宰相子息とイリア2
宰相子息視点です。
王宮の南にある表門を出て、そのまま大通りを南下すると円状の広場がある。囲むように人気店が軒を連ね王都一の賑わいを見せる広場だ。祭りの時には多くの人が集まって歌ったり踊ったりする王都の中心地だ。
また、月に一度やって来る隣国の行商が店を開く場所でもある。
悪友の妹はきっと『氷の帝国』の行商目当てに広場に来るだろう。
その事を悪友は知っているに違いない。もしかしたら、仕事が終わったら妹に合流してそのまま帰宅するかもしれない。その前に悪友の妹を見つけ接触しなければならない。
宰相子息は悪友にばれるかも、というスリルを楽しみながら目当ての人を探していた。喫茶店の椅子に優雅に腰掛け、両側に美女を侍らせながら。
直ぐに目当ての人は見つかった。
長い銀髪を左右高く結わえ、青色のワンピースに身を包んだ少女は大勢の人の中でもよく目立った。人の波に揉まれながらもキョロキョロと顔を動かし、物色している。暫く眺めていると少女は平べったい何かを買い、何か丸い物を買い、また串に刺さった物を買い、茶色く小さい物を買いそれを一つ口に放り投げ咀嚼し、直ぐに袋一杯に買い込んだ。購入した物全て飲食物のようだった。
少女はゆっくりと宰相子息のいる喫茶店に近付いて来て店先で飲み物を買う。真剣にどの飲み物を買うか悩んでいる面差しは、兄である悪友とよく似ていた。
「こんにちは、ご機嫌如何かな?イリア・ノーランド嬢」
名前を呼ばれて振り返った悪友の妹はカップから唇を離し、訝しげに宰相子息と二人の女を見た。濃い紫色の瞳は不快気に染まり唇は一文字に結ばれる。
宰相子息は顔には出さず、心の中で愉快そうに笑った。
「――どちら様ですの」
「これは失礼、私は君のお兄さんの親友の――――」
「ご冗談をっ!!」
悪友の妹は侮蔑の混じった声音で即座に否定し、ぎろりと宰相子息を睨むと嘲り笑う。
「貴方とお兄様が親友の筈がありませんでしょう!宰相補佐殿」
悪友の妹は宰相子息の事を知っていたようだ。と言っても、宰相子息を顔を知っていたというよりは、彼に凭れ掛かる双子の巨乳美女のせいだろうが。
宰相子息は悪友の妹の嘲笑を歯牙にも懸けず、むしろ肯定してやる。
「確かに親友というよりは悪友と言った方が正しいですねぇ」
「っ本当にっ!ご冗談がお好きなようですわねっ!!」
真っ赤に染まる顔は見てて飽きない。悪友に似ている顔でそんな表情されると、悪友に勝利しているように錯覚しそうだ。
「お兄様と貴方じゃ『月とスッポン』ですわ!」
スッポンとは何だろうか。あまり良い意味じゃなさそうだ。アーダもイーダも首を傾げている。
「お兄様は優しくてかっこよくて綺麗で美しくて天使のように神々しい素晴らしい方なのよっ!対する貴方はイン―――色欲に溺れた……悪魔みたいですわ。そんな生きる世界も種族も違う二人が悪友だろうが何だろうが、『友』になれる訳ないでしょうっ!!!」
すごい言われようだ。
しかも今、淫魔と言おうとしたな。
酷いな。
噂でも聞いたのか、それとも悪友が言ったのか……。
いや、ないか。
わざわざ妹に私の事を話すような男ではないな。
ん。アーダとイーダの機嫌が悪くなってきた。
ふう。
「噂通り、兄狂いですねぇ」
「女狂いの噂には負けますわ」
冬でもないのに空気が凍りそうだ。
「はは、女狂いでも君みたいなお子様には興味ありませんよ」
「ほほ、奇遇ですわね。兄狂いのわたくしも貴方になんかこれっぽっちも興味が沸きませんわ」
空気どころか周りの人間を凍りつかせる。
広場の賑わいが嘘のように、人々は押し黙り二人を窺っている。
その二人は笑顔を張り付かせたまま、どちらも退く気配を見せない。
しかし、最初に動いたのは悪友の妹の方だった。カップの中身が温くなってしまった事に気付くと、一瞬眉根を寄せ一気に飲み干した。およそ貴族らしからぬ行いだったが(本人も)町の人も気にも止めず、はらはらと二人の行方を見守っていた。
「ご機嫌よう!二度と会うこともありませんけどっ!!」
そして盛大に踵を返して悪友の妹は人々の波の中に戻って行く。
そんな後ろ姿を見送りながら、不機嫌そうにしなだれかかってきた美女二人の腰を抱きしめ、あやすように優しく微笑み宥めた。
三十分後、いまだ喫茶店でお茶をしていた宰相子息と、買い物を終えたらしい悪友の妹の目は、ばっちりと合ってしまった。二度と会わない宣言をした彼女は苦虫を噛み潰したような顔をして再び「ふんっ」と背を向け、そして背を向けられた彼は愉快そうに笑い、二人の美女に怪訝な目を向けられていた。
侍らせる為だけに双子の巨乳美女アーダとイーダを出しました。




