求婚者と書いて、マッチョと読む2
ありがとうございます!!
マッチョの方、マッチョ好きな方、不快に思ったらすみません。
筋肉の国の人口は12000人程。
大きな街が東西南北にそれぞれ一つずつあり、隣国へ通じる門を守っている。
それぞれの街を治めているのが、わたくしイリア・ノーランドを含めた三つの侯爵家と唯一の公爵家だ。
街といっても、人口50~1000人くらいの規模で領主というより村長と言ったほうが、的確だろう。
門も所詮お飾りで、街を守るための石の壁だって十数メートル先で途切れている。いつでも密入国できてしまうのだ。
東の公爵家が東北にある神殿を守っている。遠く海を望む崖の上に鎮座しており、下界(国民や国土)とは切り離された神域と考えられているので、治めるべき領民や領土はない。
「では、体を冷やさないように生姜ののハーブティーにいたしましょうか」
さすが王子の側近。
正騎士へのフォローも忘れてはいない。
大変優雅な所作でポットから紅茶を注いでくれるのが、公爵家の嫡男で、王子の従兄弟でもある美少年だ。
わたくしより一つ上の十七歳。
緑髪緑眼で天使のような優しい笑顔が印象的。
肩口で切り揃えられた髪は緑というよりも若草色。ふわふわとしていて風にそよいでいる。
瞳は王子のそれとは違い、落ち着いた深緑色。年齢に似つかわしくない穏やかな光を湛えている。
先程まで脱いでいた上着は第一ボタンまできっちり留められていて、訓練中だということを忘れさせそうだ。(王子は上着を着ているもののボタンは一切留めていないし、正騎士に至ってはまだ上半身裸のままだ・・・さっさと上着を着ろっ!)
「ありがとうございます。頂きますわ」
楚楚とした微笑に見つめられてドギマギする。
さっそく淹れてもらった紅茶を一口頂いて、ほぅっと息を吐く。
「・・・美味しいですわ」
と言いつつ、ジンジャーティー・・・ダメだ。そういえば前世でもダメだった。なんか、側近が淹れてくれたから大丈夫かと思ったが・・・ごめんなさい。仕方ない・・・正騎士からもらった|チョコレート<ショコラ>で口直しだ。
「他の紅茶の方がよろしかったですね」
伏せられた瞳と哀愁を帯びた声音にギクリとする。やはりバレバレか。
どうしよう、何と返そうか、と窮していると、「すみません」と笑ってくれた。
か、可愛いっ・・・!!
でも、マッチョなんだよねぇ。
「君は紅茶を淹れ直しなさい。さぁイリア嬢、口直しのクッキーはどれがよろしいですかぁ?」
側近をフォローするどころか傷を抉る男。勿論、美形。
西門を守護する侯爵家の嫡男は、二十七歳。
将来、父親の跡を継いで宰相となることが約束されている、傑物だ。
青髪茶眼で、残念ながらメガネはかけていない。
この世界(この国?)にメガネが存在していたら、きっと似合うだろうなと思う。
そんな、ガラスを通さないでわたくしを見つめてくる瞳は、暗い土色。理知的で人の頭の中まで探ってくるような陰のあるそれは、今は楽しそうに揺らめいている。
群青色の髪は真っ直ぐサラサラで、無造作に高く結わえている。
上着は着ているものの、第三ボタンまでしか留められていない。上半身裸の正騎士より色気を感じてしまうのは何故だろうか・・・。大人の為せる技か・・・?
「・・・どれか」
「どれでも一つ。お好きなのをどおぞ?」
言葉は丁寧なのに命令されているようだ。
というか!
こんなに沢山あるのに一つしかくれないなんてっ!!
クッキーは全て種類がバラバラで目移りしてしまう・・・。全部食べたい・・・。
「では・・・このリンゴのクッキーで」
宰相子息が一つと言ったら一つなのだ。他のクッキーは気が変わるまで待つしかあるまい。
わたくしは諦めて、前世から好きだったリンゴのクッキーを選ぶ。
他の三人もクッキーをもらっているのだが・・・。
なんでわたくしが一枚で彼らが五枚なんだよっ!!
ズルいっ!ヒドイッ!!
と、抗議の目を上げればクスリと、意地の悪い顔で笑われてしまった。
「仕方ないですねぇ。あと一枚ですよぉ?」
仕方なくないし!
彼らより三枚も少ないしっ!!
でもでも、奴の気が変わらないうちに・・・。
よし、オレンジだ!
と、クッキーを取って礼を言うべく彼を見上げると。
破顔一笑とぶつかってしまった。
即座に顔を伏せるわたくし。
さっきまで意地悪な顔をしてたのに、そんな笑顔見せられたら・・・。
顔赤い、体熱い。
待て待て待て待て!
なんてったって、マッチョだからっ!!
「あぁ~~!可愛いなぁ、イリア嬢はっ!!」
王子に抱き竦められた!
正騎士に見つめられた!!
側近に微笑まれた!!!
宰相子息に手の甲に口付けを落とされた!!!!
「マッチョキモイマッチョキモイマッチョキモイ」
「イリア嬢はその呪い、好きだね。可愛いっ!」
まじでキモイ・・・。
王子と正騎士のエピソードより文字数が多い……不思議。
二人の話しも、もっと盛れば良かったかなと、今さらながら後悔。
致し方ない!!
読んでくださって、ほんとうに ありがとうございます♪
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