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イリア16歳、社交会デビュー……とうとう、この日が来てしまった

兄視点です。

イリアの兄、北の侯爵令息が騎士団団長職を拝命して初めての新年五日目の宴。

とはいえ、サボり魔の前団長のお陰で警備の指示など慣れたもの。

この平和な国では、これといった問題も起こらずパーティーは恙無く進行していく。

王宮の広間には音楽と年若い貴族と招待された平民で溢れている。

イリア曰く、『婚活パーティー』なのだそうだ。

勿論、夫婦や恋人と見られる男女もいるのだが、そういう人達は落ち着いていて笑顔に余裕がある。一方、一人身と思われる男女はひっきりなしにキョロキョロして、多くの人と談笑したり踊ったりと忙しない。

何より、その瞳が獲物を狙うかの様にギラギラしている。

イリアの兄もそのような視線な晒されて辟易していた。

イリアの兄は非マッチョで、この国で持て囃されるタイプ『マッチョ』ではない。しかし美形!団長!!次期侯爵!!!と三拍子揃っているせいか、その妻の座を狙っている女性も少なからず居た。ガードの固いイリアの兄であったが、この日ばかりは団長として公の場に姿を現さねばならなかった。それでも今は、今だけは、仕事中という壁が己を守ってくれるのが有り難かった。


何度目かのラッパが鳴り、貴族の来場を告げる。

待ちに待った……そして、来ないで欲しかった来場者だ。


「……イリア」


ぽつりと漏らしてしまった団長の言葉を耳にした者はいない。

彼は直ぐ様、口を閉じ表情を引き締め直す。

それでも視線だけは逸らすことが出来ない。

先程まで女性の視線に辟易していたのに、今は自分が、と心の内で自嘲する。



イリア……愛する妹は、まるで妖精、いやそれらの女王と言うべき美しさであった。

昨夜までツインテールにしていた銀髪は下ろされ腰の辺りでふわふわと揺れている。一部を掬った髪を頂でくるくる纏めて白や桃色、イリアの瞳の色と同じ紫の生花で飾っている。

薄化粧なのは遠くからでも分かる。いつもと違うのは頬に紅が刺してあるのと唇に紅が引いてある所か。ぷっくりとした唇は(つや)やかでその瑞々しい色は(紅といっても真っ赤とかではなく、若々しい薄桃色)今すぐ齧り付きたくなる果実のようだ。

白いドレスは襟刳りが大きく開いているものの、髪と同じように色とりどりの生花で飾られていて下品な印象は受けない。腰で細く締められ長く伸びた裾が花びらのようにふわ~と広がり、歩く度に髪に合わせてふわふわと揺れる。

触れてはいけない妖精女王のように儚げで美しい女性に成長したイリアは、部下を始めとした多くの男供の視線を集めていてた。出来ることなら、誰の目にも触れさせたくない。



落ち着かない様子のイリアに(仕事中ではあったが)駆け寄って、「綺麗だ」と褒めれば赤くなりながらも礼と小言を返される。

イリアの口から『結婚』の二文字が紡がれて、心臓が捻りあげられたかのように痛い。

大人になったイリア。

結婚適齢期を迎えてしまったイリア。

きっと今まで以上に彼らの求婚活動は活発化するだろう。

それが堪らなく苦しい。


話題を変えたくて、何故白いドレスなのかと問えば、「合わせ易いから。それに……」と返ってきた。イリアらしいなと笑えば、唇をツンと窄めて拗ねる。

美しくなったと思ったが、幼さの残る表情に安心する。



ラッパが高らかにファンファーレを奏で、国王陛下とその御家族の御来場を告げた。



イリアを褒め称える作業に躓きました……。

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