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GIFT-音のキャンバス-  作者: 楽団四季
第2節
18/25

回想2

 第二の選択は、最初こそ叩きつけられた絶望が尾を引いて嫌でしかなかった。未練ばかりが心に募って、用意されていたレッスンをサボってこっそり再開する日々だった。その度にきつく叱られて、大事な物を取り上げられて、やりたくないことをやらされる日々だった。

 義務の押し付けと自由の剥奪を何度もされて、音楽自体に嫌悪感を抱きかけた時、同い年の女の子に慰められた。楽しくなさそうな顔をしてると言われた。

 自分の思いの丈を吐きだしたら、思いっきり怒られて、叩かれた。その瞬間までは優しい子だと思ってたから、ただただ驚いて動けなくて、一方的にボコボコにされた。

 自分みたいに好きでやってる子もいるのに、真面目にやったこともない奴が嫌って言うなって言われた。ちゃんとやって、それでも嫌なら親に止めたいって言えと言われた。

 それが出来そうもないから塞ぎこんでたのに、無茶言うなって言いたかったけど、その子に怒られまくると、不思議と心が軽くなった。食わず嫌いは確かに良くないと思った。

 それからは練習に励むようになった。サボっていた分や毛色の違いに苦戦しながらも、やるうちに楽しさに気付くようになった。自分の采配で曲が変わるということが、今までやっていた楽譜通りから抜け出す冒険が――その独自性が心を惹いた。

 今までやっていたバイオリンの経験や知識も、指示する上では大きな強みになったこと。背中を押してくれたあの子と個人的な縁が出来て、子供ながらに指揮者について語り合うなどした。色々なことが要因になって、最初は忌避していた指揮者としての、音楽家の道も目指してみようと思った。

 それからは以前のように熱心に練習した。教本を読み漁って、レッスン予定日以外でも先生に教わりに行ったり。

 でも、だんだん気付いてしまった。自分の指揮者としての才能は、凡人の域を越えられないということに。

 楽譜に囚われない動きも必要ということは、指針がないということ。自分の感覚だけが頼りになるのに、自分の表現力は、人に感動を与えるには脆弱だった。

 それを認めず、輝かしい自分だけの個性を模索し続けても、一向に輝きを放つ何かにはたどり着けない。

 そのまま、小学生の内では最後になるコンテストを迎えた。ここで成果を出せなければ、指揮者としての自分は終りになると、なんとなく察しがついていた。

 危機感という崖を背にして始まった大舞台の結果は、皮肉にも、俺に指揮者としての道を示してくれたあの子に、全てを持っていかれた。

 あの子に押されて、俺は崖の上から落とされたんだ。

カレーは既に出来上がってました(活動報告参照)

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