冬将軍は去り春の女神は告げる
イリア視点です。
改めて言おう。
この国は山の上にあるが故に下界から切り離されて、独自の恋愛視観を持った『筋肉至上主義の国』であると!
騎士団団長であるにも拘わらず、マッチョでは無いお兄さま。
……憐れっ!
二十七歳なのに未だに独身!!
(それもこれもマッチョ嫌いのわたくしのせいだが……マッチョのくせにお兄さまと同年の宰相子息が独身なのは自業自得だ、ぷぷ)
お兄さまには結婚して幸せになって欲しい。
お兄さまのタイプの女性とか知らないけれど、この、異国の美人、アギフは如何かしら!?
美しいお兄さまの横に美しいお義姉さま。
う~ん、眼福眼福。
わたくしも幸せで一石二鳥!!
そう、わたくしはお兄さまの結婚相手にアギフを押そうと思ったのだ。
でも、そうは上手くいかないみたい。
アギフは旅を続けるの。海の国氷の帝国、交流の無い西側へ……いつか帰るのは故郷。
同じ氏族の人と結婚して故郷に身を落ち着けるだろう、とアギフは言う。
それが何時の事か、無事帰れるのかは誰にも分からないけれど。
そして、折角友達になれたけれど……雪が溶けてアギフ達が下山したら、多分、わたくし達はもう二度と会う事は無い。
地球みたいに電車も飛行機も無い世界なのだ。電話は勿論、手紙だって届くのに何日……いや何ヵ月かかるか分からないのだ。
「私、同族以外で初めて友達が出来た」とアギフは笑ってくれた。
わたくしもアギフは初めての異国の友達だ。
まだこの世界に魔法なんて便利なモノがあったら、わたくし達の友情はおばあちゃんになるまで続いていたかもしれない。テレポートで行ったり来たり、なんて……。
魔法は怖い、と宣いながら、便利なモノが欲しいと願う。
つくづく、わたくしという人間は……。
イリアはその身が空いている時、何度もアギフ達の元へ足を運んだ。
アギフもサーデクもチョコレートを喜んでくれたから、それをお土産に。
アギフやサーデクが北の帝国を旅した時の事を話してくれる。
イリアもアギフに急かされて、この国に伝わる不思議な話を語る。
時間は有限では無く瞬く間に過ぎた。
「忘れないわ」「いつか遊びに行く」「また踊りに来るよ」
『いつか』『きっと』と意味を為さない口上だと分かってはいたが、そんな陳腐な台詞しか出て来ない己が怨めしい。
けれど、決して泣きたくはないのだ。
イリアを思い出してくれる時、それは泣き顔ではなくて。
笑っている方が良いに決まっている。
自分の中で最高の笑顔でアギフを見送りたいのだ。
その日、イリアは死別以外の初めての別れを経験した。
冬将軍が去り春の女神が穏やかにやって来た、そんな日だった。
そうです、アギフをお兄さまな宛がおうとイリア(も作者も)思ってました!
サーデクもイリアの相手(ショタ枠)に!なんて、感想をくれた方と言ってた時もありました……。
思った通りにいかないモノですね~。




