄養素として使わせてもらう。

 フフフ……褐色ロリに侮蔑の視線向けられるとか、気持ちいい案件以外のなにものでもないぜ。気持ち良すぎて肩こりが解消されそうだ。


「うふふ」


「ニヤニヤ笑うでない。……しかし、お主の記憶を見るに、相当妹が嫌いなようじゃのぅ……」


 どこから取り出したのか『せっちゃんとの重い出~巻ノ二~』と書かれた本を読みながら、シルバちゃんが呟いた。

 どうやらあの本には、俺の記憶の中にある雪菜ちゃんとの思い出が記されているらしい。


「ふぅん、なるほどのぅ……ま、これを見るに妹を嫌いになる理由は分かるがの」


「ん? 俺、別に雪菜ちゃん嫌いじゃないけど」


 シルバちゃんがページをめくっていた手を止める。


「……は? いやいや、お主、妹のことを嫌いなんじゃろ?」


「嫌いじゃないよ。むしろ好きだけど」


「はぁぁ? ここまでの事をされて? いやいやいや……普通、こんなことされれば、嫌いになるじゃろ」


 そう言ってシルバちゃんは本のあるページを俺に見せた。

 そこには雪菜ちゃんが俺にしたこの場では記せないような、酷いひっどい行為が描かれていたが、でもそれは――


「まあ、ほら妹がやることだし」


 多少行き過ぎたアレな行為でも、それが身内のことなら……許容範囲だろう。

 その行為に『ウチの妹やべえ』と思いつつも、それが家族である自分だけに向けられるものだとしたら……まあアリかな、ってそう思う。

 怖いと思うのは怖いけど。

 今までそれを俺以外の他人に向けたことないし。相手が身内なら言いすぎたり、やり過ぎたりすることって別に珍しくないだろ。

 実際相手は俺だけだし。


「そういう……もの、なのかのう。いや、妾には家族がおらんで、よく分からんのだが……」


「家族ってそういうもんだって」


「むむむ……」


 シルバちゃんが眉間に皺を寄せつつ『エピソードオブ雪菜』と俺の顔を交互に見る。

 

「ま、よいわ。お主がここに来た理由は分かった。さて、妾はそろそろ食事の時間じゃ。ぷらいべーとな時間を邪魔するでない」


「飯とか食うんだシルバちゃん……」


 あれ? 前に俺の精気か何かを吸った存在してるとか言ってたような。


「ま、趣味じゃな趣味。別に食わずとも死にはせんからな。さて、今日の食事は……ふぉぉー、これはまた、なかなか……っ」


 シルバちゃんが食卓前に陣取ると、何も無かったはずのテーブルに料理が乗った皿が現れた。

 出来立てなのか、湯気が立ち上っており、美味そうな匂いが漂ってくる。

 手抜き感のない、手の込んだ食事だ。

 つーか見覚えがあるメニューだ。

 

「これ、俺が食った昨日の夕食……」


「うむ。記憶を再現した。大家娘と幽霊娘の合作か……うむうむ、よい。美味そうじゃ」


 人の記憶で暇を潰すわ飯を食うわ……やりたい放題だなこの人。

 まあ、可愛いからいいけど。

 あとエリザとか大家さんの呼び方、ゴブ〇ンスレイヤーの登場人物みたいだな。


 箸をとったシルバちゃんに背を向け、現実いえに帰ろうとしたら――それが目に入った。


「んん?」


 それ――部屋の隅に視線を向けてみると、何か変なのがあった。

 近づいてみる。


「何だこれ……」


 デカい卵があった。

 滅茶苦茶デカい。ダチョウの卵の3倍くらいあるかもしれない。エスパー〇東だったら3人くらい入れる卵。

 そんなデカい卵が鎮座していた。


 それだけだとただのデカい卵だが……何故かマフラーを巻いていた。

 見覚えのある、つーか俺が巻いてるのと同じマフラーだ。

 

 何だろうコレ。インテリアにしては趣味がよろしくない。

 ぶっちゃけかなり不気味だ。部屋の主の趣味を疑うレベルだた。

 よく見るとちょっと動いてるし。蠢いてるって言った方がいいかも。


「なあシルバちゃん」


「もーお主さっさと帰らんか。妾、早く食べたいのじゃ。鉄は熱いうちに打つ、飯は温かいうちに食う、こんなん常識じゃろうが」


「非常識な存在に常識語られても……い、いやこれ、これなに?」


 俺はデカ卵を指した。


「ん? ああ、それか。それはのう……知らぬ。何かこの間から急に現れての。逆に妾が聞くが……何じゃこれ」


「えぇ……」


 ただでさえ得体の知れないシルバちゃんが得体の知れない物って……こわっ。


「シルバちゃんが産んだんじゃないの?」


「お主は妾が鳥か亀にでも見えるのか? ……そもそも、妾は未通女じゃ、アホ」


 俺の冗談に珍しく頬を染めて言うシルバちゃん。

 おぼこ……どういう意味だ? おぼこ……コボ〇ゃんの親戚から? おボコちゃん? ムムム、何だか分からんがこれはエロスの香りがしますよ警部! よーし、現実に戻ったら遠藤寺に意味聞いてみよーっと。


「やめい! 聞くな! 聞いたらお主の頭部をいい感じに吹っ飛ばして脳味噌を1/3ぐらい顔の肉とシェイクさせるぞ……!」


 しげ〇ーの事かな?

 しかし、この卵、マジで何なんだ。

 俺の心の中にあるってことは、俺と何らかの関係があるって事だろうけど。


「ま、お主が気になるなら妾が処分しておいてもよいぞ」


「え、出来んの?」


「うむ。割って目玉焼きにする。幽霊娘が楽しそうに料理をしておったからな、妾も料理にちょっと興味が沸いての」


「初料理にしてはハードルが高すぎませんかね」


 うーん、どうしよう。

 不気味だけど……俺の心の中に生まれたものだしな。何か意味があるに違いない。

 それにこの卵、よく見れば……ちょっと可愛いかもしれない。いや、ちょっとどころじゃなくて……マジで愛らしい。


「お、お主……小児性愛の気質があるのは知っておったが、もしや生まれる前ですら許容範囲なのか……」


「やめろ。化け物を見る目で俺を見るのはやめろ。あと小児何とかってガチ目の呼び方はマジでやめて」


 違うんだよ。この可愛いってのは、何て言うかこう……母性的な?

 自分の中に生まれたからか知らんけど、愛しさを感じる。

 守ってやりたい、みたいな? マフラーお揃いだし。親近感も生まれてしまった。

 何だか守ってやりたい……この子の守護キャラになりたい……そんな気持ちがムクムク生まれて来る。


 俺はシルバちゃんの視線を遮るように、卵の前に立った。


「お願いだ。食べないでくれ。お願い! この子は何も悪いことしてない!」


「どっかで見たことある場面じゃの……」


 この間、地上波でやってたからね。面白いと思ったら原作も読んで欲しいよね。


「ま、まあ、お主がそう言うなら妾は手を出さん。正直、不気味ではあるが害はないようじゃしの」


「よかった。タマコちゃん、ここに居てもいいって」


「いや、名前、いや……まあ、うん」


 シルバちゃんが何か言いたげだが、何だろう。

 それはそれとして、俺がタマコちゃんを優しく撫でると、気のせいか嬉しそうに蠢いた気がした。

 よし、これからはここに来る度に様子を見ることにしよう。

 タマコちゃんの成長日記を付けよう! そうだ、大学の課題で何か成長日記的なものがあったはず……ちょうどいい! 心の中の卵っていう影山〇ロノブの歌みたいな物が受け入れられるかは分からないが……そこは腕の見せ所か。


「うぅむ、しかし……この気配、どこかで……300年ほど前に、同じようなものを見たような……」


 唸るシルバちゃんにタマちゃんをお願いして、俺は夢から覚めることにした。

 そうだ。俺がこうして夢見てる間も、宅配のおねーさん(雪菜ちゃん似)は待ち続けているんだ……!


■■■


「はっ」


 目を覚ますと目の前に玄関のドアがあった。

 スマホで時間を確認してみる。俺が気絶してから時間が全然経っていない。

 どうやら夢の時間と現実の時間は同じ流れではないらしい。


 ということは――


「兄さん? 兄さん、いるのは分かっているんです。早く開けてください。どうしました? 久しぶりに私の顔を見て、嬉しさの余り気絶でもしてしまいましたか? それなら仕方がありません。……ピッキングはあまり得意ではないのですが」


 とか扉の向こうで言うやいなや、鍵の辺りがカチャカチャいいだしたので、やべーな、この雪菜ちゃん似の宅配のおねーさん職業倫理低すぎだろ……って思った。



 


 

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[良い点] もう全てが好き。 好きという気持ちが溢れ出てきててつらい。金を出させてくれ金を!!!!! 出版社様こちらです!こちらの作品でしたらわたくし毎巻10冊ずつ買いますわ!!! シリアスが苦手な人…
2022/09/21 03:58 ぱとらっ○しゅ
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