兄と書いて非マッチョと読む1
だんだん慣れてきました♪
よろしくお願いします!!
筋肉の国の男はほぼ全員、騎士である。
職業としての騎士、つまり正騎士。
と、普段は役人だったり、農民だったり、商人だったりする兼業騎士。
兼業騎士は国に急あった時のみ駆け付ける。騎士なんて大層な物ではない。全ての兵士に|馬<シュヴァル>が行き渡る程は居ない。騎乗訓練はするものの実際は歩兵でしかない。
ただ、近隣諸国に格好つけて自らを『騎士』と呼んでいるのだ。
見栄である。
ーーガチャリ。
と、腰に佩いた剣がベルトにでもぶつかったような金属音がした。
わたくしの肩を抱く 王子の腕が強張った。
正騎士が即座に上着の袖に手を通す。
側近は笑顔を消して従者としての顔に戻る。
無駄に色気を垂れ流す胸のボタンを宰相子息は留めた。
凜とした声。
慇懃な言葉遣いなのに、どこか冷然に感じられた。
「一体何をなさっているのか、お聞かせ願えますか?ーー殿下」
王子は憐れな子羊に選ばれたようだ。まあ、この四人の中で上位なのだから仕方あるまい。
わたくしから離れた王子を見やれば、まるで油を注し忘れたブリキ人形のようにぎこちない動きで振り返った。
「や、やあ、団長。変わりないか」
ありません、と、頭を振るものの、冷笑を崩さない団長と呼ばれた男。
「きゅ休憩をしていたんだ!今日は暑いからなっ!!」
対して王子の態度と入ったら・・・周章狼狽としてみっともない。
「そうですね。暑いので熱中症に気を付けねばなりませんね。殿下方が休憩を要するのも理解かります。ーーですが」
ゆっくりと確認するように言って一区切りつけた。そして、声音も表情も変えて……。
「兼業騎士は各々に空いた時間を見つけて、身体を鍛えに来ているのです。殿下の都合で休憩を与えられては彼らの訓練になりません」
滔々と告げて、彼は王子ら四人を一瞥した。
「ま、全くその通りだな。面目ない」
王子が謝意を見せると他の三人もそれに習った。
兼業騎士達は訓練を再開させていて、ちらほらと此方を見ている者もいる。
わたくしは側近が淹れ直してくれた紅茶を飲み干した。
「申し訳ございません、お兄様。わたくしが訓練所に寄ったから、彼らも休憩を欲してしまったのでしょう。」
「イリア・・・」
お兄様は肩を竦めて困った顔をして見せた。
藤色の瞳を優しげに細めた美貌の青年こそ、わたくしの敬愛するお兄様。
わたくしより十一上の二十七歳。
団長と呼ばれた通り、騎士団の団長職を拝命している。わたくしの自慢の兄だ。
髪は銀に菫色を混ぜたような色合いで、長く伸ばしたそれを結いもせず風にふわりと棚引かせている。
正騎士のくせにあまり焼けてない肌は白く、薄紅の唇はまるで花のようだ。男だというのに嫉妬してしまう美しさだ。
身長179センチ。体重は、多分70キロ未満。
何故知っているのかと問われれば、わたくしが計ったから!としか言えない。でも体重計がないから、これは予想と希望。
そして。
わたくしは声を大にして言いたいっ!
お兄様はマッチョではないっっ!!
ーーのだと。
非マッチョが登場しました。
お読みいただいてありがとうございました!!
誤字等修正しました2016・6・1