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風の贈り物  作者: カゼノ
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第二話;疾風高等学校

「南海はやくしなさーい! 学校遅れるわよー!」


「はぁーい!今から行くよ!」


慌しい朝。今日から高校生活が始まる。…が、一日目から寝坊をしてしまった南海。階段の下から声をかけているのは、風野 ちはこ、南海の母さん。 朝ごはんを作っているなんだが、ピンク色のチェック模様のエプロンをしている。髪型は茶色でパーマヘアーである。


「学校初日から寝坊をするなんて…」


困った表情を浮かべる母さん。ドタドタッ、と二階から駆け下りてくる南海。


「行ってきまーす!」

 

玄関に直行する。


「…朝ごはんは!?」


行こうとする南海を引き止める母さん。


「いいよ!大丈夫! 行ってきまーす!」


「大丈夫じゃっ‥いってらっしゃい!…」


玄関を出て行った。


「しょうがない子だわ…」


と母さんはため息をついた。

玄関の先には、健人、巫、将汰が待っていた。

表情は待ちくたびれたような感じだった。


「あれっ!なんで…!?」


驚きな表情で、とりあえず、門を出る南海。

その言葉に、最初に健人が口を開いた。


「…なんでじゃねぇー!何時だと思ってるんだよ!俺たち、待ち合わせ場所で待ってたんだぞ!南海が遅いからここまで来てやったんだ!有り難く思えよなぁ!」


唇を尖らせる健人。

南海は、硬直していた。

健人の言葉が止んだ後、巫は問いかけた。


「…寝坊だね?南海」


巫の問いに、南海は、明るい表情から…だんだんと暗くなってきた。その表情に気づいた三人はやっぱり。という感じに、南海の言葉を待つ。


南海は目を仰ぐ仕草をやった後、口を開いた。


「……みんな、ごめん…」


健人はため息をついた。


「いいよっ!早く行こ!」


巫は笑顔を見せた。


「ったく‥次寝坊したら許さねーからなぁ!」


健人はまだ怒っているようだけど、その言葉で南海は、気持ちが明るくなった。

将太は笑みを浮かべている。


顔を前方に向け、


『今日から高校生活!!でも遅刻だーーーっっ!!』


「うん!みんな行くぞー!!」


南海はものすごいスピードでみんなを押しのけて走って行ってしまった。   


レッツ・ゴォーー!!!


「あっ!てめぇぇ!…それはねぇーだろ!」

「南海ー!待ってー!」

「先行くなよ!」


風に乗れる今日。


調子いいぞー!!


南海は商店街の中を通りすぎようとした時、突然声が掛かかる。


「どうしたの!?南海!そんな慌てて!」


南海は思わず足を止めて、その場で足踏みをした。


そよ風マーケットのみつこおばさんだった。

みつこおばさんは新たに入った新鮮な野菜を並べているようだ。


「おはよう!みつこおばさん!学校遅刻するからー!じゃあね〜!!」


手を振ふりながら走って行ってしまった。


「…いってらっしゃい!……」


南海は手を振り返し、

「行ってきまーす!」といい、もの凄いスピードで行ってしまった。

遅刻ね‥、とみつこおばさんは自分の仕事へ戻っていったのだった。


その頃、南海を追いかける三人も商店街を通り過ぎていった。

みつこおばさんは、時々見かけるかける黒い影を見ると、大変だわ‥、と心の中で囁くのであった。



走リ出してから五分。

やっとのことで疾風高等学校に到着!!


「おはようございまーーす!!」


門を通り抜ける。南海の後ろには、健人達が来ていた。


「オッス!」と健人。


「おはようございます!」と巫。


「おはようございまーす!」と将汰。


次々と通り抜ける生徒。速すぎる光景に門番のおじさんは硬直した。

ここまで来るには、家が遠い人でも20分〜30分はかかる。が、南海達はわずか5分で来ている。徒歩より全然速い。南海たちが走るとチーターなみに速くなるのだ。

ありえないことだが、ありえる四人組みなのである。



ダダッ ドダダドダ…ドダッ…ダダ…… バンッ!!



「みんな!おはよー!!」


南海が教室のドアを強くオープンしたのか、生徒達はびっくりしているようだ。

時間の方は…おっ!八時二八分だった !遅刻にならずに済んだ。自分の席へ息を切らせながらゆっくりと向かう南海。


「南海! 捕まえた!」


突然後ろから捕まれたのでビクッとしてしまった。…巫だ。背中に重く体重を乗せてしがみついているので、相当疲れているように思えた。息が苦しそう。

生徒達は、じっと見ている。


「大丈夫?!巫!」

しがみついている巫を心配そうに聞いた。


「なんとかね…南海はやすぎなんだから!…」


「ごっ、…ごめんね!…巫…」


南海は顔をあげて、辺りを見渡すと…ドアのところに、健人、将汰がいた。息をゼェーゼェーと切らせている。ブレザーやネクタイが崩れおちている。


「南海…てめぇ!…」


健人は、慌ただしく怒っていた。髪の毛が殺気だっているように見える。南海の方へと近づいてくる。

南海は、うっ…、っと後退しようとするが、後ろには、巫がまだ自分の肩に手を置いていたので、後ろに下がることが出来なかった。


「皆の衆!席についてください!」


雷頭に優しい顔をした、信夫先生ご登場だ。

先生の登場で、南海は危機一髪を逃れた。


「あとで覚えてろよ!南海!」


…健人が近づいてくる時鬼みたいな表情だった。


『怖い…』


南海は、おそれおそる自分の席に向かった。

他の生徒もそれぞれ着席した。


信夫先生は教壇の前に立って、「号令をお願いします!」と言った。


「先生、まだ日直とか号令係とか決めていませんけど…‥」


一人の男子生徒が言った。


「あっ…そうですね!まだ決めてなかったね。申し訳ないです!…じゃあ先生が決めます……では、出席番号一番からやってもらおうかな」


「げーまじかよ‥」


出席番号一番の人が、不満そうに声を上げる。


「ではお願いします!じゃあ…その場で号令をかけて下さい」


皆立ち上がり、男子生徒は元気なさげで挨拶をした。


「キリーツ……おはようございます」


『おはようございます!』


「はい、ありがとう。でももうちょっと元気よく言ってくれると先生もありがたいんだけどなぁ…まあ、最初ですしね…」


信夫先生は笑みを浮かべて言った。


「では、今日のことなんですが、皆の衆の校長先生の紹介があります。体育館で行われますので、皆の衆は体育館ばきを持って廊下に出ましょう!」


生徒達は、廊下に出ていく。


「では、適当にならんで下さい!二列ですよー……では、そこでしばらくおしゃべりしててもいいですが、声は小さめにお願いしますよ!」


信夫先生はそう言うと、他のクラスの様子をうかがって、出発を待つ…。


仲良し四人組は、後ろの方に並んでいた。


「ねぇねぇ、校長先生って、どんな人だと思う‥?みんな」


仲良し四人組は、ひそひそ声で話をしていた。

南海の言葉に健人は話を遮る。


「それより、南海…」


「…なっなに!健人…」


南海は、一瞬怖がった。

なぜかというと…健人の言葉が頭に浮かんできたのだ。


『覚えてろよ!南海!』


「……いや、やっぱなんでもねぇ…」


「?」


健人は、南海から顔を反らした。

南海の頭から、健人の言葉が消えていった…。


『なんなんだろ…ま、でも良かったかな…なんとか逃れたかな…』


南海は、ふと胸を撫で下ろす。


南海の行動に健人は、何かに気づいているようで

南海のことが気になってしまう健人だった。


先頭は一組で、二組、三組、四組、五組。

クラスの多い学校である。エリート学校ではない。普通の高等学校なのである。ただ、校舎が大きいだけなのです。


「一組からどうぞ進んで下さーい !」


係員が合図をした。信夫先生は、


「ほら皆の衆!いきますよ!」


先頭の子から歩き出した。次々と歩いていく生徒達。

一年生、全生徒で二四十人いる。一年生だけで、小学校の全学年生徒を合わしての人数だ。これほど入学生が多いと、先生達や校長など喜ばしい事だろう。


ぞろぞろと歩いている中、体育館に辿り着いた。

教室から体育館までの道のりは、五分弱はかかる。校舎と体育館は別々で、校舎の裏側に大きい体育館がある。生徒の人数が多いせいか、時間がかかることは当然のことだ。これほど校舎の中はものすごく広いのである。


「では、一組の皆の衆!その場で座って待っていてください! お話はしてもいいですよ!」


信夫先生がそう言うと、生徒達はざわざわしゃべり始めた。


「ここの体育館、めちゃくちゃ広くねーか!?」


「ここ絶対、普通の高校じゃないよなぁ!」


「なにこの、天井!」


「ホント、高いよね!」


「なぁ!それよりも、校長先生気にならね?!」


「気になる気になる!」


みんなは疾風高等学校に驚いてばかりです。

一方仲良し四人組は、


「なぁ、健人どうしたんだよ?」


将太は聞いた。健人は全く、話にも加わらないでステージの方を向いていたのだ。

まるで、なにかを考えているように将太は心配した。


「あ、わりぃ…何?」


健人は、何事もないような言葉で返事をした。


「なにじゃねーよっ!健人、お前っ‥なにか悩んでるのか!?」


健人は目を見開いて、


「…別に悩んでねぇよ」と言った。


健人の態度が気になってしょうがない将太。


一方南海と巫は、なにかと盛り上がっていた。


「…うん!昨日ね、すっごい夢みたんだ!…空飛んでる夢!」


「へぇーそんな夢みたんだ!良かったじゃん南海!」


「うん!良かった!」


南海は嬉しそうに言った。

突然声が掛った。


「みなさーん! 前を向いてください!」


ステージから、係員が言っている。

全生徒は前を向いた。

生徒達が静かになったところで、係員は口を開いた。


「お待たせしました。私たちの校長先生を紹介したいと思います。では、校長先生、宜しくお願いします」


係員は言って、後退した。

すると、白髪をした若い女性がゆっくりと生徒の前に姿を現した。

服装は、黒いドレスを着用していた。ドレスに、キラキラと光る物が多数くっついていた。首元には、銀色のネックレスを飾っていた。綺麗な格好をしている。顔が優しい印象があり、「セフィヌ」って名前も似合っていた。


セフィヌ校長は、マイクの前に立って、話始めた。


「皆さん、どうも初めまして。疾風風高等学校の校長を務めている、セフィヌともうします。

どうか宜しくお願いたします」


生徒達は、セフィヌ校長の先生の礼に合わせて頭を下げた。


「みなさんは何故、ここの高校に入ったのか、私も先生も、全て知ってるわけではございませんが、一つ言いますね。

“ここの疾風高等学校は、エリート学校ではなく、普通の高等学校なのです。”

まあ、見た目からみてエリート学校に見えるのでしょう。

さて、ここの時計台の上にいる大きな鷲、皆さんはご存じだと思います。大きな鷲は、ここのシンボルです。

大きな鷲には、意味があります。

疾風高等学校の『疾風』の意味は、皆さん知っていますか?


“急に吹き起こる風”という意味を持っています。大きな鷲には、大きな翼を持ち、空中から獲物をしとめます。


このことから、鷲は、疾風高等学校を見守って、皆さんをこの三年間守っていくのです。


だから、皆さんはこの鷲とともに、学校生活を送り、新しい発見を見つけてみてはどうでしょう?


では、これで私からのお話を終わらせて頂きます。」


セフィヌ校長は礼をし、係員も後ろで礼をした。生徒達も慌てて礼をする。セフィヌ校長がいなくなったところで、係員はマイクの前に立ち、


「では、皆さん!退場して下さい…!」


全生徒は、立ち上がってあくびをしたり、背中を伸ばしたしする生徒もいて、ぞろぞろと教室へ帰っていきました。




「ああーだりぃ…」


「校長先生、美人だったよな!?」


「うん!若いよねあの人!綺麗だった…」


一組の教室に帰ってきたとたんに、生徒達は声を出し始めた。


「皆の衆、席に座って下さい!」


信夫先生は、教壇の前に立って、言った。


「はい、明日の連絡事項を伝えます。明日からは授業が始まりますので、持ち物の忘れをしないようにして下さい!


一限目と二限目は、皆さんがわくわくしている部活の紹介が体育館で行われるので、部活のことも考えて来て下さい。

部活動の表は、明日渡します!では日直、号令をお願いします!」



『キリーツ…さようなら!』


『さようなら!』




仲良し四人組は、のんびりと一本道を歩いていた。

「みんな〜部活どうする!?」


南海は、皆の前に行って言った。


「う〜ん、あたしはまだ分かんない」と巫。


「俺も!」と将太。


「じゃあ、健人…は?」


南海は、健人の顔の様子を伺って聞いた。


「まだ分かんねぇ…けど、南海に言っとく!」


「え‥」


「朝はその、‥悪かったな。…怒鳴って…」


健人は顔を赤くして言った。

南海は笑みを浮かべ、


「もう気にしてないよ!あたしの方こそごめんね健人。巫も将太も!」


「?…もしかして朝のこと? 南海が先に行ったっていう…」


巫は言った。


「うん、そうだよ…!」と南海。


巫は、ニヤっ、と表情を変え、健人の方を向いて、「なっなんだよ」と、健人はいい、


「いや、あのさ…」


巫は何かを言いようとしたが、将太がそれを遮る。


「健人、そういう事はさ、すぐ忘れようぜ!?」


健人は顔を赤らめて、


「悪かったな…俺だけ……〜」


「おい?‥なに言ってんか分かんねぇよ…健人」


「もう…いいだんよ!っ」


健人は歩く速さを速めたた。


「ちょっ待てよ!健人ー!?」


健人は将太の声を無視し、ズガズガと歩いて行った。

三人は急いで、健人のあとを追った。


空は快晴。


こうして、仲良し四人組の楽しい高校生活が幕を開けました。







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