お姫さまとお茶会1
本日2話目になります。
保存に失敗したかと思いましたが、なぜか保存されていて安堵した作品です。これ以降、こまめに保存するようになりました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
山の上の国は平和な国である。戦争をしたこともないし、盗賊に襲われたこともない。騎士達は訓練を欠かさないが実戦経験はない。 平和なこと自体は望むべきよいモノだか、いざという時に動けないようでは困る。平和の象徴、といえば聞こえは良いが些か懸念材料と思えるモノ、王城の裏門と正門だ。詰まるところ、襲われたことがないので、一度も閉じたことがないのだ。年に一度あるかないかの訓練作業の様子を見たことがあるが、作業順序に手間どってモタモタしていた。途中で先輩騎士に確認しに行き怒鳴られていた。
そんな様子を見てしまうと『もしも』の場合を考えて怖くなる。皆は何も考えてないのだろうか。今、変えていく途中なのだろうか。騎士団団長たる兄にそれとなく聞いてみるべきか……。いざとなれば火事場の馬鹿力でも出るのだろうか。わたくしは何をすれば良いのか。何ができるのか。
勝手知ったる他人の家、王宮を誰の案内もなく歩いて行く。たまにすれ違うメイドや家人、騎士と目礼を交わしながら行くと、目当ての部屋の前まで来た。トントンと、ノックをすれば「は~い!どうぞ」と可愛らしい返事が聞こえてきた。せめてわたくしが名乗ってから、どうぞ、と言って欲しいと思う。危機感が足りない。
「あー、いらっしゃい!イリア」
「ご機嫌いかが?」と言いながら、姫がわたくしの両腕をバシバシと叩いてくる。叩かれて痛いから(ご機嫌なんか)ちっとも良くないけど「お陰様で」と答えてあげる。勿論、苦虫を踏み潰したような笑顔で言うのを忘れない。この笑顔を作るのはちょっと大変だ。
姫は面白そうに豪快に笑った。可愛い声なのに・・・。黙っていれば可憐なのに・・・。
姫は王子と同じ金髪碧眼の美少女。
風に揺れる金色の稲穂のような豊かな長い髪を、一括りに高く結わえている。
碧い瞳は明るく瞬いていて、薔薇の蕾のような唇が白い肌の上でぷっくりと震えている。
シンプルなドレスから出る手足はすらーとしていて、細身で長身だが、残念ながらお胸が寂しい・・・。本人はいたって気にしていないようだから、敢えて触れまい。
普段であれば、趣味で、軍服を纏い騎士達に混ざって訓練に勤しむ活発な十七歳だ。
お茶会は滅多に行われない。姫が外で動くのが好きなので、此方から誘わないとお茶会はなかなか開かれない。まぁ、お茶会なんて気取った言い方をしているが、やってることは女子高生と変わらない。飲んで食べてしゃべって騒ぐだけだ。
滅多にないお茶会の、これまた滅多にない姫主宰のお茶会が本日の、それである。
「姫さまぁ。ご結婚おめでとうございますぅ!」
「おめでとうございますっ!!とっても羨ましいですっ!」
「おめでと~姫さま~。どこの人なの~?」
そう。姫の婚約報告お茶会なのだ。
いつものメンバーが上から、メイド、追っかけ少女、伯爵令嬢の順で、口々に祝いの言葉を口にする。勿論わたくしもそれに倣う。
姫の笑顔は幸せそうで、一人だけこの世の春を満喫しているようだ。
あまり聞きたくないが姫ののろけ話が始まる・・・。
相手は正騎士で平民。訓練でよく話すようになったらしい。王都に住んでいて正門の番にいることが多い・・・じゃあ、わたくしは会ったことないかも。わたくしは裏門から続く北の街に住んでいるし、西側にある訓練所から王城に行く時は裏門の方が近い。
彼の年は姫より五つ上、つまり兄王子の一つ下。背が高くて、ガッチリしてて、茶髪で顎髭で、一重の茶色い目で、腕が太くてガッチリしてて、お腹が割れてて、日焼けしてて、肩甲骨の筋肉がガッチリしてて、声が重低音で、姫を持ちあげてーの高ーい高ーいのぐるぐる回すーのしてくれて、ちょっと口下手だけど、太股もガッチリしてて……。
つまり、マッチョ!
マッチョなんだよっ!!
のろけが長くなったけどマッチョ以外の何者でもないのだっ!!!
読んでくださってありがとうございます♪
主人公イリア以外の名前は出さない予定てす。
町を街に訂正しました。2016.2.22