16歳は恋愛守備範囲ではないけれど……と、宰相子息1
宰相子息視点です!
宰相子息は二十七歳になる。
相変わらず母と姉達が結婚結婚五月蝿い。
女達に結婚攻撃を受ける息子を憐れに思ってか、放任していた父も最近は煩くなってきた。さっさと跡継ぎを作れと無言の圧力を掛けてくる。
反論はしない。
母と姉達には何も通じないだろう。感情的になってもっと五月蝿くなるだけだ。
未来の宰相であり侯爵の妻に相応しい女。それだけなら政略結婚で良いのだが、この国ではなかなか良い反応を頂けない。父も母も恋愛結婚だった。姉達も恋愛結婚だった。
特に世の女性は恋愛結婚に憧れている。多くの浮き名を流す宰相子息も結婚する時は恋愛結婚だと思っていた。
だが、いい加減不味いなと思う。
家族に言われるまでもない。
自分が一番結婚を焦り始めていた。
浮き名を流し過ぎたのだ。
真面目な女性は宰相子息を結婚相手に見ない。近付いて来ない。
自分の恋愛守備範囲の女性は大抵付き合ったか、既に結婚している。
宰相で侯爵の妻に相応しく、かつ、恋愛結婚……詰んでいた。
宰相子息は新年五日目の宴で悪友を発見した。隣には美しく成長した彼の妹がいた。
妹は王子とダンスをしている。
「新年おめでとう。誰か良い女性は居たかい?」
挨拶もそこそこに、妹と王子を絶え間なく見詰める悪友に声を掛けた。
射殺すような視線を投げられたが、宰相子息は笑顔でするりと受け流す。
「おめでとう。相変わらずだな、貴様は」
殺意を滲ませたような低い声はちっともめでたくない。
宰相子息に向けられた視線は一瞬だけで既に妹と王子に戻っている。
宰相子息はその美しい横顔をちらりと窺った。
悪友も宰相子息と同じ二十七歳。
浮き名を流す宰相子息と違って、こちらは一切女の影がない。
二人とも独身。
悪友も家族に結婚を催促されているのだろうか。
相談してみようか。
相談にのってくれるだろうか。
冷たくあしらわれる気もしなくはない。
だが、彼以外にこの焦りを分かってくれる者がいるだろうか。
否いない。
「相談にのって欲しい」
悪友は愕然とした面持ちで宰相子息を見た。口を開いたまま暫く呆然としていた。
「……止めろ。吹雪でも起こすつもりか」
ややあって悪友が口にした言葉は、成る程、彼が宰相子息をどう見ているのか分かる酷い物言いだった。
宰相子息は自分でも驚く程傷付いていて乾いた笑いしか出てこない。
「……今か?」
相談が本気らしいと、その笑いから読み取った悪友は努めて穏やかに言った。
宰相子息はゆるゆると首を振る。
「いや、急ぎではないから、君の暇な時にでも」
「そうか。長くなるのか?生憎と私は今仕事中だから……」
真面目な悪友は思案顔になり予定を確認しているようだ。
仕事中でも妹が来たらサボっていただろう、と揶揄いたくなったが、気の良い悪友の優しさ……?に感謝して今回は見過ごす事にする。
「何か……相談にのりたく無くなってきたような」
「!?――凄く感謝してるよっ!!今夜はずっと仕事かい?ああ、そう。じゃあ、明日は?――駄目?八日の夜?うんうん……大丈夫。本当に助かる!」
「……止めろ。猛吹雪になる」
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