恋敵が一人だけじゃなかったことに気付いた、側近3
引続き側近視点です!
イリアさまが纏う白いマント……イリアさまが持参した物かと思ったが、よく見れば留め具には近衛隊の紋章が刻まれているし、裾には緑色の蔦模様が・・・。
イリアさまの兄上は近衛隊員ではない。僕も世話になった騎士団団長だ。つまり、この白いマントは身内から借りた物ではない、という事で……何処ぞの男が貸した、という事で……。つまり、その男は……イリアさまの事……す。
そんな短絡的に考えてはいけないっ。
寒そうな格好をした女性を憐れんで親切にもマントを貸してくださった紳士な近衛隊員がいた、だけだ。
そうだ。ただそれだけだ。
「し、親切な近衛隊士がいたんですねっ」
内心狼狽えながら、僕の考えを肯定して欲しくて、イリアさまの肩が震えたのは見なかった事にした。
「親切?……やつが?」
イリアさまは小さい声で呟いた様だったけど、僕の耳には聞こえてしまった。
(ヤツガ?ヤツガって何だろう……ヤツガさん?)
「あ、お知り合いなんですか?」
「しっ知り合いっ!?まっまさかぁ!全く知らない方ですわぁ!!」
一つだけ分かった事がある。
イリアさまはその近衛隊員を知っている、という事だ。
イリアさまは僕の目から見ても明らかに狼狽していた。その近衛隊員が知り合いという事を知られたくないようだった。
実は、その近衛隊員は恋人で……万人に秘密にしておきたいのか。若しくは……僕の楽観的希望として、僕にだけ、知られたくないのか……。
イリアさまのお顔は真っ赤に染まっていて僕には分からない。後者なら嬉しいのに。
恋人……なのだろうか?
恋人じゃなくてもイリアさまの好きな人だとしたら……。
寒い。
冬だから、ではなくて。
寒くて死ねる、物理的にではなくて精神的に。
「恋人……なんですか?」
聞き慣れた自分の声なのに地の底から這い出たような暗い声だと思った。
聞きたくなくて、知りたくなくて、恐ろしさからイリアさまの顔が見れない。
僕の血の気を失った青い顔を見られたくない。きっと青い以上に恐ろしい表情をしている。
「恋人じゃないわっ。そ、そもそも知らない人、ですわ」
その答えに少しだけ呼吸が落ち着く。知らない人、という明らかな嘘は耳の中を通り抜けて行った。
さらに呼吸を落ち着かせたくて深呼吸する。
でも、まだイリアさまの顔は見れない。
「じゃあ、イリアさまの……す、」
聞きたくない。
「好きな人ですか?」
イリアさまの好きな人なのか?
その人もイリアさまを好きなんだ。
親切な近衛隊員という希望は捨てよう。
殿下も僕もその近衛隊員も、その他にも……イリアさまを好きな人はきっといる。
どうやら、僕には恋敵が沢山いるようです。
次はイリア視点になります!




