噴火!……まで、10㎝!!!
北の侯爵家、応接室に戻ります!
すみません!応接室ではなくリビングでした!!12.14
イリア視点です。
暖炉の火は赤々と燃えて、兄の顔に影を射す。
向けられた視線はイリアを逃がしてはくれない。
ごくり、と生唾を飲み込んでイリアはどうしたものかと考える。
正直に認めるか、とぼけてみるか。
いや、兄は確信を持って問うている。
とぼけてみた所で後が怖いだけだ。
でも、正直に言ってみても……怖いのは変わらない。
兄はまるで、イリアが悪いといった様な視線で見詰めてくる。
いや。イリアは決して悪くない。
悪くない筈だ。
「お、お兄さま?わたくしは求婚された、だけ、ですわよ?」
冷静を装いたいのに上手くいかない。
兄がいけない、兄が。
こんな怖い瞳でイリアを見詰める兄が。
更に言えば、無言の兄は尚怖い。
何か言って欲しい。
イリアの被害者な台詞を肯定して欲しい。
「わたくしは、き、求婚を承けておりませんわ」
求婚してきたのは彼ら三人であってイリアではない。
イリアは求婚された側であってした側ではない。
イリアは彼ら三人を好きな訳ではない、マッチョだし。
イリアが彼らに「求婚するのは止めて」と言うのは無理がある。
人の心をイリアの我儘で変えられよう筈もない。
イリアのマッチョ嫌いが変えられないように。
だから、求婚されるのは仕方の無い事だ。
イリアは十六歳、結婚適齢期に入ったのだから。
だから。
何故、兄にここまで責められなければならないのか。
シスコンだから。
それは、知ってる……イリアもブラコンである。
兄に嫁が来たら、それはもう小姑いびりしちゃうくらい悔しいと思う。
でも、やっぱり応援する。
兄には幸せになってもらいたい。
いつかは、多分……イリアだって結婚するのだ。考えたくないけど。
マッチョの誰かと。マッチョでは無い誰かと。
それは、決して、兄では……無い。
「お兄さま、わたくしの何に怒ってらっしゃるの?」
イリアは少しだけ責める様に言った。言って、兄の顔を見れなくて俯いた。
未だ冷たい兄の指がイリアの頬を撫で上げる。此方を向けとばかりに緩慢に。
それでも、イリアは顔を上げられない。
怖いのか悔しいのか悲しいのか何なのか、分からない。
胸の内をモヤモヤとした仄暗いモノが渦巻いて、イリアを不安な気持ちにさせる。
「……イリア、私は怒っている訳では無い。ただ悲しかっただけだ。二人に求婚されたのは十日も前らしいじゃないか……。イリアは私に話してくれなかった」
兄は哀愁を帯びた声音で告げた。
イリアは慌てて顔を上げる。
「そ、それは恥ずかしくてっ」
顔を上げれば勿論、兄の瞳とぶつかる。
哀愁は演技か!
兄の瞳には間違いなく憤怒の炎が宿っていた……。
いつもありがとうございます。
お兄さまって、怒りっぽいですね!




