恋敵が一人だけじゃなかったことに気付いた、側近1
王子の従兄弟で側近(今従者)視点です!
この国では、成人は十八歳からだ。問題は新年五日目の宴に、結婚適齢期の、男は十八歳、女は十六歳からしか出席出来ない事だ。
僕はまだ十七歳なので、この年の新年の宴に出席出来なかった。
若干の不公平に口を尖らせも、殿下の従者として会場を彷徨けるのは有り難かった。
何故なら、十六歳になった想い人・イリアさまが参加されるからだ。
殿下と踊り終えたイリアさまがバルコニーの向こうへと消えた。
直ぐに追い掛けたいのだがそれも儘ならない。王子の従者としての仕事をこなす。
やっと時間を見つけ、外は寒いだろうとお茶のセットを手に件のバルコニーに出たのだが……居ない。
やはり外は寒かったのだろう、広間に戻ったに違いないと踵を返した僕の耳に、男女の諍い声が聞こえて来た。嫌な予感がして僕は声の方を見下ろした。
王宮の中庭にはひっそりと明かりが灯されているだけで濃い闇が辺りを覆っていた。太陽の下であれば美しい花を咲かせていたであろう植木は今では眠りについてしまっている。
ひらりと白いドレスの裾が舞う……のが一瞬だけ見えた。
イリアさまのドレス姿が思い出されて、僕は慌てて階下へ走り出した。
「イッイリアさまっ!!」
何処だっただろうか、この辺りだっただろうか……闇の中、昼間と違う中庭の景色は僕の足をさ迷わせる。少し離れた所に四阿の屋根が見えた気がしたが。
目の端で、白い布が揺れた。
振り返ると、白いドレスに白いマントを羽織ったイリアさまが立っていた。
月明かりを浴びて光り輝く銀の髪が風に舞う。
闇の様な濃い紫の瞳が僕を映している。
全身を包む白い布がその存在を際立たせている。
まるで夜を支配する妖精の女王の様な、人外の美しさだ。
薔薇の様に赤い唇が言葉を紡ぎ、久し振りに聞くイリアさまの凛とした声音に心臓が高鳴った。
「今、わたくしをお呼びになりまして?」
再びイリアさまが口を開いて頭をこてん、と傾げる。
僕は勿論、そんなイリアさまに見惚れていて聞いていなかった。
「ねえ、聞いてらっしゃるの?」
「えっ!?はいっ……ええっと?」
僕の顔は赤くなっている筈だが、こんな暗い場所だからイリアさまにバレてないことが救いだな、と思う。
「ええっと?じゃなくて。わたくしに何かご用かしら?真っ赤になるくらい寒いなら広間に戻った方が宜しいんじゃなくて?」
バレてました。心配されました。寒いどころか恥ずかしさに体は熱くなってきました。
「僕は寒くないですっ。イリアさまは大丈夫ですか?もし宜しかったら紅茶を持って来たので……」
「まあっ!貴方の淹れた紅茶は久し振りですわ!喜んで!!」
イリアさまが笑ってくれた。
夜なのに花が咲いた気がした。




