応援するのは辞めて恋敵になることにした、側近1
側近視点です。
イリア13歳と王子19歳と側近14歳の初めてのお茶会です。
イリアさまとの初めてのお茶会で。
イリアさまが部屋に訪れる前から、殿下はあわあわしています。
緊張しているようで応接間の壁から壁まで行ったり来たりしています。。ソファに座ったり立ったりトイレに行ったり鏡の前で髪を整えたり、本日のデザートやお茶の種類を確認したり……止めてください、こっちまで緊張してきます。
イリアさまがやって来て、殿下は赤くなって青くなって「ようこそ」といつもより低い声で、でもどもらずに言えていました。緊張しているせいか笑顔が若干ひきつっているようです。
殿下はイリアさまの視線を正面から受け止められないのに、僕とイリアさまが喋っていたら眉間に皺を寄せてじぃっと見てきます。イリアさまがふっと殿下を見れば目を反らします。
分かりやすいです。
嫉妬されてますね。
僕の目も見れないんですね。
僕は殿下のいつもと違う(他の女性に対しての)態度が見ていて面白くて、でも何だか恥ずかしくて、お茶だ~デザートだ~と二人から視線を外してしまいます。
でも聞こえてはいるので、お二人からお褒めの言葉を頂きました。ありがとうございます!
それから殿下の呟きも聞こえました。
「可愛い」って!?
心のなかで?吹いてしまいましたよ!
イ、イリアさまっ!
聞き返さないで下さいっ!!
殿下も改めて「可愛い」なんて言わないで下さいっ!!!
イリアさまが赤くなっているのが後ろにいる僕にも分かります。逆に殿下は緊張が解けたようです。いつものような……いえ、いつも(他の女性といる時)以上の柔らかい優しい笑顔をしています。
ただ、どもって俯いたイリアさまはそれを見ていないので宝の持ち腐れです。勿体ないです、はい。
僕はイリアさまの仰天振りには気付いていない振りをして、でも「どうなさいました?」と伺いながらケーキを手渡しました。 視線が苺ケーキに注がれています。あまりに可愛くて口元が弛んでしまいます。殿下と似た者同士ですね。
イリアさまは紅茶もケーキも美味しいと褒めてくれました!
にっこりとしたイリアさまは、まるで女神様みたいですっ!!
可愛いですっ!!!
ん?
殿下?
勘違いしないで下さいね?
今のは、僕に笑って下さったんですよ?
そんな嬉しそうな表情しないで下さいよ!
はっ!
何、思っているんだろう、僕。
何故か心がざわざわします。
イリアさまと殿下を見ると心がざわざわして胸が締め付けられます。
殿下の恋が叶えば良い……と思ってるはずなのに。
殿下に幸せになって欲しいと思うのに。
でも。
殿下の隣にイリアさまが立つのを想像したら……。
何だか……。
嫌だな。
いやいやいやいや。
違います。
これは違います。
嫉妬じゃないです。
絶対違います。
僕は殿下を応援するって決めたんですよ?
殿下の恋路を陰ながら手伝おうと、決めたんですよ?
だから、ざわざわしても、もやもやしても、これは嫉妬じゃないんですよ?
側近の心は行ったり来たりしてます。