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鎮火!!……せず、飛び火っ!?

イリア視点です。



その日、お兄さまは帰宅せず翌朝早く帰って来た。

外は薄暗く室内も凍える程寒い。

兄の鼻は真っ赤になって吐く息は上気して白い、ブーツは膝下まで雪がついてる。

家人から受け取ったタオルで雪に湿った服を拭きながら、階段から降りて来たイリアに気付くと安心した様に微笑んだ。


「ただいま、イリア」


「お、おかえりなさい。お兄さま……昨夜はお戻りにならないので心配しましたわ」


玄関からの物音で目覚めたばかりのイリアはの寝巻きに厚手のショールを纏っていた。


「風邪をひいてしまうから部屋に戻りなさい」


傍に寄ったイリアの頬に触れた兄の指は凍る程に冷たかった。


「それは、わたくしの台詞ですわ。早く火に当たってください」


イリアは両手で兄の冷えた手を包み込む。家人が来て「暖炉に火を着けました」とリビングに移動するよう促した。イリアは生姜を入れた紅茶もお願いする。




二人でリビングに入ると室内は暗くまだまだ寒かった。暖炉の火に勢いがあるので暫く待てば良いだろう。ソファには座らず、暖炉の直ぐ前に陣取ると丸まった。紅茶を持って来た家人が蝋燭に明かりを灯そうとしたので、それを断り兄の濡れた上着を渡す。

別の家人が毛布を持って来る。イリアはそれを兄の肩に掛け膝の上にも置いた。


「お兄さま、冷えますからスラックスも脱いでください」

「イ、イリア……それは」

「今、湯を張らせてますから。体を悪くする前に少しでも暖めてください……ね?」


兄の肩に手を置けば震えている。王都からの道のりは大変だっただろうと思う。只でさえ雪が膝下まで積もっているのだから、兄は夜明け前に王都を出たに違いない。

イリアが困った様に眉根を寄せて息を吐いたので、兄も眉根を寄せて「分かったよ」と呟きベルトに手を掛けた。その間にイリアは家人に朝の仕事に戻るよう言い、湯が張ったら教えてくれるよう頼んだ。

ベルトがガチャンと音をたて、イリアは兄に振り向く。素足になったがちゃんと毛布は掛けているようだ。イリアは床に落ちたスラックスを拾い暖炉に寄せた椅子に掛けた。毛布をもう一枚兄の頭に落とす。


「イリア、こんなに必要ないよ」


毛布の下からくぐもった声が聞こえイリアは少し笑う。毛布を被って丸まっている兄が可愛かった。

イリアはしゃがんで兄の隣に座ると毛布の中の菫色の双眸と重なった。兄の声は疲れの為か掠れていた。


「イリア……も風邪をひくといけないから」


兄が一番上の毛布を広げて自分事、イリアの体を包んだ。

兄の香りが鼻孔を擽った。イリアはふふっと懐かしそうに微笑む。


「子供の頃、よく一緒に寝ましたね」

「ああ、お化けが怖いと私のベットに潜り込んで来たね」

「あれは、お母様がいけないんですわ。止めてと言ったのに何度も何度も!」

「イリアが怖がるから余計に怪談を聞かせたくなるんだよ」

「お母様酷いっ!いじめっ子!?」

「イリアが可愛いから苛めたくなる気持ち分かるよ」

「お兄さま!お母様の味方なの!?」


兄はハハハと笑いその瞳にはぱちぱちと燃える火を映している。その横顔は怖くなるくらい艶やかで美しく、イリアは何故かぞくりとした。





「……イリア、昨日。王子に会ったんたけど」


イリアの背中をぞぞぞと悪寒が走った。兄の瞳には相変わらず赤い火が映っているが、それと同時に焼き付くすような炎が宿っているようにも見えた。



「求婚……されたんだって?それも、三人に」


兄の掠れた声音は甘く艶があり、口角は笑みを作っているのにイリアを映した瞳は決して笑っておらず、それ故に恐ろしかった。

まさかイリアにスラックスを脱げと言われるとは思ってなかったお兄さま!

どきどきしたやら、普通の態度のイリアに悲しくなったやら。

ベツチョリしてて気持ち悪かったので、脱ぎました、はい。


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