幕間
さぁや達が去った大広間に残された者たちのざわめきが広がる。
「―――あれが此度の―――」
「幼すぎないか?あれでは―――」
「しかし前回の失敗は―――」
「それよりも何故一人ではなく―――」
ざわめきは次第に大きくなり、広間を埋め尽くした。
そこに見える感情は困惑、失意、煩悶……負に偏った空気が空間を満たす。
―――カッ!
そこに一つの鋭い音が響いた。
皆の視線が集まった先には他の者たちと比べて装飾の多いローブをまとった老人がいた。
今の音は彼が持つ杖を床に打ち鳴らしたものだったのだ。
「……静まらんか」
言葉は決して大きなものではなかったがシンと静まった部屋に重く響いた。
老いてなお衰えぬ鋭い眼光がそこにいる者たちを射抜く。
「一先ず儀式は成功したのだ、あれこれ言っても始まるまい。それよりも―――」
そう言って老人は周りの者たちを見る。
皆一様に彼の次の言葉を聞くべく真剣に耳を傾けている。
「『食事』の準備をしておけ」
先ほど三人とツェツィーリアが出て行った扉の傍に控えていた者に告げる。
声をかけられた女性が背をピンとのばしてから勢いよく頭を下げた。
「た、直ちに行います!」
そして扉をバンと開けて小走りで廊下の奥へと消えた。
バネ仕掛けで勝手に閉まる扉をみやりながら老人は内心で小さくため息を吐いた。
(どいつもこいつも、無様に狼狽えおって……)
それこそ詮無い事か。
そう思いなおして老人は傍にある椅子に腰を下ろした。
「……」
そうして何か考え事でもするように目を閉じる。
老人が無言になった事でまた周りにひそひそと言葉が生まれ始める。
先ほどに比べるとかなり声を抑えてはいるがやはり流れる空気は変わらなかった。
そのひそやかなざわめきを思考の外に追いやりながら、老人は今後の計画を立て始めていた。