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緋色の魔法少女、或いは紅の魔女  作者: 水城優希
第一章『魔法少女さぁや』
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第一幕『魔法少女始めました』

『さぁやさん、後ろです!』


頭に直接響く声に反応して、さぁやは背後に向けて魔力を放った。


 ≪グガォォオォーーーーー!≫


獣の叫びのような断末魔を上げ、魔族が倒れる。

その姿を見届けずにさぁやは次の相手に向かって宙を舞う。


「えぇいっ!!」


気合を込めて腕を振るうと、魔力で編まれた刃が飛んでいき数人の魔族を真っ二つに切り裂いた。


「さぁや様が道を切り開いて下さった!我々も続くぞ!」

「おおおぉぉぉっ!!!」


鬨の声を上げて騎士たちが前へ進む。

さぁやによって隊列を乱された魔族の軍勢は騎士たちの勢いに押され次々と討ち取られていく。

黒い影のような魔族たちは身体能力こそ圧倒的に人間を上回るものの絶対数は多くない。加えて今はさぁやの作る広域魔法結界によってその力が大幅に下がっている。

こうして今回もさぁやの活躍によって戦いは人間たちの勝利で終わった。




  ――――――




「さぁや、おっつかれー!」

「お疲れ様です、さぁやさん」


戦いを終え、一足先に教会へと戻ったさぁやを二人が迎えてくれた。

そしてその後ろにはツェツィーリアの姿もある。


「お疲れ様でした、さぁや様」


いつもの柔らかい微笑みを浮かべさぁやを迎えるツェツィーリア。

それにさぁやは―――


「リアさん!またぁ!」

「あ……失礼いたしました、さぁやさん」


さぁやの指摘にツェツィーリアは口に手を当てて苦笑し、すぐに言いなおした。

これはさぁやとツェツィーリアの約束で、どうしても『様』付けに慣れないさぁやが何とかしてもらった結果である。


(本当は『さん』もいらないんだけど……)


年上の、しかもツェツィーリアのように美しい大人の女性に敬称を付けられると何というか複雑な気分になってしまうのだ。

ちなみに騎士たちの様付けに関してはもう諦めている。


「さぁや、ごはん食べよう!ご・は・ん!」


そう言いながら美弥がさぁやの左腕に飛びついた。


「そうですわね。行きましょうさぁやさん」


反対の腕はいつのまにか楓がするりと腕を巻き付けていた。

両腕をしっかりと抑えられたさぁやは二人の為すがままに引っ張られていく。


「もー、引っ張らないでよー!」


さぁやも文句を言いながらも笑顔で二人にこたえる。

そんな三人をツェツィーリアが微笑ましく見守っていた。





さぁや達がこの世界に召喚された日から、一か月程が経った。

あの日ツェツィーリアと契約を交わして魔法少女になったさぁやは、魔族が攻め込んでくる度に戦場へと向かっている。

一か月で既に四回。

平均すれば週に一回のペースで攻め込まれているわけだが、これが多いのかどうかはさぁや達にはわからない。

食堂に着いたさぁやがぼんやりと今までの事を思い返していると、ツェツィーリアが夕食を運んできてくれた。


「本日は美弥さんのご要望で、ハンバーグです」


プロのメイドの様に堂の入った動きで三人の前に手早く料理を並べてくれる。

メインのハンバーグにサラダ、そしてスープ。

どれもがとても美味しそうで、実際すごく美味しい。

ここで暮らすようになって三日程で美弥は完全に餌付けが済んでしまっていた。


(なんて、私もみゃあの事言えないんだけど……)


ハンバーグから立ち上る湯気が鼻孔をくすぐり、思わずごくりと生唾を飲んでしまう。

そんなさぁやに気付いているのか、ツェツィーリアが微笑んで声をかけた。


「最後に特製ソースをかけますのでお待ち下さいね」


そう言って彼女は三人のハンバーグを真ん中を綺麗にナイフで割いて、そこにたっぷりとソースをかける。

ソースがかかった事で立ち上る香りは更に香ばしくなり、口の中が唾液で満ちる。


「さぁ、召し上がってください」

「「「いただきます!」」」


ツェツィーリアの声を合図に三人は思い思いに食事に手を付け始める。

真っ先にハンバーグを大きく切って口に詰め込む美弥。

楓はフォークを優雅に使ってサラダから口に運んでいる。

さぁやはと言うと……


(えへへ…やっぱりまずは、ね?)


美弥と同じようにハンバーグを切り分けた。

ナイフを入れた瞬間、溢れた肉汁が裂け目から鉄板へと流れて"ジュッ"と美味しそうにはじけた。


「んん~っ、美味しいです!」


幸せそうに食べるさぁやを確認してから、ツェツィーリアも自分の分の食事を準備し始める。

始めツェツィーリアはさぁや達(というかさぁやだが)が食べ終わるまで自分が食事をする事を拒んでいた。

しかしこれもさぁやが頼み込んで、一緒に摂るようにしてもらったのだ。

『本物の家政婦のようです』と楓が言っていたのを今でも覚えている。


「確かに、ツェツィーリアさんの料理はどれも素晴らしいです」


楓もさぁやの言葉に同意する。

実際ツェツィーリアが出した料理で今まで美味しくないものは一つもなかった。


「お褒めにあずかり光栄です」


楓の賛辞に素直に返すツェツィーリア。


「セイジョ様っていうのは料理までうまくないといけないものなのか?」

「いけない…というものではありませんが、お仕えする方の為に努力するのは当然の事だと思っています」

「お仕えするって……」


ツェツィーリアの答えに思わずさぁやが苦笑いを浮かべてしまう。

最近は幾分マシになってきたが、初めの頃のツェツィーリアは本当にすごかったのだ。


(何ていうか……本当にもう、すごかった……)


さぁやはハンバーグを切り分けながら、ここに来たばかりの頃を思い出していた。

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