「好き」と告げなきゃ埒が明かないことに気付いた、正騎士2
正騎士視点……?
『好き』でも無い女に『嫁に来い』などと言う男がいるだろうか。
イリアの問いに、是と答えながら呆れ混じりに溜め息をつく。
「う、嘘仰らないで!今までそんな素振り無かったじゃないのっ!!」
イリアの頭の中では、過ぎ去りしケンカし合った日々が去就しているようで、照れに寄るモノから怒りに寄るモノへと、頬を染める色の意味を変化させていた。南の次男坊を真っ直ぐにただ見つめていた瞳は今では鋭く睨んでいるし、アワアワしていた唇はきつく結ばれて、モジモジしていた両腕は胸の下で固く組まれていた。
イリアは揶揄うのは止めてくれ、とばかりに南の次男坊の求婚を拒否する空気を纏い出す。
南の次男坊がイリアの事を『好き』だなんて、冗談以外の何物でも無い、筈……。政略結婚でないのなら尚更だ、と思う。であれば、コレはケンカを始めたい!という意志表示だろうか。そんなケンカの始め方など過去なかったが。
今にも文句を言い出しそうなイリアに南の次男坊の眉根は寄る。仮にも『好き』だという理由で求婚した相手にする態度では無いだろうと。況してや、自分で照れながら聞いて来たのに、そうだと答えた後、態度が変わるのはおかしいだろう。イリアとのケンカは好きだが、この場では頂けない。
南の次男坊が一歩近付いてもイリアは退かなかった。後退ったら負けだと言わんばかりに。
「そういう素振りって……こういうの、とかか?」
言って、息も掛かる程に詰め寄りイリアの顎を、くいっと持ち上げた。残った片方の手は腰を抱き、喫驚したイリアが大股に退がってバルコニーの柵にぶつかった。
イリアの息を飲む音が聞こえ、柔らかい筈の体はピシリと固まった。
目は見開かれて、既に睨んではいないが南の次男坊の赤い瞳から逸らされる事もなかった。
先程退かなかった様に、逸らしたら負けという事なのだろう。
イリアの腕だけが、イリアと南の次男坊の間に壁を作っていて明確な拒絶を表していた。
イリアは眉根を寄せた。赤く染まるどころか、若干の嫌悪の表情に南の次男坊は内心狼狽えた。遣り過ぎたかと顔には出さずに焦る。だけど今更動く事も出来ない。
己のマント越しに感じる彼女の抱き温もり。
鼻梁を擽る甘い香り。
顎を掴んだ指をほんの少しずらせば、そのぷっくりとした桃色の唇に触れる事が出来そうなくらい近い。
数年前には小さいと残念に思っていた胸も大きく成長して、彼女の腕越しに圧力を掛けてくる。
腕という壁があって良かったと思う。
なかったら、正直理性を保ってられるか分からないし。
激しく鳴り響く己の心臓が彼女に聞こえていたら、無表情を装おっている分、格好が着かない。
視線でケンカ?をしていた二人だが、終にイリアが折れた。
プイッと顔を反らし、拗ねた様に頬を少しだけそめながらポツリと言った。
「いい加減……離してくださらない?」
名残惜しくもあり安堵する自分もいた。しかし、やはり少し勿体ないので、南の次男坊は最後に自分の欲望を叶える為、顎から離しかけた指で彼女の唇をなぞった。
イリアが肩をワナワナと震わせて怒鳴る前に、飛ぶように後ろに退いた。
「冗談でも何でもないからな。ちゃんと考えておけよ」
バルコニーから広間に一目散に戻った南の次男坊の耳にはイリアが何か叫んでいる声が聞こえたが内容までは分からなかった
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