触手料理のすゝめ@おしながき
この小説は「とある冒険者が書いたグルメエッセイの宣伝文」という設定で書かれた小説になります。
触手型モンスター
脅威度:D~C
基本スキル:【拘束】【体力・魔力吸収】【隠密】
触手型モンスターは、ダンジョンより生ずる摩訶不思議な生命体である。何千年もの間、好色家達によって扱われているが、その生態には未だに謎な点が多い。どのような生物から派生し、どのような進化を遂げたかも判明しておらず、そのせいで「古の邪神が創り出した眷属」「悪の研究者による人工生命体」「他の星から来た外来種」などといった説が学会では大真面目に語られているらしい。
触手型モンスターの1番の特徴は全身が筋肉によって構成されていることだ。この生物は脳や脊髄などの中枢神経どころか、食べたものを分解する消化器官すら持たない。目や鼻などの感覚器官も見られないのに、周囲をうろつく生物を捕まえる。今まで様々な賢者が触手を解剖したが、その身体から何も見つけることができなかったため、首をかしげたという。それほどに触手型モンスターは生物として異常なのだ。
じゃあ、彼等がどうやって活動するためのエネルギーを補っているのか。その秘密は、全ての触手型モンスターの保有する基本スキル「体力・魔力吸収」にある。
とある研究室で行われた実験レポートによると、触手に数時間捕まっていた人は肉体が痩せ細り、魔力不足、栄養失調などの症状が見られていた。そのことから、彼等は何らかのメカニズムにより栄養を直接奪うことができるのではないかと推測されている。
触手型モンスターの強さは、その活動エネルギーの吸収源に由来する。吸収源である生物が肉体面・魔力面で優れているほど、その力を吸収する触手型モンスターは強くなり、その肉体は肥大化する。
私の趣味は、そんな風に丸々と太った触手型モンスターを捕食することである。
触手型モンスターというものは、成長すればするほど魔力が全体に染み渡る。大きく成長したものほどその味は絶品だ。
冒険者である私は、迷宮での探索や依頼の中で見つけた触手を討伐しては、自らの手で調理を行なっている。私が触手型モンスターのことを『彼等』と呼ぶのも、彼等と1個体の生命同士で真剣に向き合いたいという姿勢の現れだ。
このエッセイを読むことで、願わくば同好の士が見つかればと思う。
ただし、触手を食べる前に気を付けなければならないことが1つある。
触手は、粘膜などの肌の薄い場所から生命力を吸収しようとする性質がある。また、私達は基本食べようとする触手が今までどのように生きてきたかをしる術がない。その触手が今までどんな生物のどんな場所に突っ込んだかを、一切理解することは不可能なのだ。だからもし、これを読んでいる同士の諸君が触手型モンスターを食べようとしているならば、その時は中級以上の聖水で煮てからにすることをオススメする。
私は趣味に走って聖水を使わずに食べたことが何度もあるが、そのせいで幾度かひどい目にあっている。
自分の趣味に走るのは個人の自由だが、それが死に繋がる可能性もある。美食のために命をかけられるかどうか、他者に大きな迷惑をかけないかどうかを、よくよく考えてから行動して欲しい。
……残念だが、宣伝文で紹介できる内容はここまでとなっている。これ以降の内容を掲載するのは、冒険者連合組合やテイマー養成機関、聖王協会などといった機関から許可をとらなくてはならない。だから、この宣伝文では、紹介予定の触手とその料理について手短に紹介していく。
①オーソドックスな触手による定番料理
中古品の鎧を装備している、この春に冒険者になったばかりの少女。ショートソード片手に意気揚々と迷宮へと踏み出した彼女に、細長き魔の手が忍び寄る……。
新米冒険者を捕まえていた低級触手を材料に、救出した彼女の前で定番触手料理を製作&実食。材料も作り方も初心者向けなので、触手好きビギナーにはオススメのレシピ。
②触手服からつくる「かき揚げ」
政府直轄のスパイ組織に所属する凄腕女エージェント。戦闘・潜入の両面で活躍を重ねた彼女は、恨みをかった裏稼業の人々の罠にはまり無力化されてしまう。
監禁された彼女に待ち受けていたのは、裏地が大量の触手によって覆われたボディスーツ『触手服』による快楽調教だった。
悪の科学者が作り出した、裏地が何万本もの触手によって覆われているスーツ。成長を止められているのか、触手1本1本の大きさが綿棒の先ほどのサイズしかない。
一流のエージェントの生命力を吸収し続けていただけあって、彼等はその小さな体にはち切れんばかりのエネルギーを貯めこんでいる。試しに一粒つまんで口に運ぶと、その瞬間旨さが口の中を満たした。
包丁を使って丁寧にスーツからそぎ落とされた触手。その美味さを引き出すのに最も最適な料理を思案した結果、たどり着いた最適解は「かき揚げ」だった。小麦粉によって一塊にされた触手による、旨み3000倍の恐怖が私へと襲い掛かる……。
③口型触手の蒲焼き
サムライの國、ヒノモトでは触手型モンスターも独自の進化を遂げている。
男と女の特性を合わせ持ち、子を産むことも産ませることもできる種族『サムライ』。極東の島国ヒノモトは、サムライによって統治された独立国家である。大陸から隔離されているその魔境で、触手は彼等から効率的に搾り取るために進化を重ねた。
その到達点の一例が、攻めるための形でなく搾り取るための形をした触手『口型触手』である。彼等の触手は先端部が蛇のように開く形状になっており、獲物に対して食いつきながら生命力を吸うのだ。
伝説の触手型モンスター『ヤマタノオロチ』の噂を聞き、船に乗って向かったヒノモトの地。路銀稼ぎのために潜った迷宮で、私は口型触手に捕まったサムライと出会った。
異国の触手を調理するならば、異国の調理法こそが相応しい。そんな理由から、私は助けたサムライのレクチャーのもと、「カバ焼き」なる料理に挑戦する。
④頑強触手のあぶり
触手型モンスターは、周囲の環境によって大きく生態が変化するとされている。人間が食生活で体型が変わるように、触手型モンスターも生命力の吸収源で肉体の性質が変化する。
大鬼の集落付近に生息する触手型モンスター、別名『殺人触手』。大鬼の筋力に耐えられるようにと進化した結果、並みの個体とは桁違いの身体能力を獲得した品種である、強く硬いその触手の一撃を、人間は絶えることができない。
虚弱体質の大鬼の女王『白夜叉』。一族に伝わる度胸試しの儀式。そして、強き者が長となる大鬼の掟。頑強なる触手を巡って、1つの騒動が巻き起こされる。
⑤甲殻触手のスープ
触手型モンスターは、ペットとして上流階級で秘密裏に飼育されている小型種の品種が存在する。国内でトップクラスの研究機関に所属するとある女賢者は、改造により『甲殻触手』という新たな触手の開発に成功する。カニやシャコのように硬く無機質な外骨格に包まれたその触手は、過食部位が少ないことから美味しく食べるのが非常に困難だった。
私は、その甲殻触手を美味しく食べるため、女賢者と契約を結ぶこととなった。
私の出した条件は「彼女が愛用する甲殻触手の提供と、触手のレシピ開発への協力」。
彼女の出した条件は「研究機関の設備を勝手に使って触手開発をしていたことを、彼女の上司にバラさないこと」。
国で最高峰の頭脳の協力の元、新たなるレシピの開発が行われる。
⑦触手の根本から作る料理
捨てられた触手達の墓場、蠢く墓標群
触手が大量繁殖するその場所は、私にとって憩いの場でもあった。しかし、触手の楽園を脅かす、恐るべき怪物が出現する。その名も『ティンタクル・イーター』。触手型モンスターをひたすら乱雑に食い散らかすだけの怪物である。
SSランク級という天災に匹敵する強さを秘めているのに、襲うのは触手型モンスターのみの怪物。周囲に実害がないという理由から、国もギルドもこの怪物との戦いを拒否した。
だが、私は彼等とは違った。触手を粗末に扱う不届きな輩を決して許すことはできない。触手をコイツを放っておくことは、世界の危機に繋がると言っても過言ではないはずだ! 私は、1人剣を握り、『ティンタクル・イーター』に立ち向かった。
ティンタクル・イーターに関する事態の顛末と、先端を喰い散らかされた触手の根本の調理方法について書かせていただいた。少々込み入った事情により、王国による検閲が入る可能性もあるが、そこは大目に見てもらいたい。
本には、この7つの内容が収録されることとなっている。ギルド関連の審査が終わるのは、おそらく8月頃になるだろう。「触手型モンスターを食べてみたいが、その方法が分からない」という方々、申し訳ないがそれまで待っていただけるとありがたい。
それでは皆様、次は今夏出版予定の「触手料理のすゝめ」でお会いしよう。
8月までにそれぞれのエピソードを書いて、短期集中連載として投稿します。尚、予定の変更によりエピソードが消えたり、逆に増えたりする可能性もあります。




