独身貴族二人の恋愛談義2
お兄さまの宰相子息への言動がヒドイ!
騎士団団長は頭を抱えていた。
長年の付き合いのある悪友――宰相子息が可哀想だとか、上手い解決方法が出なくて困るとかいう理由では無くて。呆れというか怒りというか、いや怒りを通り越してアホさ加減にもう何も考えたくない。
多くの女性と浮き名を流した宰相子息が一周回って「恋がどうした」とか十代の少年みたいな事を言っているのだ。いや、これは呆れとか怒りとかじゃなくて、気持ち悪い。
もう一度言おう。
気持ちが悪い。
初恋も未だと言うのなら理解も出来る。男所帯で生きてきたから女には免疫がなくて、というのも分かる。
だが、宰相子息は違う。
社交界に出る前から浮き名を流していた。(見習い)騎士仲間に紹介したりもしていた。不倫は無かった(筈だ)が二股はあった。多くの女性に好かれていた。
そんな男が。
そんな男が「どうすれば恋に落ちる事が出来る?」などとぼやくなんて。
本当に気持ちが悪い。
明日は雪じゃ無くて猛吹雪に違いない。
騎士団団長が頭を抱えている内に、少年従者は彼のお腹を押す。自分ではない他の何かに縋りたいのか、彼は少年従者の押す力に流されて後ろ向きで歩く。トンと背中が柵に寄り掛かり少年従者は彼から手を離した。
「俺達二人とも結婚出来ない男になってしまうな」
宰相子息は弱っているようで、自嘲して俯く。いつもの揶揄いも出て来ない。
「お前と一緒にするな。俺には心に誓った女性がいるんだから」
宰相子息は騎士団団長の言葉に喫驚して、がばりっと頭を振り上げた。
「はっ初耳なんだけどっ!?」
「言ってないからな」
「言えよ!」
「誰に言ってもお前にだけは言いたくないな」
「俺達、悪友だろう?」
「悪友だから、だろ?」
暫し見つめ合ってしまった。気不味げに視線を反らして宰相子息は三度目の溜め息を吐いた。
「そうか、君も結婚するのか」
「結婚出来るかどうかは彼女次第だ」
「そうだねぇ。……俺が女だったら結婚すると思うよ」
「俺はお前が女でも結婚したく無いんだが」
マッチョで無い事を抜かせば結婚相手としては申し分無いと誉めたのにと、宰相子息は眉根を寄せて睨む。
「あーそう。無理無理。君は結婚出来ないよ。他の男に盗られちゃうんだな、愛しの――」
「他の?男?――そうか、例えば、誰だ?」
騎士団団長は宰相子息の台詞をぶった斬って笑う。
勿論、目は笑ってなどいない。
声も地の底から聞こえて来たように深く低い。
「いやいやいや、そんな度胸のある男は居ないね。結婚するのは君さっ」
対して宰相子息は本気で愉快そうに笑うしかなかった。
少年従者が首を傾げながら笑い合う大人二人を見ていた。
第2話でマッチョの国は建国100年程まあるのですが
150年程に変更しました。
物語上はあまり関係ありません。




