イリア16歳、社交会デビュー1
前話よりも2歳年をとりました。
この国では新年の一月一日に皆一つ年をとる。
誕生日を祝うという風習はなく、イリア自身も誕生月の記録はあるのだが、聞いてみても曖昧で常々残念に思っていた。もし……もしだが、子供が生まれたら誕生日会を盛大に開き、流行らせ根付かせることを誓っている。
そんなイリア・ノ一ランドも十六歳になった。
結婚適齢期(女子は十六歳、男子は十八歳)を迎えてしまった。
同時に兄も二十七歳になった。相変わらず独身である。これぞ、本当の独身貴族という奴だ。
新年の一日目は家族で祝い、二日目は神殿に詣で、三日目は王家へ挨拶、四日目は家に籠り、五日目に新年のパーティーがそこかしこで開かれる。そのパーティーは独身者の参加が義務付けられていて殆ど婚活パーティーと化していた。
イリアはこのパーティーに初めて参加する。社交会デビューなので参加しなければならないのが憂鬱であった。出来ることなら欠席したいのだが絶対参加なのでそれも儘ならない。当然、独身の兄も参加しなければならないのだが、昨年騎士団団長を拝命した彼は仕事で席を抜けられるようでイリアは羨ましい。
ぐだぐだ言っている内に新年五日目を迎えてしまった。
北の侯爵夫妻は自由参加だったが、イリアの記念すべく社交会デビューという事で一緒に王宮へ行ってくれることになっていた。ただ、自領でのパーティーにも参加するので早々にイリアを置いて帰ってしまうらしい。イリアも一緒に連れ帰って欲しいのだが、やはり義務なのでとやんわりと断られる。何故そんなに嫌がるのか、と苦笑と共に困った顔をされる。
イリアは答えられず俯いてしまう。まさか、求婚されるのが嫌だからとは言えない。その為のパーティーなのだから……。
通常であれば歩いて王都へ向かうのだが、ドレスを纏った身では難しく、当家には一台しかない貴重な馬車を走らせる。大通りとはいえ、山道なので乗っているのも一苦労だ。しかしながら見慣れた風景も何時もより高い位置から見下ろし、目が追い付かぬ内に後方へ流れて行くのを眺めるのは新鮮で、イリアの不安を少なくしてくれた。
王都へと近付くと音楽が聞こえてくる。いつもの広場で平民の為のパーティーが開かれているのだろう。屋台も沢山出ているんだろうな、美味しそうだなと想像しているとイリアの心も自然とウキウキしてくる。是非とも此方のパーティーに参加したいものだ。
王宮は一昨日挨拶に来た時とは違う、華やかさと良い意味での騒がしさに満ちていた。愉快で明るい音楽が鳴り響き人々の談笑がホールの入口にまで聞こえてくる。
その中で北の侯爵の来場を告げるラッパが鳴らされ、両親そしてイリアが紹介される。
「一一並びにイリア・ノーランド嬢」
人々の視線が一斉に三人に集まり、イリアをどぎまぎさせる。前世地味OLの記憶を持つ身としては急な注目のされ方は身に堪える。しかしそこは腐っても侯爵令嬢。ドレスを摘まんで叔女の礼をとる。拍手を受けるのだがイリアの耳には入って来ない。
「イリア」
低く温かみのある声がイリアの名を呼び優しく抱き締めた。
パーティーです。花より団子のイリアです。
いつもありがとうございます!




