恋敵が一人だけじゃなかったことに気付いた、側近2
引続き側近視点です!
「ああ……とっても美味しいですわ」
イリアさまが僕の淹れた紅茶を飲んでほっと、一息……美味しいと言った。
僕は嬉しくて一笑したが恥ずかしかったのでごくごくと紅茶を飲む。
「こんな美味しい紅茶を毎日飲める殿下が羨ましいですわ」
イリアさまは本当に嬉しい事を言ってくれる。求婚されているのだろうか……毎日僕の作った味噌汁が飲みたいわ、と。
僕は真っ赤になってカップを傾ける。もう中身は空だけど。
「イ、イリアさまにでしたら毎日でも紅茶を淹れたいですっ」
ありがとうございます、と微笑んだイリアさまはとっても綺麗で、僕は今夜イリアさまに会えた偶然……いえ、運命に喜んだ。
僕とイリアさまは中庭にある四阿で向かい合って座っている。
座るのも紅茶を飲むのも従者の身としては断ったのだが、一人で飲むのも味気ないし、僕が寒くて顔を赤くしたのだと勘違いしているイリアさまは、体を温める為にも紅茶を一緒に飲むべしと頑として譲らなかった。
誰かに見つかって文句を言われたら、王子の従者ではなく公爵令息としてココにいると言い訳すれば良いのよ、と朗らかな笑顔で言われたのでそれに乗る事にした。まだ成人していない為今夜の宴に参加出来ない僕だけど、他人の年齢をいちいち覚えている物好きな人もいないだろうと無理矢理納得する。
こんな薄暗い中庭に来るような人は滅多にいないだろうから見つかる危険も少ないと無理矢理納得する。
殿下とイリアさまのお茶会では僕は従者として居たので、こういう機会は中々無い。
僕とイリアさまだけの初めてのお茶会は僕にとって折角のチャンスなのに、ただ紅茶を淹れて座って飲んでいるだけだった。
殿下みたいに可愛いとか綺麗とか気の利いた事を言えれば良いのだけれども、二人だけという事実に少し舞い上がっているみたいで、いつも以上に緊張してしまっている。王宮で世間話をする時みたいに言葉がすらすら出て来ない。
理由は分かっている。
夜なのと、久し振りなのと、着飾ったイリアさまが美し過ぎるからだ。
先程からイリアさまの目を見る事が出来ないし、忙しなく目をキョロキョロと動かしてしまう。
僕の紅茶は一体どれくらいの量入っているんだと言いたいくらい、カップは口元から離れない。
落ち着きの無い僕に対してイリアさまは優雅だった。
暫く見惚れていた僕だったが、そこで驚愕の事実に気付いてしまう!!
「イ、イリアさま?それ……近衛隊の……マント?」
イリアさまの肩がピクリと震えて、口元へ向かっていたカップがピタリと止まった。
遅筆で短い話を読んでくださって、いつもありがとうございます!!