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閑話 イリアと書いて食い意地がはっていると書く

イリア「ちょっと!『食い意地がはっている』なんて失礼ですわよっ!!他の言葉になさいっ!!!」

作者「えぇっ……と、じゃあ、食いしん坊?」

イリア「何ですってぇっ!?この華奢な体を見てよくそんなこと言えますわねぇっ!!」

作者「すんません。他に思い付かなくて……イリアさん考えて下さいよぉ」

イリア「わたくしが?☆……よろしいですわよ」

ぱらぱらぱら……(辞書を捲る音)

はっ!!!

イリア「ちょっと!フレームアウトなさらないでっ!!」

作者「……」

イリア「ちょっ!!待っ――――」



私の妹イリア・ノーランドは食べ物に目がない。


イリアは食べることは勿論、作ることも好きなようだ。

幼い頃はイリア自ら料理をすることはなかったが、厨房に入り込んで料理人にあれやこれやと指示して作らせていた。それらは見たこともない料理だったが美味しかった。なぜ幼いイリアが作り方を知っているのか疑問に思ったが、そんなことは些末なことなので、ただ「美味しい」と褒めた。

イリアは嬉しそうに笑ったものの、「違うの、こんなんじゃないの」とか「ショーユが足りない」とか呟いて更に創意工夫を重ねていた。

厨房に入って腕を振るうことを許されると、イリアは御菓子作りも始めた。

しかし、これは失敗だったようだ。膨らまない爆発するダマになる半生になるなどと、問題が続出した。

イリアは意気消沈し可哀想な程、落ち込んでいた。小さな声でぶつくさと「やっぱりちゃんと計らなくちゃいけないのね」「ホントにきっちり計らなくちゃいけないのよね、……ふぅ、めんど」と何やら勝手に納得し、「わたくしには御菓子作りは向いてないようですわ」と高らかに宣言した。


私の妹イリア・ノーランドは少し大雑把な所があるようだ。



イリアが初めて新年の挨拶で王宮に行った時、沢山の料理やデザート(デゼール)の前で彼女の瞳はランランと輝いていた。「これ食べていいの?」と瞳が訴えてきて私は思わず苦笑してしまった。直前に挨拶した国王夫妻のことや、王子の前で顔を真っ赤にしたことなど、既に記憶の彼方に逐いやったようだ。

イリアは興味の向くままに料理を堪能していた。肉類だけではなくちゃんと野菜やスープ(スマープ)を摂っていたので、素晴らしい妹だと頭を撫でてあげた。一瞬だけ私ににっこりと笑ったが、直ぐに料理に向き直ってしまったのでさすがの私も失笑するしかなかった。普段「お兄様」「お兄様」と抱きついてくるのに、この時ばかりは料理に負けてしまうようだ。

まあ、殿下が言った「可愛い」などという戯れ言も忘れてしまったようなので良しとしよう。


私の妹イリア・ノーランドは「デザートは別腹」と告げて更に食べた挙げ句お腹を壊した。



イリアは外国の食べ物も好きなようだ。

月に一度訪れる『氷の帝国』の行商目当てに王都まで買い食いに行く(北の帝国の行商は父が治める北の街で店を開くので、わざわざ王都に行く必要はない)。

買い食い(・・・・)に行くのだ。

貴族の令嬢なんだからと再三注意したが、逆に「お兄様!何をおっしゃっていますの!?市場の醍醐味は買い食いでしょう!」と私の方が間違っているかのように、信じられない物でも見るかのような目をする。

そして私も買い食いを強要される。正直言って買い食いした料理は大変美味しかった……が、両親には秘密にしなければならない。


その日もイリアは王都に遊びに来た。勿論買い食いの為である。

私が店の開いている広場まで迎えに行く予定だったが、彼女の方から王城の騎士団の仕事室にやって来た。「お土産ですわ」と渡されたのはクッキー(アンビスキュイ)丸い(ブール・ド・)田舎パン(カンパーニュ)と串に刺さった鳥の唐揚げ(ルプレ・フリ)と、大分減ったと思われる親指サイズのチョコレート(ショコラ)が幾つか入った紙袋だった。

「溶け始めちゃったから食べちゃったの」と言い訳した後、「やっぱりストレスにはチョコレート(ショコラ)よね」と呟いた。イリアはそれを私に聞かれるつもりはなかったようで「ストレス?」と詰め寄ったら、ばつの悪そうな顔をして反らす。

顎(というか頬)を掴んで私の方へ向かせば目を閉じる。困った妹である。

言いたくないようで、むぅ~と唇を尖らせる。本当に困った妹である。

「イリア。このお土産全部食べていいんだね?」溜め息をついて問えば、慌てて否定するが「ばらめぇ~」と情けない声で。「おまゅあけはおみゅけけろわあちもたれうのぉ」私は理解出来ないと首を傾げてあげた。無論、理解してはいたが。口に物が入ってる状態で喋らないよう注意は後々・・・。

直ぐにイリアは折れて『ストレスの元凶』なる物の説明を行なった。仕方なくといった感で、私を如何に怒らせないようにするかと気を遣いながら、という表情で。

勿論私は怒った。


イリアに対してではなく、『ストレスの元凶』にして私を『悪友』などと宣う奴に対して。





イリア「『食べ物に目がない』!!!ふふっ!さすがっわたくしのお兄様!!」

イリア「でも……美食家も捨てがたいですわねぇ」

作者「え?Β級グルメ(びしょく)家?」

イリア「美食家っ!!!」


ルビを振ったりちょい付け足しをしましたが、内容に変更はありません2016.8.31

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