太陽があそこのビルに隠れる頃になると
太陽があそこのビルに隠れる頃になると決まって
トラックがやって来る
割れた大きな音で廃品回収に参りました
要らなくなったモノはありませんかと繰り返しながら家の周りを
ぐるぐると回り続ける
だけど僕の部屋に残っているものといったら
写真立てとタバスコの小瓶と
ケースが無くなってしまったCDが三枚だけ
なんだってどんなに大切に思っていても気がついたときには
すうっと消えてしまった後
たまには床に日焼けの跡を残していくこともあるけれど
小学校の校舎の裏の
陽の当たることのないじめっとした
土の上に大きなクローゼットが置いてあって
夜更けに僕が出かけて行って
警備員に見つからないように忍び足で近づき
そっと扉を開けたら
そこに彼らが居るのかもしれない
トラックが響かせている音を聞きながら
部屋の真ん中で僕は身を縮こまらせている
やがてあそこのビルから太陽が顔を出す頃になると
トラックは遠ざかっていき
今日も僕は要らないものを捨てられずに終わる