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30. いいクエストを見つけたわよ!

「ライル! いいクエストを見つけたわよ!」

 

 ギルド会館へと入ると、満面の笑みを浮かべながら依頼書を掲げるオルニスの姿。

 

 次に受けるクエストを決めようと3人で集まることになっていたのだが、オルニスが一番先に来ていたようだ。

 

 オルニスから受け取った依頼書には


『ダンジョン《迷いの樹界》の調査』


 と書かれていた。

 

 ダンジョン、それは様々なものがある。

 古代文明の遺跡であったり、魔物の巣となっている洞窟であったり、はたまた魔力の作用によって異界化した場所であったり。


 そこには人の手ははいっておらず、何が潜んでいるかはわからないという危険がつきまとう。

 そのため、ダンジョンの探索依頼が国や研究機関から持ち込まれた場合、その報酬は破格なものとなる。

 その値段は、ダンジョンという魔窟へ挑戦するリスクが大きいということであった。

 

「ほら、見て御覧なさいよ。そこの報酬額を!」

 

「おまえ、ダンジョン調査の経験はあるのか?」

 

「ないわ! でも楽勝でしょ!」

 

 うすい胸を張りながら断言するオルニス。その無駄な自信はどこから来るのだろうか。


 オレも若い頃は刺激を求め、東に珍しい魔物がでたときけば討伐に向かい。西に新たなダンジョンが発見されれば探索へと向かっていた

 これが若さなのかと、遠い目でオルニスを見るのであった。

 

 その後、セレナも交えて話し合うが、オルニスに押し負け、ダンジョンへと向かうことにした。

 

 

 3日ほどの行程を終え、ダンジョンの入口へと到着すると、木々が行き先をさえぎるようにみっしりと立ち並んでいる。

 生い茂った木々が光をさえぎり、薄暗く視界は狭い。

 それは、ただの森林とは様子が異なっていた。

 百年以上前より、この密林内はとある魔力の暴走によって異界と化したと聞いている。

 

「冒険者か、許可証を見せてもらおう」

 

 入口には無闇にひとが入りこまないようにと、見張りの兵士が立っている。

 ギルドから発行された許可証を見せ、そして、薄暗い森へと足を踏み入れた。

 

「いやな雰囲気だ。森の中がざわついているようだ」

 

「魔力の流れがおかしい。これが……異界化したダンジョン……」


 油断なくあたりに視線を配るセレナに比べ、オルニスはむしろ楽しそうですらあった。


 以前、ここにきたときは学者先生の護衛という形だった。あのときは、そこかしこを調べ始め難儀したものだった。

 そういえば、そのときの知識欲で目をキラキラさせるあの学者と、オルニスの顔つきも似ている。


「なるほど、なるほど、魔力のながれが一定してないわね」


 まるでおもちゃを与えられた子供のように、楽しそうに観察を始めていた。


「おまえ、報酬目当てかと思ったが、本当はここに来たかったんだろ」


「……ばれたか。魔術学園でもこの森のことは聞いていたのよ、一度は訪れてみたい場所ってね」


「そうか、冒険者になった役得だな」


「うん!」


 笑顔でうなずくオルニス。

 

 しかし、忘れてはならない……、ここが危険な場所であるということを……。


 地図上では“迷いの樹界”とだけ表記された人智の及ばない空白地帯。暴れる魔力の流れによって歪められ、地図をかいた端から無用の長物となり、その全容を知るものはいない。


 ここがなぜ恐れられているのか、このあと、その身をもって知ることになるのであった。

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