「好き」と告げなきゃ埒が明かないことに気付いた、正騎士1
南の次男坊視点です。
新年五日目の宴。
南の次男坊にとって、例年なら面倒臭い事この上無いパーティーではあるが、今年は意気揚々と参加していた。近付いて来る女どもを気怠げに追い払いながら、冷たい視線は広間の中央で踊る一組の男女に注がれていた。
護衛対象の王子と北の侯爵令嬢だ。
本来であれば、南の次男坊は酒を煽ってなどいられない。王子の護衛として着かず離れず周りに目を光らせている筈だ。酒なんて以っての他だ。ただ他の護衛五人が全員既婚者なので、独身の彼の為に休日にしてくれたのだ。この(イリア曰く婚活)パーティーで嫁を見つけて来い!と送り出してくれた。
正直、有り難かった。
近衛隊配属一年目の新年の宴なので慣れない面もあるだろうし。
何より、北の侯爵令嬢――イリアが十六歳になって初めて迎えるパーティーだったから。
先輩護衛に言われなくても、良く分かっている。
昨年まで苦痛にも近いこのパーティーに参加したのはイリアが居るからだ。
彼女に求婚する、その為だけに今夜は来たのだ。
先程から視界に映る不愉快な光景。
王子と踊る、頬を赤く染めた想い人。
嫌々ながら踊り始めた様子ではあったのに、今は王子の焦がれるような視線に当てられてか、リンゴのようになって俯きながら踊っている。
リンゴがどんどん熟れてゆくに従って、南の次男坊は苛立ち怒気を深めてゆく。じわじわと不穏な空気が彼から漏れだし、話し掛ける勇者は現れない。
踊り終わったイリアの後を直ぐに追い掛けたい衝動に駆られるが、給士から水を貰い気を落ち着かせてから彼女の後を追うことにする。このまま行ったらケンカだけに終わりそうな気がして止まない。
「嫁に来い」
ちょっとした言い合いの後、意を決して求婚すれば、イリアは怪訝な表情で「政略結婚?」かと問う。余りの鈍感振りに『そんな訳あるかっ!!』と怒鳴ってやりたくなったが、求婚直後に怒鳴るのもどうかと思い、努めて心を落ち着かさせ政略結婚の必要性を逆に尋ねた。
イリアは王子に向けてしたように、その頬を段々と赤く染めて行った。
その意味に考えが至ったようだが、頭を振ってその考えを否定したいようだ。
「え、と……。もしかして……あなた」
イリアがその可愛いらしい唇をアワアワと開く。視線もキョロキョロして、両手の指をモジモジと擦り合わせている。
「わたくしのこと……す、好き、な……の?」
イリアは濃い紫の瞳を一瞬伏せて、それから覚悟を決めると南の次男坊を真っ直ぐに見た。
相変わらず赤く染まった頬に此方まで釣られそうになるが堪え、その視線を受け止めた。
「そうなるな」




