45. おっさん冒険者は独身をやめるらしい
オルニスがノースガンドに向けて発った後、家に戻ってセレナと一緒に魔法のかばんを開けてみた。
中に手を入れると、案の定、何かが入っていた。
「これは……、指輪?」
「私のもだ」
銀色のシンプルなリングだったが、そこからは魔力を感じる。おそらくは、これも付与魔術を施された作品の一つなのだろう。さらに魔法のかばんの中をさぐると、使用方法について書かれた紙切れがでてきた。
指輪の装着者同士で、離れていても頭の中で思ったことを伝えることができらしい。
魔術を付与した円筒を二つにわけて加工したものらしく、この一対だけでやりとりできるとのことだった。
試しにと指にはめてみると、たしかにセレナの声が直接頭の中に聞こえてきた。
「まだ試作段階で、その有効範囲は100m程度か。それでも、すごいもんだな、こりゃあ」
さすがは天才魔術師オルニスの作品といったところだろう。
「その言葉、オルニスにいってやれば喜ぶだろうな」
指輪をはめていたのを忘れて、セレナに伝わってしまったらしく、できれば、内緒にしておいてほしい。
紙には、さらに注意書きなどがかかれ、最後に『左手薬指にはめること』と書かれていた。
「なんでだ? 別にどの指でも効果でてるじゃないか?」
薬指だとぶかぶかでうまくはまらなかった。
しかし、薬指にはめた指輪をうれしそうにながめるセレナの姿を見ていると、ようやくその意味を理解した。
まさか、オルニスからそんな気の遣われかたをされるとは思わなかった。
指輪を薬指に移動させたみたが、やはり照れくさくなりはずした。
「オルニスはノースガンドに帰ったが、セレナは故郷に戻りたいとは思わないのか? もし、セレナが帰りたいっていうのなら、ついていくが」
「わたしはいまの環境に満足しているよ。せっかく二人で作りはじめた住処だ。雪はふらないし、ごはんもおいしい、それに、ライルはすごくやさしい」
セレナはソファーに座るオレの膝の上に、ぽすんと頭を乗せる。
「故郷を離れ知り合いもいないこの土地にやってきたわけだが、前にいっただろう? ライルについていくって。私の居場所はここだよ」
「あー……うん……責任もってそばにいるよ」
普段見ないセレナの甘えた仕草に甘酸っぱい気持ちがこみあげてくる。
「なんだか、眠くなってきた。おやすみ」
そういって、セレナはごろりと横になり、オレからは顔が見えない位置に頭を倒した。
しかし、後頭部から見えるみみたぶが真っ赤になっているのが見えてしまう。
もしかして、自分でいったことが恥ずかしかったのだろうか。
指輪を取り出し指に装着してみると、声が聞こえてきた。
『これからもパートナーとしてよろしく』
『ああ、こっちこそ』
そっと、指輪を薬指に移動させ、ぶかぶかの指輪を眺める。
次に作る指輪はちゃんと指のサイズに合ったものにするとしよう。セレナの指輪のサイズも聞いとかないとな。
次回、ラスト!




