恋とはどんなものかしら、と王子は思った2
引き続き、王子視点です。
男どもの方がヒロインじゃないかな、と、たまに思います。
五歳も年下の少女――イリア嬢を、何故か『可愛い』と思った。
イリア嬢は俺に近寄って来ない。
俺が近付けば離れる。
口調は丁寧なのに何処か冷たい。
笑顔を見せてくれても目が笑っていない。
今まで、自分に近寄って来た女性とは違う。
十二歳だからだろうか?
いや、年令は関係ないな。
十二歳だろうがなんだろうが、王妃になろうと擦り寄って来る少女はいるのだ。
なのに。
何故、イリア嬢は自分につれないのか。
初めて会ったとき……。
新年の挨拶をされて。
ちょっと子供らしくないな、と思ったけど。
「可愛い」とお世辞を言ったら顔を赤くして、子供らしくて本当に可愛いなと思った。
そう。
その様は年相応の子供らしい可愛さだと、あの時は思ったのだ。
だが。
今はどうだろうか。
十二歳のイリア嬢……。
少女から大人の女性へとの、変わり始め。
子供らしい可愛さ、ではなくて。
蕾が花開く初々しい可愛さ、というか。
つまり、何と言うか……。
あの年頃は男の子でも女の子でも可愛いのだけれども。
今の可愛いというのは……。
ぎゅっと、何かが潰れそうで。
何だか、息が苦しくて。
目が、おかしい……。
触れたいのに。
触れられ……ない。
避けられると、辛い。
作った笑顔ではなくて。
心の底からの笑顔が見たい。
自分の力で彼女を笑顔にしたい。
今のイリア嬢をとても可愛い、と思う。
そう感じるのは、彼女が『好き』だから、だろうか。
そうだとしたら嬉しい。
『好き』も『恋』も『愛』も。
自分には一生分からないモノなのではないか、と思っていた。
妹姫や他の人はソレを知っているのに、分からない俺は何処か可笑しい人間ではないか、と思っていた。
ソレを知っている彼女達に嫉妬していた。
そう思ってしまうと。
俺に愛を語って来る女達を、俺は何処か冷めた目で見ていた。俺の直ぐ横に立ち、俺と同じ言語を喋っているのに、何処か遠い異国の人間のように感じられた。
紳士だ、礼儀だなんて思いながら、酷い事をしていた。
笑っていない笑顔で。
当たり障りのない話をし。
我儘を聞くのは優しい振り。
腕を組まれても顔色も変わることなく。
心の込もってない愛を囁く。
彼女達が去って行くのも当たり前の事だったのかも知れない。
ソレを知ると。
言動に『心』か入っていないことに気付く。
互いの想いの温度差に気付く。
彼女達もきっと気付いていた。
俺は……本当に酷いことをしてきたんだな、と思う。
彼女達の立場になって、やっとその事に気付く。
だから、この傷みは自業自得なんだ。
コレは嬉しい傷みなんだ。
俺はやっと、恋を知ったんだ。
いつも読んでくださり……ありがとうっ!!!!ございますっ!!!!!