……噴火?それは〇〇のことです(後)
兄は自分は『シスコンでは無い』と言って嘲笑った。
至近距離で兄を見詰めてイリアは息を飲む。
兄は今、何と言ったのか。
イリアは兄の台詞を信じられなくて己の耳を疑う。
一方で(……ああ、そうなのかも)と思った。
優しくて甘やかしてくれて、でもちょっと厳しい兄は演技だったのだ。
シスコンを演じる程に、兄は――。
お兄さまはわたくしの事が本当はっ嫌いなんだっっ!!!
イリアは目の前が真っ暗になって、何も考えられなくて、やけに寒い、と思った。兄に顔を見られたくなくて、叫ぶと同時に兄を突き飛ばした。
「さっさとお風呂にお入りになってくださいっ!」
何を言って良いのか分からなかった。兄の言葉を肯定することも否定することも出来なかった。シスコンじゃ無いなら何?と訊ねて『嫌いだから』と答えられたら立ち直れないだろう。
立ち上がって尻餅をついている兄を見下ろす。この薄暗さなら、これだけ離れていれば、この青白い顔を見られる事は無いだろう。赤くなった鼻も潤んだ目元も震える体も。
兄には見せられ無い。
見せる資格など無い。
目の端に毛布から投げ出された兄の素足が映る。
薄く肉付いた逞しい太股。硬そうな脹ら脛。
それは、前世地味OLから見れば十分細マッチョ――苦手な対象で。
でも、このマッチョ至上主義の国から見れば非マッチョ――決して恋の対象では無い。
そう、イリアのせいで兄はマッチョに成れなかった。
イリアの我儘で兄からマッチョに成る道を奪ってしまった。
兄をこの国で生き難い体にしてしまった。
恨まれたって仕方無い。
嫌われるのは当たり前。
そんな事……お兄さまに「シスコンじゃ無い」と言われて気付くなんて!
自分はなんて馬鹿なんだろう。
今までお兄さまの(演技だとしても)優しさに甘え過ぎて……きっと長い事、お兄さまを傷つけてきたんだ!!
そんなわたくしが、泣く資格なんてある訳が無いっ!!!
「うぅっ……ごめんなさいっ、お兄さまっ!」
叫ぶなりイリアはリビングを飛び出した。
こちらも酷く青冷めて微動だにしない兄を残して――。
噴火したのは……イリアでした!




