落とされた爆弾の行方
王子は爆弾を落とし、それは背後で爆発!
イリア視点です。
「待ってくれっ!」
「待ってくださいっ!」
王子の後ろに無言で控えて居た二人が同時に叫び、喫驚した王子が振り返る。
ああ、やばい。とイリアは思った。
こいつらも爆弾を落とす気だ、と。
その前に、イリアが爆発してしまおうか。
先程耐えたモノを今ここで噴き出して、汚して、此の場を濁そうか。
だが、残念な事にカップの中身は既に無く、そんな度胸も元から無い。
では、一目散に逃げ出すか。
いや、逃げ出した所で意味は無いだろう。
既にイリアに求婚と告白をしているのだから、今必要なのは両親の許しだけだ。
イリアの混乱を余所に南の次男坊が王子の座るソファの横に跪く。王子ではなくイリアの両親に向かって。
「イリア……嬢との結婚の許可はお、私に頂きたい」
年長者に先を譲った王子の側近が追付いする。
「僕もっイリアさまをお慕いしております!」
「何っ!?」と王子が驚きに満ちた声を上げ、「まあまあまあ!」とお母様が歓喜の声を上げ、お父様が眉間の皺を深くする。
イリアは両手で顔を覆って項垂れた。
ああ、ばれた。
お父様とお母様にばれてしまった。
間違いなくお兄さまにもばれる……。
ああ!
本当に意味が分からない!!
後ろの二人だけじゃなく王子にまで求婚されるなんて!!!
わたくし何かした!?
数える程しか会ったことないのに。
ろくに喋ったこともないのに。
マッチョなのに……。
うう。
何故、お父様とお母様に言っちゃうの?
隠す気もないの?
振られるつもりもないの?
仮にこの中の誰かと結婚するとしても後の二人は振られるのに。
振られない自信があるの?
わたくしマッチョ嫌いなのよ?
そ、そりゃあ、ダンスして求婚されて告白されて、どきどきしたけど。
男の人に免疫ないの。どきどきするのは当たり前。
マッチョでも……どきどきするのは、可笑しくない、うん。可笑しくない。
イリアは指の隙間からお父様の様子を窺う。お母様?無視無視!
お父様!認めないで!!
お父様は長い息を吐いて、渋面に寂しそうな笑みを貼り付ける。
「私には……誰も選べないよ。選ぶのはイリアだから、ね」
選ぶのはイリア。でも結婚には親の許可が必要。よっぽど悪い人で無ければ大抵は当人達の望むままだ。イリアの父は誰にも肩入れしなかった。王子でも南の侯爵家の青年でも公爵家の少年でも誰でも良かった。
イリアが好きになった相手ならば。
イリアが幸せになれるのであれば。
勿論、寂しいのは変わりないので、お嫁に行くのはまだまだ先の話だとは思っているが。
「どなたも反対したりしませんわ!多いに口説いてあげてくださいな!」
お母様がイリアの肩を抱いて顔を上げさせる。
「あら、いやだ、この子ったら。ビックリしたのね。こんな素敵な殿方、それも三人に求婚されたら嬉過ぎて茫然としてしまうわよねぇ」
おほほ、とお母様が笑う。
「お嬢さんに選んで頂けるよう頑張ります」と王子が微笑む。
俺を選べ、と言うように南の次男坊がイリアわわ睨む。
「ぼ、僕も頑張りますねっ」と王子の側近が照れながら言う。
やれやれ、とお父様が首を振る。
イリアは。
イリアはガトーショコラを口に含んだ。
「うう……苦い」




