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42. いいよ、一緒に住もうか

 この日はオレの家にて、セレナの作った夕食を囲んで食卓を共にしていた。

 食事が終わったあと、なんだかんだと一緒に過ごしているうちに夜も更けていた。

 宿に帰るセレナを見送るために、夜の街を二人で歩いていた。


「誰もいないな」


「夜もおそいしな」


 昼間の喧騒がうそのように静まっていた。


「今、ここは私達二人っきりの世界なんだな」


「狩りにいくときとかは大体そうだったろ?」


「それはそうなんだが……ライルは風情のわからんやつだな……」


 むくれる彼女の手を引いて道を変える。


「こっちだと遠回りにならないか?」


「せっかくだから、もう少しこの時間楽しみたいと思ってな」


「ほう、そうかそうか」


 セレナはうれしそうに身体をピタリと寄せて腕を絡みつかせてきた。

 普段は大人の女性らしい落ち着いた立ち振舞いをする彼女であったが、二人きりのときは甘えた仕草を見せてくる。


「歩きにくいんだが……」


「いいじゃないか。こっちのほうがもっと時間をかけられるぞ」


 やれやれと、空を見上げると満点の夜空からは星が振ってきそうだった。

 つられるように隣のセレナも夜空を見上げ、その視線を空の彼方にむけていた。


「キレイなものだな。北の雪山で野営したときもこうして空を見上げていたものだ」


 夜間の移動中、真っ暗な闇夜に浮かぶ星座を目印に利用したことがよくあった。

 お互い知っている星座を指差し、その呼び方の違いを楽しんでいた。


「ただこうして見上げてるだけというのも悪くないな。今、ライルと同じものを見上げているって実感できるからな」


 少しだけ気恥ずかしそうにしながら微笑む彼女を見ていると、もっと近くにいたいという欲が出てきた。


「えーと、そのだな、一つ提案があるんだ」


「どうした? 聞こうじゃないか」


「あの家なんだが、現在部屋が余っているんだ。使うこともなくもったいないと思っている」


「ほうほう、それで?」


「セレナも宿代がかさむだろうから、部屋を提供しようと思うのだが……どうかな?」


「ふむ……」


 セレナは体を離してから、ジッとオレの顔を見つめてくる。


「いいよ、一緒に住もうか」


 恥ずかしさでぼかした言い方をしたのだが、セレナから返ってきたのは直球な表現だった。


 

 次の日、セレナの宿に出向き、空間魔術を使って荷物を運ぶのを手伝い、引越しが完了したのであった。

 

砂糖を吐きそうです…… 作品タグに甘々注意をつけたほうがいいのだろうか

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