応援するのは辞めて恋敵になることにした、側近2
王子と側近は従兄弟です。
僕にとって殿下は王子という前に従兄です。
僕の住んでいる地には他の家はなく、同じ年頃の子供もいなく、年の離れた弟妹が生まれるまでは、たまに泊まりに来てくれる殿下が唯一の遊び相手でした。まあ、遊び相手といっても五歳離れているので、僕が殿下の後を追いかけ回していたと言った方が正しいでしょうか。殿下には迷惑だったと思いますが、殿下は嫌がる風でもなく僕の相手をしてくれていました。
殿下は神殿のある僕の(父が治める)領地にただ単に遊びに来ていた訳ではありません。王家は神殿との係わりが、僕の家(神官家で公爵家)と同じくらい深く、神官長はあくまでも陛下の代わりに日々の神事を行っているのにすぎないのです。そう、殿下は勉強に来ていたのです。
僕は殿下を兄のように慕っていますし、子供の頃の僕の行いを振り返ると大変申し訳なく思います。
殿下に幸せになって欲しいと思うのは、殿下の従者その2だからではなく、過去を後悔しているからでもなく(ごめんなさい、とは思いますが僕にとっては楽しい思い出なので後悔はしてません)、殿下が大好きだからです。
そうです、僕は殿下が……お従兄ちゃんが大好きなんです。
だから。
殿下の恋を応援するんです。
応援……したいんです。
したいんだけど……な。
したい……はず。
しなくちゃ、……いけない。
いけない……と思っている時点で何か間違っている気がする。
認めてしまおうか……。
僕は殿下に嫉妬しているって。
二人が一緒に並んでいるのを見たくないって。
イリアさまの笑顔は僕だけに見せて欲しいって。
僕はイリアさまが好きって……認めてしまおうか。
うん。
僕はイリアさまが好き。
殿下も好きだけど。
殿下の恋を応援出来ないくらい、イリアさまのこと、好き。
よし!
そうと決めたら!
殿下ごめんなさい!
僕は殿下の恋敵になります!!
イリアさまの心は僕に振り向かせてみせますっ!!!
その為にはまず。
騎士団に入らなければなりません。
お父様にお願いして入団日を早めてもらいましょう。
イリアさま。
僕は頑張って頑張って頑張って……立派な(兼業)騎士になります。
だから、どうか。
僕のこと、好きになって下さいね。
立派な騎士はマッチョです。
イリアの好みから遠退きます(笑)。